このユーザは規約違反のため、運営により削除されました。 前科者みたい 小説家になろうを腐ったみかんのように捨てられた 雑記帳

Z世代の彼ら

『Z世代の彼ら』

ミユキは新入社員として、東京のとあるIT企業に入社したばかりだった。大学を卒業してまだ数ヶ月、慣れないスーツ姿と緊張の面持ちで毎日職場に向かう日々。彼女の部署には、ほぼ同世代の若い社員が多かった。20代前半の彼らは、いわゆる「Z世代」と呼ばれる世代だ。ミユキ自身もその一員だが、彼女には同世代の特徴や価値観をしっかりと理解しているという自信はなかった。

「ねえ、ミユキちゃん、ランチ一緒に行かない？」

声をかけてきたのは同期のカナだった。SNSで何十万ものフォロワーを持つインフルエンサーでもあるカナは、明るくて社交的な性格で、周囲の人々からすぐに好かれるタイプだ。ミユキは少し気後れしながらも、カナに連れられて近くのカフェに向かった。

カフェに入ると、カナは手慣れた様子で店内の写真を数枚撮り、「#新しいお気に入り」「#カフェ巡り」といったハッシュタグを付けてSNSに投稿した。その様子を眺めながら、ミユキはふと彼女の行動に驚いた。

「カナちゃん、そういうのすごいね。いつも投稿してるの？」

「うん、まあね。でも、ただ載せるだけじゃなくて、フォロワーのみんなと話すのが楽しいのよ。コメントに返事したり、好きなことを共有するのが好きなんだ。」

ミユキは、その言葉に少し感心した。Z世代は「つながり」を大切にする世代だと言われている。リアルだけでなく、オンラインでも人との結びつきを重視する傾向がある。それは単なる自己表現の場ではなく、共感や共有を通じて生まれる「共鳴」が重要なのだと、カナの言葉から感じた。

ランチを食べながら、話題は仕事のことへと移った。カナは、上司のやり方について少し不満を漏らしていた。

「なんかさ、もっとフラットに意見を言える環境があればいいのに。私たち、ただ言われたことをやるだけじゃ成長できないと思うんだよね。」

ミユキは、そんなカナの発言に驚いた。同じ新入社員であるにもかかわらず、彼女はすでに「自分の意見」を持っていて、それを発信することをためらわない。Z世代は「自己主張」を重視すると言われるが、それはただの自己中心的な考え方ではなく、自分の存在を確立しつつ、集団の中での役割を果たそうとする意識の現れだ。

その後も話は続き、カナが好きなブランドやエコ意識について語り始めた。ミユキが「エコバッグとか使ってるの？」と尋ねると、カナは少し得意げにスマホを見せた。

「これ、最近買ったリサイクル素材のバッグなんだけど、めちゃくちゃ可愛いでしょ？でもこれ、ただおしゃれってだけじゃないの。地球環境のことも考えてるブランドだから、使うたびにちょっと良いことしてる気分になれるんだよね。」

ミユキはまた感心した。Z世代は環境問題や社会課題に敏感だとされている。それは単なる流行や一時的な興味ではなく、自分たちが生きる世界をより良くしたいという切実な思いから来ているのだ。

ランチを終えた後、職場に戻る道すがら、ミユキはふと考えた。

「私も、自分らしく生きたいって思うけど、どうしたらいいんだろう？」

カナのように堂々と自己主張し、社会や環境に意識を向ける姿を見て、ミユキは少し自分が遅れているように感じた。だが、それは決して悪いことではない。ミユキもまた、自分らしさを模索しながら、一歩ずつ進んでいけばいいのだ。

職場に戻ると、ミユキはカナから「次の週末、一緒にイベントに行かない？」と誘われた。それは、地元の若手クリエイターたちが集まるアートフェスだった。

「うん、行きたい！」

ミユキは迷うことなく答えた。新しい世界を知ること、新しい人々とつながること。それは、彼女にとって「自分らしさ」を見つけるための一歩だった。

カナとの会話を通じて、ミユキはZ世代の価値観を少しずつ理解し始めていた。共感を大切にし、自己主張を恐れず、社会や環境にも目を向ける。彼女もまた、その価値観を取り入れながら、自分らしい未来を築いていくのだろう。