ほっこりできるで賞

春秋花壇

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翡翠

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翡翠

昔々、ある小さな村に、美しい翡翠色の湖がありました。その湖の名前もまた、「翡翠湖(ひすいこ)」と呼ばれ、その水は澄みきっていて、まるで翡翠のような緑色をしていました。

翡翠湖のそばに住む、小さな家に住む老夫婦がいました。老夫婦は名前を持っていませんでしたが、村の人々からは「おじいさん」と「おばあさん」と呼ばれていました。おじいさんは木工仕事が得意で、おばあさんは庭で美しい花を育てるのが得意でした。二人は互いに深く愛し合い、その愛情が周囲にも伝わっていました。

ある日、翡翠湖で不思議な出来事が起きました。湖の水面に、一羽の美しい翡翠色の鳥が現れたのです。その鳥はとても珍しく、村の人々はみんな驚きました。その鳥は湖の上を飛び、時には水面に立ち、鮮やかな羽根を翻してみんなを魅了しました。

おじいさんとおばあさんもその鳥を見に湖へ出かけました。おじいさんは驚きつつも、「こんな美しい鳥を見たことがないな」と呟きました。おばあさんは優しく微笑んで、「きっとこの湖の美しさが、こんな鳥を呼び寄せたのね」と言いました。

その後も、翡翠色の鳥は毎日のように湖に現れ、村の人々を楽しませました。人々はその鳥を見に湖へ出かけ、その美しい姿を心に刻んでいきました。鳥が現れる度に、村の中には幸せな空気が満ちているようでした。

しかし、ある日突然、翡翠色の鳥が現れなくなってしまいました。村の人々は心配しましたが、どうすることもできませんでした。おじいさんとおばあさんも深く落ち込みましたが、二人はそれでも毎日を静かに過ごし、互いの存在を支え合いました。

ある日のこと、おじいさんが湖のほとりで木を削っていると、不思議な光が目に入りました。木を置いて近づいてみると、そこには翡翠色の鳥がいました。鳥は傷ついたようでしたが、おじいさんが近づいても逃げることなく、じっと見つめていました。

おじいさんはその鳥を抱きかかえ、おばあさんに見せようと家に連れて帰りました。おばあさんは鳥を見て、少し驚きながらも優しく抱きしめました。「これが、あの翡翠色の鳥なのね。どうしてここにいるの?」と尋ねましたが、鳥はただ静かに見つめるだけでした。

おじいさんとおばあさんは、その鳥を優しく世話しました。少しずつ鳥も元気を取り戻し、また湖へ飛んでいく日が来るのを楽しみにしているかのようでした。村の人々も再び幸せな日々を取り戻し、翡翠色の湖が再び穏やかな日常を取り戻しました。

そして、その翡翠色の鳥は、二人の愛情で元気を取り戻し、湖を舞い、村を幸せに満たしていったのでした。

終わり
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