ほっこりできるで賞

春秋花壇

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ほっこりおじいちゃん

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詩音は8歳の小学3年生。

詩音は、毎日近所のおじいちゃまから秋田の民謡を歌ってもらう。

おじいちゃまは、いつもぽつんと長い時間公園に座っている。

詩音が話しかけると、嬉しそうに答えてくれる。

名前も知らない。

どこのお家に住んでいるのかも知らない。

だけどおじいちゃまはいつも、公園のベンチにぽつんと座っていた。

丸まった小さな背中が見えると、詩音はとっても嬉しくなって

大急ぎで宿題を終えて、公園に走っていく。

そして、田舎の話をしてもらったり、民謡を歌ってもらったりするの。

詩音はだんだん、おじいちゃまが大好きになった。

寒い日も、暑い日もおじいちゃまは公園のベンチに座っていた。

雨の日やベンチがまだ濡れている日はおじいちゃまの姿はなかった。

時が立ち、新型感染症が流行って、不要不急の外出はできなくなっていった。

詩音も小学3年生から、4年、5年と大きくなっていった。

たまに見かけても、前のように話しかけることは少なくなっていった。

新型感染症が収まって、今日気づいたんだ。

このあたりのお家が、一斉に売られて新しい家が建ち始めた。

そして、新しい知らない人たちが増えて行く。

おじいちゃまの姿は、いくら待ってもどこを探してもない。

もう、おじいちゃまの歌ってくれる秋田の民謡の声は聞こえない。

ラジオ体操に集う人もどんどん変わっていく。

杖をつきながら、

「ラジオ体操にはもういけないの。手術したの」

と、股関節をさするおばあちゃま。

「金属が入ってるのよ」

寂しそうにつぶやいた。

「秋田の民謡を歌ってくれてたおじいちゃまはお引越しをされたんですか?」

詩音が聞くと、ちょっと首をかしげて

「亡くなったり、老人ホームに入ったり、ずいぶんこのあたりも人がいなくなったよね~」

時が立ち、新型感染症が流行って、不要不急の外出はできなくなっていった。

詩音も小学3年生から、4年、5年と大きくなっていった。

たまに見かけても、前のように話しかけることは少なくなっていった。

新型感染症が収まって、今日気づいたんだ。

このあたりのお家が、一斉に売られて新しい家が建ち始めた。

そして、新しい知らない人たちが増えて行く。

おじいちゃまの姿は、いくら待ってもどこを探してもない。

もう、おじいちゃまの歌ってくれる秋田の民謡の声は聞こえない。

ラジオ体操に集う人もどんどん変わっていく。

杖をつきながら、

「ラジオ体操にはもういけないの。手術したの」

と、股関節をさするおばあちゃま。

「金属が入ってるのよ」

寂しそうにつぶやいた。

「秋田の民謡を歌ってくれてたおじいちゃまはお引越しをされたんですか?」

詩音が聞くと、ちょっと首をかしげて

「亡くなったり、老人ホームに入ったり、ずいぶんこのあたりも人がいなくなったよね~」

「ダックスフンドを連れたおばあちゃまも見なくなっちゃいましたね」

「うんうん、なくなったの。家族の人が家を売っちゃったから今、新しい家を建ててるよね」

公園でお歌を歌ってくれた、優しいおじいちゃまはもういない。




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