葛

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葛
1
深い秋の森の中に、古びた家がひっそりと佇んでいた。人々はそれを「葛の家」と呼び、長い間、近づくことはなかった。その家は蔦に覆われ、木々の間に埋もれるようにして存在していた。家の周りには、古い伝説とともに語り継がれる怖ろしい話があったが、その真偽を確かめる者は誰もいなかった。

ある日、若い女性の奈津（なつ）が、その家の前に立っていた。彼女は、最近亡くなった祖母から受け継いだ家の管理をしなければならないという手紙を受け取り、ここに来たのだった。奈津は、恐怖心を抱きつつも、好奇心と義務感からその家に足を踏み入れる決意をした。

2
家の扉は錆びて閉じられていたが、奈津は力を込めて開けた。扉がきしむ音とともに、暗い室内が姿を現した。彼女は懐中電灯を取り出し、光を当てながら部屋の中を調べ始めた。部屋は長い間放置されていたらしく、ほこりと湿気が充満していた。

奈津が最初に気づいたのは、壁一面に広がる異様な模様だった。黒い線が絡み合い、まるで何かを呪うような形になっていた。彼女はその模様に引き寄せられるように近づいたが、近くで見てもその模様の意味を解明することはできなかった。彼女はその不気味さに耐えながら、屋内をさらに調べ続けた。

3
家の奥にある地下室への階段を見つけた奈津は、そこに降りていく決心をした。階段は朽ちかけており、一歩一歩が重く感じられた。地下室に到着すると、そこには古い木箱や家具が散乱していた。彼女は箱を開けてみたが、中には古い衣類や書類しか見つからなかった。

しかし、地下室の隅にある小さな扉を開けると、別の部屋が現れた。その部屋の中には、奇妙な装置やお守りが並べられていた。中央には古びた祭壇があり、その上には黒い石が置かれていた。奈津はその石に引かれるように手を伸ばし、触れてみた。

すると、突然、家全体が震え始め、壁に描かれた模様が赤く光り出した。奈津は驚きと恐怖に駆られ、祭壇から離れようとしたが、部屋の扉が閉じてしまった。彼女は閉じ込められたことに気づき、助けを求めて叫んだ。

4
奈津が叫び続ける中、部屋の奥から低い声が聞こえてきた。「ようやく来たか。」その声は冷たく、どこか不気味な響きを持っていた。奈津はその声に従い、部屋の奥へと進んだ。そこには、古びた鏡があり、その前に立つ影が見えた。

鏡の中には、奈津が見たことのない顔が映っていた。それは、自分と似ているがどこか違う。鏡の中の自分が、冷酷な目で彼女を見つめていた。奈津はその姿に引き寄せられるように近づき、手を伸ばした。

その瞬間、鏡の中から何かが飛び出し、奈津の体をつかんだ。彼女は身動きが取れなくなり、恐怖に満ちた目で鏡を見つめた。その中の影が、彼女を引き込もうとする力を持っているように感じた。

5
奈津は必死に抵抗しながら、その影の正体を理解しようとした。鏡の中の影は、かつてこの家に住んでいた人間の霊であり、家の呪いを引き継いでいた。彼らは長い間、家の中に閉じ込められ、奈津のような新しい犠牲者を待っていたのだ。

その影が彼女に話しかけた。「この家に隠された秘密を知りたくはないか？それを知れば、永遠にここから解放されるかもしれない。」

奈津は、影の言葉に従い、家の中に隠された秘密を暴く決心をした。彼女は鏡の中の影と対話し、家の呪いを解くために必要な儀式を学ぶことになった。全てを知り尽くし、家を呪いから解放するためには、自らの命を犠牲にする覚悟が必要だった。

終
奈津はその後、家を解放するために儀式を行い、家の呪いを解いた。その結果、家の中の影は消え、平穏が戻った。しかし、奈津はその代償として、自らの命を家に残すことになった。彼女の犠牲によって、家は再び静かになり、伝説とともに語り継がれることとなった。