ギリシャ神話

創作

ざまぁ

ざまぁ

ある晴れた日のオリンポス山。神々は壮麗な宴を開いていた。その中に、特に目立つ存在がいた。彼女の名はアフロディーテ。美と愛の女神であり、その美しさは誰もが羨むものであった。彼女は自らの美しさに酔いしれ、他の神々を見下すような態度で振る舞っていた。

「ねえ、ゼウス。私の美しさを超える者なんて、この世にいると思う？」アフロディーテは、自信満々にゼウスに問いかけた。

ゼウスは少し考え込み、にやりと笑った。「美しさを競う者がいるとしたら、彼はきっとお前の知らない存在だろう。だが、その者はお前を超えることはできないだろうな。」

アフロディーテはその言葉に安心し、さらに自信を深めた。「そうよね！ 私は最高の美を持っているわ！」

しかし、彼女の自信は彼女を無謀な行動へと導いた。ある日、彼女は「ザマ、ザマ」という名前の女神が存在すると噂を耳にした。その女神は、美しさに嫉妬した者たちの恨みを集めて、彼女たちの醜さを引き出す力を持っていると言われていた。

「なんて滑稽な名前なのかしら！ そんな女神、私には関係ないわ！」アフロディーテは笑い飛ばした。

しかし、彼女の侮蔑は長くは続かなかった。数日後、彼女は夢の中でザマに出会った。ザマは恐ろしい姿をしていた。彼女の顔は醜く、髪は絡まり、服はボロボロであった。

「ようこそ、アフロディーテ。私のところへ来てくれて嬉しいわ。」ザマは不気味に微笑んだ。「私があなたの美しさを奪う力を持っていることを知っているかしら？」

アフロディーテは驚き、言葉を失った。「何を言っているの？」

「あなたが私を無視し、美を誇示することは許さない。私はあなたに、真の美しさの意味を教えてあげるわ。」ザマは手を伸ばし、アフロディーテを包み込んだ。

次の瞬間、アフロディーテは目を覚ました。彼女は鏡の前に立っていたが、そこには彼女の美しさが消え去った姿が映っていた。彼女の顔はぼろぼろで、肌は青白く、髪は乱れていた。

「こんな…」彼女は呆然とした。

彼女の美しさが消え去ったことで、オリンポスの神々は一斉にざわめいた。彼女はその姿を見て、初めて他の神々の視線に気付いた。彼らは彼女の醜さを嘲笑し、見下し、言葉を投げつけた。

「どうした、美の女神よ。美しさはどこへ行ったのか？」アポロンが笑いながら言った。

「ざまぁ！」と他の神々も続いた。

アフロディーテは恥ずかしさに顔を赤らめた。彼女は自分の誇り高い態度が、どれほどの代償を伴ったのかを理解した。彼女はザマの存在を軽んじていたことを悔い、周囲の視線に耐えきれずにその場から逃げ出した。

オリンポス山の外、アフロディーテは一人で思索にふけった。「私は美しさだけでなく、他者への思いやりを失っていたのかもしれない…」彼女は自らの内面に向き合い、心の変化が必要だと悟った。

数日後、アフロディーテはザマに再び会うことを決意した。「私の美しさを返してほしい。」

「あなたは私の教えを受け入れるつもりですか？」ザマは問いかけた。

「はい。私は他者の美しさを認めることができるようになりたい。」

ザマは微笑んで頷いた。「それなら、私はあなたに美しさを返すわ。」

その瞬間、アフロディーテの姿は元に戻った。彼女は再び美しさを取り戻したが、心には新たな理解が芽生えていた。

「私の美しさは、他者を尊重し、共に歩むことから生まれるのだ。」アフロディーテは微笑んだ。

彼女はオリンポスに戻り、神々に向かって堂々と宣言した。「私の美しさは、誰かを傷つけるためのものではなく、他者を照らす光であるべきだ。」

神々はその言葉に感銘を受け、アフロディーテを再び敬意を持って迎え入れた。彼女の心の変化は、彼女自身の美しさをさらに引き立てた。

「ザマ、私はあなたに感謝するわ。」アフロディーテは静かに呟いた。

オリンポス山の空には、晴れ渡った青空が広がっていた。神々の宴は続き、アフロディーテの笑顔が輝いていた。