妻と愛人と家族

春秋花壇

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食卓を支える手

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食卓を支える手

大根 112円

人参 165円

白菜 67円

キャベツ 101円

ほうれん草 554円

ねぎ 407円

レタス 181円

きゅうり 397円

茄子 427円

トマト 417円

ピーマン 537円

じゃがいも 193円

さといも 392円

玉ねぎ 152円

ブロッコリー 448円


智子は夕食の支度をしながら、目の前に並べた野菜たちの値段を考え、思わずため息をついた。

「大根、112円…人参、165円…ほうれん草、554円…」と、次々と頭の中で計算してみる。つい半年前までは、これほどまでに野菜の値段を気にしたことはなかった。しかし、物価の急騰は家計に深刻な影響を及ぼしており、智子も日々の買い物に頭を悩ませるようになっていた。

「最近、野菜の値段がどんどん上がってるわね…」と、智子はつぶやく。夕食のメニューを決める際も、まず「安い野菜」を選ぶようになり、家族の栄養バランスを保つのが難しくなっていた。

息子の悠人が台所に入ってくると、「今日のご飯は何?」と聞いてきた。智子は少し気まずそうに答える。「今日はキャベツとじゃがいものスープ、それに少しだけ肉が入ってる炒め物よ」

悠人は一瞬がっかりした表情を浮かべたが、すぐに元気に「おいしそう!」と笑顔を見せてくれた。その姿に智子は少しだけ心が和んだが、やはり物価の高騰に対する不安は消えなかった。

数日後、智子はまたスーパーに足を運んだ。野菜売り場を見回し、安いものを探していると、隣で同じように野菜を選んでいる年配の女性が声をかけてきた。「本当に野菜が高くなったわね。前はこんなに気にせずに買えたのに」

智子も同じ思いを抱えていたため、その女性と自然と話が弾んだ。「そうですよね。ほうれん草なんて、もう手が出せないくらいの値段です」

「ねぎだって、407円もするんだから、ちょっと手を出しにくいわよね」と女性が苦笑する。智子はその話を聞きながら、同じ悩みを抱える人がいることで少しだけ気持ちが楽になった。

その日の帰り道、智子は地域の掲示板に「食材の交換会」のポスターが貼られているのを見かけた。地域住民が集まり、余った野菜や家庭菜園で育てたものを持ち寄り、必要なものと交換するイベントだという。

「これなら少しでも家計の助けになるかもしれない…」と思い、参加を決めた。

その週末、智子は公民館で行われた交換会に参加した。会場には、新鮮なキャベツやじゃがいも、玉ねぎが並んでおり、参加者たちが和やかに会話しながら交換を楽しんでいた。智子も近所の人と挨拶を交わしながら、さっそく野菜を手に取ってみた。

「こんなふうに地域で助け合えるなんて、本当にありがたいわね」と話しかけてきたのは、先日スーパーで会った年配の女性だった。彼女もこのイベントに参加しており、余ったさといもを持ち寄っていた。

智子はその日、さといもやトマト、ブロッコリーなど、普段の買い物では手が届かない野菜を交換して持ち帰ることができた。家に帰ると、家族にその日の出来事を話し、「これでしばらくは安心して野菜が食べられるわ」と微笑んだ。

物価の高騰が続く中、智子は地域社会と支え合いながら、少しずつ工夫を重ねていこうと決意した。










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