ギリシャ神話

春秋花壇

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創作

「わくわくどきどきの予言者」

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「わくわくどきどきの予言者」

ゼウスの住むオリンポス山では、神々がそれぞれの役割を果たしながら、静かに時が流れていた。だが、その日、オリンポスに異変が訪れた。ヘルメスが風のように駆け込み、ゼウスに告げた。

「父上、大変です! ある村で奇妙なことが起きています。村人たちは、毎夜、同じ夢を見るようになり、その夢に導かれて何か大きな出来事が起こる予感がしているのです。」

ゼウスは興味を持った。オリンポスの神々にとって、人間の世界の出来事は小さなことかもしれないが、こうした不可解な現象は神々をも驚かせる。

「誰がその夢を与えているのだ?」ゼウスは眉をひそめながら問いかけた。

「それが分からないのです。しかし、その村には一人、未来を予言できると噂される少年がいると聞きました。彼の名はピタコス、まだ十歳にも満たない少年です。」ヘルメスは興奮した様子で答えた。

ゼウスはその少年の話を聞くと、次第に興味が湧いてきた。「ふむ、ピタコスという少年か。面白いではないか。彼の力が本物ならば、我々神々にとっても脅威になるかもしれん。」

そこでゼウスは、彼の娘であるアルテミスに任務を与えた。「アルテミス、そなたがピタコスのもとへ赴き、彼の予知の力がどこから来ているのか探るのだ。そなたの知恵と勇気で、真実を明らかにしてくれ。」

アルテミスは弓矢を背負い、風のように軽やかに村へと向かった。彼女が到着すると、ピタコスはその日の午後、村の広場で皆に予言を告げていた。彼の声は、まだ幼さの残るものだったが、そこには不思議な力が宿っていた。

「今夜、森の奥深くで、星が地上に落ちるのを見るだろう。それは光を放つ石であり、それを手に入れた者は未来を見通す力を得る。」

村人たちは驚きと期待に満ちた目で、ピタコスを見つめた。彼の予言はこれまでもことごとく的中していたからだ。

アルテミスは、予言が真実かどうか確かめるため、村人たちと共に森へ向かうことにした。彼女は木々の間を慎重に進み、目を光らせていた。

夜が更けると、突然、空が一瞬だけ明るく輝いた。星が落ちた瞬間だった。アルテミスはその輝きを見逃さなかった。「ピタコスの予言が的中した!」彼女は自分の目を疑った。

星が落ちた場所へ駆けつけると、そこには眩い光を放つ石が横たわっていた。アルテミスは慎重にその石に近づき、手で触れた瞬間、彼女の心に未来のビジョンが流れ込んできた。

「これはただの石ではない…」彼女は気づいた。この石は、未来を見通す力を与えるだけでなく、それを持つ者の運命を大きく左右する。

ピタコスが近づいてきた。彼の瞳には、好奇心と少しの恐れが入り混じっていた。「この石が僕の予知の源だったのかもしれない。でも、僕にはもっと大きな使命がある気がするんだ。」

アルテミスは彼をじっと見つめ、うなずいた。「お前の予知の力は天からの贈り物だ。しかし、それに頼りすぎてはならぬ。人の未来は自らの行動によって作られるもの。神々の力に左右されず、自らの心で道を選べ。」

ピタコスはしばらく考え込み、そして決意したように頷いた。「僕はこの力を使って、皆の幸せを願い、未来を導くんだ。けれど、その運命を決めるのは僕自身だね。」

アルテミスは満足そうに微笑み、ゼウスのもとへ戻る準備をした。「ピタコス、覚えておけ。未来は常に揺れ動く。お前の選択が、村だけでなく、この世の大きな運命を変えるかもしれない。」

少年は深く頭を下げ、彼女の言葉を胸に刻んだ。

オリンポスに戻ったアルテミスは、ゼウスに報告した。「父上、彼の力は確かに特別なものですが、それをどう使うかは、彼自身の選択にかかっています。」

ゼウスは笑みを浮かべた。「そうか、ならば我々は見守るとしよう。人間の運命は彼ら自身が切り開くものだ。たとえ神々がその未来を知っていようとも、干渉することなく、彼らの道を歩ませるのが我々の役目だ。」

こうして、少年ピタコスは神々の加護を受けながら、村を導く予言者として成長していく。彼の未来には、多くの試練が待ち受けていたが、彼は常にわくわくどきどきと、新しい運命を迎え撃つ心を忘れなかった。

そして、その先にあるのは、彼自身が選び取る未来であった。






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