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書籍化申請の案内まで来てたのに

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書籍化申請の案内まで来てたのに

桜は、運営からの返信を待ちながら、少し前に受け取った書籍化申請の案内を思い返していた。それは、アルファポリスの編集部から届いた一通のメールだった。小説「私の婚約者様は王女殿下の騎士をしている」が、好評を得ていることを喜び、さらに書籍化に向けて話を進めたいという内容だった。彼女にとって、それは夢のような出来事だった。

「こんなこと、私にできるんだ…」

書籍化の案内を受け取った時、桜は思わず手を震わせた。自分の物語が書籍として世に出るかもしれない、そんな可能性が目の前に広がっていたからだ。努力と情熱を注いできた作品が、ついに評価され、形になるのだと思うと、心の中で小さな歓喜が湧き上がってきた。

「でも、今はこんなこと…」

それが、削除通知を受け取った瞬間、まるで空から地面に叩きつけられたような気分になった。書籍化の案内をもらったばかりで、何もかもが前途有望だと思っていた矢先だったのに。どうしてこんなことが起こったのか、桜の頭の中は混乱の渦に飲み込まれていた。

「どうして削除されたの? 一体、何がいけなかったんだろう?」

運営からのガイドラインに抵触している可能性がある、という返答も、彼女には納得がいかなかった。内容に問題があったのか、それとも投稿のタイミングに何か問題があったのか。結局、具体的な理由は明示されなかった。

桜は携帯を手に取り、再び編集部からのメールを確認する。書籍化申請の案内には、次のステップとして契約書にサインをするようにと書かれていた。こんなにも近くに夢があったのに、それが突然遠く感じられるようになってしまったことが、彼女の心に重くのしかかった。

「頭がパルプンテみたい…」

桜はひとりごちた。『パルプンテ』という言葉が、彼女にとっては少し不思議な響きだった。まるで何かが爆発して、意味がわからない状態にさせられてしまったような感覚。それが今の自分にぴったりだと思った。

その夜、桜は眠れなかった。削除されたことが頭を離れず、次の一手が見つからないまま、心が乱れていった。書籍化の案内が来ていたことが夢だったのか、現実だったのか、そんな疑問さえ湧いてきた。

「どうして、こんなことに…」

寝室の静けさの中で、桜は自分自身に問いかけ続けた。しかし、答えは見つからない。焦りと不安が混じった感情が胸の奥を締め付ける。彼女が抱えているのは、ただの失敗ではなく、夢を手のひらで感じたはずのその瞬間を、まるで壊されてしまったような感覚だった。

次の日、桜は改めてガイドラインを読み直した。そして、再度作品を確認したが、やはり具体的に何が問題だったのかはわからないままだった。もしかしたら、自分の書き方に何か不備があったのかもしれない。それとも、もしかしたら運営の手違いだったのか? 

その後、運営に再度問い合わせをしてみたが、回答は得られず、桜の心はますます乱れ続けた。

「書籍化なんて夢だったんだ。」

そして、そんな思いが頭をよぎると同時に、桜は新たな決意を抱くようになった。確かに、今は辛い時期だ。でも、諦めるわけにはいかない。心の中で芽生えたあの情熱は、まだ消えていないのだ。

「こんなことで終わらせるわけにはいかない。」

桜は深く息を吐き、再びパソコンを開いた。自分の物語は消えてしまったかもしれないけれど、それでも彼女にはまだ書く力がある。そして、書き続ける覚悟がある。

「次に向かって、また書き出すんだ。」

何度でも挑戦するつもりだった。桜は、もう一度物語を紡ぎながら、今度こそ確実に目標を達成する決意を固めた。

「どんな壁も、越えてみせる。」







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