ギリシャ神話

創作

神様たちのドタバタ劇場

「神様たちのドタバタ劇場」

オリンポス山は今日も賑やかだった。神々の宴が盛大に開かれ、各々が好き勝手に楽しんでいる。ゼウスは豪快に笑い、ヘラはその横で無表情にワインを啜りながら不機嫌そうに座っている。アポロンはリラを奏で、アフロディーテは鏡を覗き込みながら自分の美しさに見惚れていた。そう、ここでは何でもありなのだ。神々の世界では、常識なんて言葉は存在しない。

その日、オリンポスの神々の中でひときわ注目を浴びていたのは、アテナだった。彼女はその知恵と冷静さで神々から尊敬を集めていたが、今日の彼女はいつもと少し違っていた。何やら悩み事があるようで、眉間にシワを寄せている。

「どうしたんだい、アテナ？そんな顔をして。君にも悩み事があるなんて珍しいね。」ヘルメスが軽快な足取りで近づき、彼女に問いかけた。

「いや、ちょっと考えていることがあってね。」アテナはため息をつきながら答えた。「ゼウスがまた新しい浮気相手を見つけたらしいの。でも、今回は少しやりすぎたみたい。」

「やりすぎた？ゼウスの浮気なんていつものことじゃないか。」ヘルメスは肩をすくめて笑った。

「それが、相手は人間界の女王で、彼女には既に夫がいる。ゼウスはその夫を雷で消し去ってしまったんだ。」アテナは苦々しげに話す。「そのせいで、女王の国は混乱し、戦争が起きている。ゼウスはいつもこうやって問題を起こして、最後には誰かが片付けることになるんだ。」

ヘルメスは口笛を吹いた。「そりゃまた大事だな。でもまあ、ゼウスだし？彼にとっては日常茶飯事さ。」

「その日常茶飯事が問題なのよ。」アテナは神殿の柱に寄りかかり、目を閉じた。「私たち神々は、もう少し慎重になるべきじゃない？このままだと、人間界だけでなく、私たちの世界まで崩壊しかねない。」

そんなアテナの真面目な議論を聞きつけたアレスが、大笑いしながら割り込んできた。「おいおい、アテナ。そんなに真剣になるなよ！俺たちは神だぜ？何やったって許されるんだ。人間どもなんて、俺たちの気分次第でどうとでもなるさ！」

アテナはアレスに冷たい視線を投げた。「あなたは戦争の神だから、混乱が楽しいのかもしれないけど、他の神々や人間たちはそうじゃないのよ。」

「そうそう、アレス。少しはアテナの言うことも聞いたほうがいいぜ。」今度はディオニュソスがワイン片手に現れ、ほろ酔い気分でアレスに肩を叩いた。「でも、俺たちは祭りや楽しみを愛する神々だし、深く考えるのも野暮ってもんさ。」

そこへ突然、ゼウスが雷鳴と共に現れた。「皆の者！聞け！我が新たな愛の物語を知りたくはないか？」その堂々たる姿に、他の神々はため息をついた。

「またかよ…」アポロンはリラを奏でる手を止め、苦笑した。「ゼウス、頼むからもう少し控えめにしてくれよ。君が毎回浮気するたびに、俺たちの仕事が増えるんだ。」

ゼウスは気にも留めず、アポロンに手を振って応えた。「アポロン、我が子よ。そんなこと言うな！愛は美しきものだ。神々が愛を持たずしてどうする？」

「いや、愛じゃなくて問題行動の話をしてるんだけど…」アポロンは呆れ顔でリラを再び鳴らした。

その時、雷鳴が轟き、オリンポス山が震えた。ゼウスの目に雷が宿り、その視線は下界へと向けられた。「見ろ！我が新たな愛がどのように人間界を彩っているか！」

しかし、その雷が誤ってヘラの寝室を直撃した。激怒したヘラが怒声を上げながら姿を現す。「ゼウス！何をしているの！私の部屋を壊すなんて！」

ゼウスは青ざめた顔で謝罪しようとするが、ヘラの怒りは収まらない。彼女はゼウスを追いかけ回し、オリンポス中を大騒ぎにした。

「まったく、神様たちってのは…」ヘルメスは空を飛びながら、アテナに囁いた。「何でもありなんだな。ゼウスが新たな浮気相手を見つけても、これで世界が終わることはないだろうけど、平穏が訪れることもなさそうだ。」

アテナは微笑みながら頷いた。「そうね。結局、私たちもまた混沌の中で生きているのかもしれない。でも、それが神々の世界というものよ。」

オリンポス山の上で、ゼウスの浮気とそれに続くドタバタ劇は永遠に続く。神々の常識外れの行動は、人間たちにとっては理解不能なものだが、それがこの世界の秩序であり、混沌であり、そして笑いの源なのだ。

「ちょ、神様たち、まじでやりたい放題すぎだろ…」そんな人間たちの呟きが、オリンポス山に風のように届く頃、ゼウスは次なる浮気相手を探してまた空へと消えていったのだった。