ほっこりできるで賞

じんわり七月

「じんわり七月」

夏の陽射しは、静かな日常を包み込んでいた。町は静かで、時折聞こえるのは小鳥のさえずりや遠くの子供たちの笑い声だけだった。そんな日常の中で、一人の若い女性が暮らしていた。

彼女の名前は梨花（りか）。彼女は小さな花屋を営んでおり、毎朝早くから花を育て、美しく咲かせていた。梨花の花屋は、町の人々にとって特別な存在だった。その花々は彼らの日常に彩りを添え、心を温めてくれた。

ある日、梨花は花屋の前で一冊の古い本を見つけた。その本には古代の言葉で「運命の花」と書かれていた。興味を持った梨花は、その本を読み始めると、その中には人々の運命が花として表されているという不思議な言い伝えが書かれていた。

「花が咲くとき、運命が変わることがある」という言い伝えに引き込まれた梨花は、それから毎日その本を読み続けた。そして、ある日の朝、彼女の花屋に一人の男性が訪れた。

その男性は、穏やかな笑顔を持つ青年で、名前を伝えることなく梨花の花を眺めていた。彼の目に留まったのは一輪の青いバラだった。彼はその花を手に取り、梨花に微笑みかけた。

「この花、とても美しいですね。」

梨花は驚きながらも微笑み返した。「ありがとうございます。」

その後、その青年は毎日のように花屋を訪れるようになった。彼と梨花は少しずつ会話を交わし、互いに心を開いていった。そして、梨花はその青年が本に書かれた運命の花の持ち主であることに気づいた。

運命の花が二人を繋げたその夏は、穏やかで幸せな日々で満ちていた。彼らの間には言葉にならない特別な絆が芽生え、次第に恋心へと変わっていった。

その後、彼らは共に歩む道を選び、梨花の花屋で結ばれた。彼らの愛は静かで、じんわりとした暖かさを持っていた。運命の花が彼らにもたらしたのは、ただ一輪の花ではなく、永遠の愛と幸せだったのだ。

その町に、二人の幸せを祝福する花々が咲き誇っていた。

終わり