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東京・六義園の夜、家族で訪れる庭紅葉の特別観賞
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【東京・六義園の夜、家族で訪れる庭紅葉の特別観賞】
11月の終わり、私たち家族は六義園の夜間特別開園に訪れた。この日は、紅葉がライトアップされると聞き、子どもたちが「夜にお出かけしたい!」と大喜びだった。普段は決して遅くまで出歩くことはないけれど、この時期だけの特別な紅葉を家族みんなで見に行きたくなった。
六義園に着いた頃には、すっかり日が沈み、冷たい空気が手足にしみる。温かい上着に包まれて、私たちは家族で肩を寄せ合いながら入口をくぐった。すぐに、目の前に広がるライトアップされた庭園が私たちを出迎え、その景色に息を呑んだ。
闇夜に浮かび上がる紅葉が照らされ、庭全体が鮮やかな朱や黄金色に染まっていた。その光景は、昼間見る紅葉とはまるで異なり、夢のような美しさだった。子どもたちも「わぁ、すごい!まるでおとぎ話みたい!」と目を輝かせている。
まずは、土蔵の壁面に投影された映像の前で足を止めた。壁面に映し出される映像は、風に揺れる紅葉が再現されている。まるで絵本の一場面が目の前で動いているようで、私たちは思わず立ち尽くしてしまった。特に次男は、その美しい映像に見入っていた。彼はアニメや映像作品が好きで、いつも「将来はアニメーションの仕事をしたい」と言っている。彼の夢が少しでも広がるようにと、しばらく彼にその場を独占させた。
庭を歩き進めると、フォトジェニックな撮影スポットがいくつも現れる。真っ赤に染まったもみじが浮かぶ池のほとりで、家族写真を撮ることにした。カメラを三脚に固定し、セルフタイマーをセットして、私たちは紅葉を背景に並んだ。タイマーがカウントダウンを始めると、「笑って!」と娘がはしゃいで言う。その一言に皆が笑顔になり、シャッターが切られた。
園内を散策するうち、父が「ここは昔からある庭園なんだよ」と静かに話し始めた。六義園は江戸時代に造られた大名庭園で、長い歴史を経ていまに至るという。父は幼い頃に祖父に連れて来てもらった思い出があるらしい。普段は多くを語らない父が、こうして自分の記憶を私たちに話してくれることが嬉しく、少し不思議な気持ちにもなった。
私たちは最後に、池のほとりに設置されたベンチでしばらく休憩することにした。子どもたちは夢中で見つめているが、もう夜も更けているせいか、少し眠そうな様子だ。私たちはそれぞれに感想を言い合いながら、秋の夜のひとときを噛み締めた。
帰り道、私たちは六義園の幻想的な光景を背にした。車に乗り込んで園を後にすると、子どもたちは疲れもあってすぐに眠ってしまった。夫と二人、静かになった車内で、「来年もまたこの時期に来ようね」と話した。きっとこの紅葉の景色は子どもたちの心にも残り、いつか大人になったときに、私たちがそうであったように、自分の子どもと再び訪れるかもしれない。
家に戻り、眠る子どもたちの寝顔を見ながら、あの美しい夜の六義園の風景が瞼の裏に浮かんだ。家族で一緒に過ごしたこの秋の夜が、私たちの心にいつまでも鮮やかに残り続けるのだろう。
11月の終わり、私たち家族は六義園の夜間特別開園に訪れた。この日は、紅葉がライトアップされると聞き、子どもたちが「夜にお出かけしたい!」と大喜びだった。普段は決して遅くまで出歩くことはないけれど、この時期だけの特別な紅葉を家族みんなで見に行きたくなった。
六義園に着いた頃には、すっかり日が沈み、冷たい空気が手足にしみる。温かい上着に包まれて、私たちは家族で肩を寄せ合いながら入口をくぐった。すぐに、目の前に広がるライトアップされた庭園が私たちを出迎え、その景色に息を呑んだ。
闇夜に浮かび上がる紅葉が照らされ、庭全体が鮮やかな朱や黄金色に染まっていた。その光景は、昼間見る紅葉とはまるで異なり、夢のような美しさだった。子どもたちも「わぁ、すごい!まるでおとぎ話みたい!」と目を輝かせている。
まずは、土蔵の壁面に投影された映像の前で足を止めた。壁面に映し出される映像は、風に揺れる紅葉が再現されている。まるで絵本の一場面が目の前で動いているようで、私たちは思わず立ち尽くしてしまった。特に次男は、その美しい映像に見入っていた。彼はアニメや映像作品が好きで、いつも「将来はアニメーションの仕事をしたい」と言っている。彼の夢が少しでも広がるようにと、しばらく彼にその場を独占させた。
庭を歩き進めると、フォトジェニックな撮影スポットがいくつも現れる。真っ赤に染まったもみじが浮かぶ池のほとりで、家族写真を撮ることにした。カメラを三脚に固定し、セルフタイマーをセットして、私たちは紅葉を背景に並んだ。タイマーがカウントダウンを始めると、「笑って!」と娘がはしゃいで言う。その一言に皆が笑顔になり、シャッターが切られた。
園内を散策するうち、父が「ここは昔からある庭園なんだよ」と静かに話し始めた。六義園は江戸時代に造られた大名庭園で、長い歴史を経ていまに至るという。父は幼い頃に祖父に連れて来てもらった思い出があるらしい。普段は多くを語らない父が、こうして自分の記憶を私たちに話してくれることが嬉しく、少し不思議な気持ちにもなった。
私たちは最後に、池のほとりに設置されたベンチでしばらく休憩することにした。子どもたちは夢中で見つめているが、もう夜も更けているせいか、少し眠そうな様子だ。私たちはそれぞれに感想を言い合いながら、秋の夜のひとときを噛み締めた。
帰り道、私たちは六義園の幻想的な光景を背にした。車に乗り込んで園を後にすると、子どもたちは疲れもあってすぐに眠ってしまった。夫と二人、静かになった車内で、「来年もまたこの時期に来ようね」と話した。きっとこの紅葉の景色は子どもたちの心にも残り、いつか大人になったときに、私たちがそうであったように、自分の子どもと再び訪れるかもしれない。
家に戻り、眠る子どもたちの寝顔を見ながら、あの美しい夜の六義園の風景が瞼の裏に浮かんだ。家族で一緒に過ごしたこの秋の夜が、私たちの心にいつまでも鮮やかに残り続けるのだろう。
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