このユーザは規約違反のため、運営により削除されました。 前科者みたい 小説家になろうを腐ったみかんのように捨てられた 雑記帳

ひとりでできるもん

ひとりでできるもん

サクラは8歳の誕生日に、少しだけ大人になった気分だった。今日、初めて自分のカードで買い物をするのだ。ユニクロのオンラインショップを開いたときの胸の高鳴りを、今でも覚えている。画面には、いろんな商品が並んでいて、目がキラキラと輝いていた。

「まずは、アウターから選んでみようかな？」サクラはうれしそうに考えた。

母親は、リビングで手を動かしながらテレビを見ている。父親は、机に向かって仕事をしている。そんな中、サクラはパソコンの前に座って、慎重にカーソルを動かしながら、アウターを探し始めた。彼女が欲しいのは、黒いダウンジャケット。寒くなったこの時期にぴったりだと思ったからだ。

「ハイブリッドダウンパーカ 5,990円、黒。」サクラは声に出して読んだ。価格も手頃で、なかなか良さそうだ。

次に目を止めたのは、ファーリーフリースジャケット。やわらかいフリースが、サクラの肌にぴったりだろうと思った。税込みで1,990円。あとは、ウォームイージーパンツ1,990円、ヒートテックUネックTシャツ 9分袖790円。

「これで合計10,760円か…」サクラは計算してみた。まだ自分で支払いをしたことがなかったが、この金額ならどうにかなるはずだ。小さなカードを手に取ると、少しドキドキした。

「これでいいかな？」サクラは思いながらも、再確認するために、リビングにいる母親に声をかけた。

「お母さん、この色ばっかりなんだけど、大丈夫かな？」サクラは、画面を指さして言った。そこには、黒いアウターとジャケット、パンツが並んでいた。

母親は笑いながら顔を上げ、「あら、黒ばっかりじゃない。お葬式みたいね。」と冗談を言った。サクラはお葬式という言葉を聞いたことがなかったが、少しだけ不安になった。でも、母親が笑っているのを見て、なんだか安心した。

「お葬式みたい？」サクラはもう一度確認した。

「うん。黒ってね、厳かな感じがするでしょ？」母親は微笑みながら言った。

サクラは、少し考え込む。「でも、お葬式って、おじいちゃんやおばあちゃんが亡くなった時に着る服だよね？じゃあ、この服もそういう意味があるのかな？」

母親は吹き出して笑った。「そんなわけないわよ。黒は落ち着いて見えるから、みんな着るんだよ。それに、汚れが目立たないし。」

「汚れが目立たない？」サクラは不思議そうに聞いた。

その時、父親が突然、仕事の合間に口を挟んだ。「実際、黒って一番汚れが目立つ色でもあるんだぞ。」と訳のわからないことを言い出した。

「え？」サクラは目を丸くした。

「そうだ、黒ってほら、埃や食べ物の汚れが、他の色に比べて目立つだろ？」父親は自信満々に言った。

サクラは首をかしげながら、「でも、お父さん、それっておかしいよ。だって、黒って、きれいに見えるって言うじゃん。」と反論した。

母親も「あら、そうね。お父さん、ちょっと変なこと言うわね。」と笑った。

サクラは、そんな父親と母親を見て、自分も少しだけ大人になった気分だった。確かに黒は落ち着いていて、きれいにも見えるし、きっとどんな場面でも使える色だろうと思う。でも、父親が言うように、黒が汚れが目立つというのも本当のことかもしれない。でも、それでもやっぱりサクラは、黒が好きだった。

「じゃあ、買ってもいいよね？」サクラはもう一度確認した。

母親は笑顔でうなずいた。「もちろん、買っていいわよ。でも、次はちょっとカラフルな色も選んでみたらどう？」

「うん、次はピンクとか青も見てみようかな。」サクラは満足そうに言った。

そして、サクラは自分のカードで初めての買い物を終わらせた。支払いが終わると、サクラは少しだけ自信を持った気分で、画面に向かって笑顔を浮かべた。

「ひとりでできるもん。」サクラは心の中でそう呟きながら、次に選ぶべき服を考えた。