ほっこりできるで賞

春秋花壇

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シュリーレン現象

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シュリーレンの夢
アスファルトの熱に揺れる空気
夏の日差しが描く幻影
シュリーレンの揺らめきが
心の奥に映る夢のよう

遠く見える景色が
歪んだガラス越しの世界
まるで記憶のかけらが
風に舞うように揺れ動く

熱気の中に浮かぶ光の帯
密度の違いが生む不思議な模様
現実と幻想の狭間で
瞬間の美を感じる

汗ばむ肌に冷たい風
水風呂の贅沢なひととき
訪問介護の笑顔が
日常に癒しをもたらす

シュリーレンの現象が教えてくれる
見えないものの美しさ
揺れる光の中にある真実
それは心の中に潜む夢

暑さの中で見つける冷たい瞬間
揺らめく空気の中に潜む希望
今日もまた、シュリーレンの夢を見る
夏の日差しの下で輝く奇跡


シュリーレン現象

アスファルトから湯気が出そうに見える現象は、太陽の強い光でアスファルトが温められ、路面近くの空気が膨張して密度が低くなることで起こります。この密度が低くなった空気は軽くなって上昇すると同時に、屈折率も低くなって、光の進む方向が変化するためにゆらいで見えるのです。これは気体や液体といった流体で起きる特有の現象で、「シュリーレン現象」とも呼ばれます。

東京37℃。うだるような暑さが体の水分を容赦なく奪っていく。

顎からぽたぽたと汗が滴る。

「水風呂―」

ザブ―ン。

ざざー。

「あああああああああああああああああああああああああああああ」

最高の贅沢。

「か・い・か・ん」

訪問介護の人と、一緒にお掃除した後のとっておきのご褒美。

ヘルパーさん73歳。

母 富子さん70歳。

老々介護の現状も、二人の明るさでまったりと時が流れていく。

ヘルパーさんが帰った後の母さんの小さな贅沢を息子が静かに見守っている。

「しあわせだねー」

「ありがたいねー」

洗濯物は息子が干してくれた。

「お金はないけど、なんだかんだ言って幸せ者だよね」

「明日お金が入ったら、フルーツ買ってくるんだ」

「そうだね、楽しみだね」

「アマゾンで王将の餃子やチャーハン、さいころステーキも買ってくれてありがとうね」

「喜んでもらえてうれしいよ」

「15日過ぎて、給付金が入ったら、魚屋のおじさんのところでうなぎでも買おうか?」

「アマゾンもいいけど、やっぱり対面販売が血が通ってるって感じでほっこりするよね」

「鮪も鮭もありがとうね」

「ネットショップは際限がないから、怖い」

きっと、何万も使ってしまったのだろう。

優しい息子。

風呂上りに、氷水をおいしそうにごくごくとのどを鳴らして飲んでいる。

小さな幸せが喜びを添えて押し寄せてくる。

シュリーレン現象、熱中症警戒アラート、室内熱中症。

母にはつらい現実も、心の持ちようでポジティブへと変えていく。

時間よ とまれ

生命のめまいの中で

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