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生きていることがしんどいな

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生きていることがしんどいな

深夜、薄暗い部屋で私は机に向かっていた。乱雑に散らかった紙とメモ帳。隅には開きっぱなしのノートパソコンが置かれている。画面にはアルファポリスの通知メールが表示されていた。

「全作品の取り下げおよび投稿インセンティブの利用停止処置について」
その文字が、画面越しにじっと私を睨んでいるように見える。

「ああ……まただ」

5年前、小説家になろうから強制退会させられたときのことが蘇る。あのときは著作権に関する認識不足が原因だった。失ったのは投稿したすべての作品と、多くの読者。今回もまた、私のミスだ。違反だと指摘されたメールは送られていたはずなのに、確認を怠っていた。

「何も変わってない……」

苦笑が漏れる。頭では分かっている。注意欠陥多動性障害、そして識字障害。メールの文字を一行読むだけで疲れ果て、重要な内容さえ流してしまう。紙に書いたメモを後で見返しても、自分で何を書いたのか理解できないこともある。

「普通になりたかった……」

部屋の隅に置かれた本棚を見つめる。そこには読もうと買い集めた小説が山積みになっている。いつか読もうと手に取ってはみたものの、文字がすぐに踊りだし、内容が頭に入ってこない。結局、どれも途中で諦めた。

何もかもが中途半端だ。書くことも、読むことも、人との関わり方も。やり直そうと決めるたびに同じ過ちを繰り返し、気づけば人に迷惑ばかりかけている。

机に伏せた頭を抱えた。これからどうすればいいのか分からない。ただ、息をしているだけでつらい。誰かに助けを求めることさえも億劫で、自分の声が届くとも思えない。

「もう……疲れたな」

そう呟いたとき、ふいにノートパソコンの画面が暗転した。節電モードだ。真っ黒な画面に映る自分の顔が、あまりにも惨めで目を背けたくなった。

そのとき、机の隅に置かれたスマートフォンが振動した。画面には、唯一の友人である佐藤からのメッセージが表示されている。

「元気にしてる?最近どう?」

佐藤はいつも気にかけてくれる。だが、その度に自分の無力さを痛感する。「元気だよ」と嘘をついて返信したことが何度あっただろう。でも、今日はそれすらもできなかった。

返信画面を開いてしばらく指を止めた。何かを書こうとしては消し、また書こうとしては消す。その繰り返しだ。

やがて、ようやく一文を送信した。

「ごめん、ちょっとしんどいんだ」

それだけだった。でも、送信した瞬間、少しだけ心が軽くなった気がした。

スマートフォンが再び震える。佐藤からの返信だ。

「話そうよ。明日、空いてる?」

その言葉に救われた気がした。自分の小さな一歩が、誰かとの繋がりを生むことがある。たとえ今は何も変わらないように見えても、いつか何かが変わるかもしれない。

生きていることがしんどい。でも、もう少しだけ頑張ってみよう。そう思えた夜だった。






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