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春秋花壇

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頭の中はお花畑

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 頭の中はお花畑

「もう、どうしてこうなるんだろう…」

朝からため息をつきながら、私はカフェのカウンターでコーヒーを淹れていた。今日もまた、何もかもがうまくいかない日だと思っていた。出勤前にちょっとした用事があったのだが、財布を家に忘れてきてしまい、急いで戻る羽目になった。そのせいで会社に遅刻してしまったし、気持ちまで焦っていた。

でも、ふと気づくと、カフェの窓から見える街の景色がどこか心地よく感じてきた。人々が行き交い、車の音が賑やかに響く中で、私はしばらくその景色をぼんやりと眺めていた。

「今日は大丈夫。なんとかなるさ。」

小さく呟きながら、私はカップを手に取って、コーヒーを一口含んだ。意外と、温かい飲み物って心を落ち着けるんだな、と思いながら。

その時、店のドアが開き、ひとりの男性が入ってきた。誰かと約束しているのだろうか、スマホを見ながら歩いているその姿は、まるで映画のワンシーンのようで、少し目を奪われてしまった。

彼は目を上げ、カウンターの私に気づいた。少し驚いた表情を浮かべながらも、にっこりと微笑んだ。

「お疲れ様です。コーヒー、お願いします。」

その笑顔に、思わず胸がトクンと鳴った。と同時に、頭の中が急に「お花畑」になった気がした。恋をしたい、恋をしているという自覚がないうちに、心があたたかくなった。それも、その一瞬で。

「ええ、もちろんです。」
私は落ち着いて笑顔を返しながら、コーヒーを淹れ始めた。しかし、その時、何も考えていなかったはずの頭の中に、次々と色とりどりの花が咲き乱れるような感覚が広がった。何だろう、この気持ち。こんなにも胸が温かくなるなんて。

コーヒーを淹れながら、ふと彼の姿を盗み見てみる。彼はスマホを見ながらカウンターの席に座り、何かを考えているようだ。私はその姿を見つめると、心の中で勝手に「この人ともっと話してみたいな」と思っていた。

コーヒーを渡すとき、少し手が震えた。恥ずかしさが込み上げてきて、顔が赤くなっているのを感じる。普段ならこんなことで動揺することはないのに。どうしてだろう。彼の目を見ていたら、なんだかドキドキしてきたからだ。

「ありがとうございます。」
彼はまたにこやかに微笑みながら、コーヒーを受け取った。その笑顔があまりにも優しくて、私はまた胸がドキドキするのを感じた。

しばらく沈黙が続いたが、やがて彼が再び口を開いた。
「実は、最近このカフェによく来るんです。何か特別な理由があるわけではないんですけど、なんだか落ち着くんですよね。」
その言葉に、私は少し安心した。どうやら彼も、リラックスする場所としてこのカフェを気に入っているようだ。

「わかります。私もここで過ごす時間がとても好きです。静かで、なんとなく心が落ち着くんですよね。」

「ですね。こういう場所で、のんびりとした時間を過ごすのが一番心地よくて。」

そう言って彼は、また少し考えるような表情を浮かべた。私はその顔を見ていると、次第に頭の中でお花畑が広がるのを感じた。彼の言葉一つ一つが、私の心に花を咲かせているようだった。何だろう、この不思議な感覚。こんなにも優しく、ただの会話がこんなにも心に響くなんて。

その後も少し話しているうちに、私たちはお互いの趣味や好きな音楽、映画について話し始めた。話が弾むうちに、私はついに彼に言ってしまった。

「もしよければ、今度一緒に映画でも観ませんか?」
その言葉が出た瞬間、私は心臓が飛び出るほどドキドキしていた。自分でも驚くほどの大胆さだ。

彼は少し驚いたように目を見開いたが、すぐににっこりと微笑んで言った。

「いいですね。ぜひ行きましょう。」
その言葉に、私は心の中で歓喜の声を上げた。頭の中は今やお花畑どころか、満開の桜の花が咲き誇っているような気持ちだった。こんなにも嬉しい気持ちを感じるのは久しぶりだ。

その日から、私たちの関係は少しずつ進展していった。映画を観に行ったり、カフェでおしゃべりをしたり、無理に特別なことをしなくても、ただ一緒にいるだけで心が落ち着いた。私はその時間がどんどんと大切になっていった。

そして、ある日彼が言った。

「最近、なんだか毎日が楽しみなんです。あなたと過ごす時間が、すごくいいんですよ。」

その言葉に、私は心から笑顔を返した。

「私も同じ気持ちです。」

それからも、私たちの関係はお花畑のように、少しずつ花が咲き続けた。何も特別なことがなくても、彼との時間が何よりも幸せだった。恋愛って、こんなにも素晴らしいものだとは、今まで気づかなかった。

終わり







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