妻と愛人と家族

すがすがしい秋の朝 家族のためにご飯を作る幸せ

すがすがしい秋の朝　家族のためにご飯を作る幸せ

秋の澄みきった朝、窓からひんやりとした空気が流れ込むと、サクラは思わず深呼吸をした。心地よい冷気が鼻腔をくすぐり、身が引き締まる。少しずつ赤みを帯びてきた庭の木々を眺めながら、サクラは今日も家族のために朝ごはんを作ろうとキッチンに立った。

サクラには、夫のダイスケと、二人の子供、7歳のハルと4歳のアユがいる。忙しい日常の中で、家族全員が顔をそろえる朝の食事は、サクラにとって大切なひとときだ。いつもは仕事に追われているダイスケも、今日はたまたま休みを取れた。家族でゆっくり過ごせるこの特別な日を、サクラは心から楽しみにしていた。

「今日は何を作ろうかな？」とサクラは思いながら、冷蔵庫を開けた。昨日の夕方、近所の八百屋さんで買ってきたばかりの新鮮な秋野菜が目に飛び込んでくる。ほくほくのサツマイモ、甘みが増したかぼちゃ、香り豊かなきのこたち…。秋の味覚がキッチンに並ぶのを見て、サクラの心はさらに温かくなる。

まずは、秋の味覚を存分に楽しめるスープを作ろうと、鍋に出汁をとるための昆布と鰹節を入れた。じっくりと煮出された出汁の香りが立ちのぼり、キッチン全体がふわりと包み込まれる。そこに、かぼちゃやニンジン、きのこを加え、ゆっくりと煮込んでいく。スープの色が鮮やかなオレンジ色に染まっていく様子に、サクラの顔がほころぶ。

次に、おかずとして、サツマイモの甘煮を作ることにした。サツマイモを適当な大きさに切り、鍋に少しの水と砂糖、ほんのりと塩を加えて、弱火でじっくりと煮ていく。やがて、サツマイモがしっとりと柔らかくなり、甘い香りが部屋中に漂った。

その間に、焼き魚も用意する。秋のサンマを軽く塩焼きにし、皮がこんがりと香ばしく焼き上がるように気をつける。ジュウジュウと音を立てながら焼かれるサンマは、サクラの家では定番の朝ごはんだ。脂がのったサンマの香りが、食欲をそそる。

「おはよう、ママ！」

ふと、足音とともに元気な声が聞こえてきた。ハルとアユが眠そうな目をこすりながらリビングに入ってきた。二人とも、テーブルに並べられた料理を見て目を輝かせた。

「うわあ、いいにおい！今日のごはんもおいしそう！」

サクラは子供たちの反応に微笑みながら、「今日はパパもいるから、みんなでゆっくり食べようね」と声をかけた。ちょうどその時、ダイスケもリビングにやってきた。休日に家族全員で食卓を囲むことができるのは久しぶりだ。

「いただきます！」と全員で手を合わせ、朝食が始まった。

ハルはスープを飲んで、「かぼちゃの甘さがすごくおいしい！」と笑顔を見せた。アユはサツマイモの甘煮を口に運び、「お芋さん、やわらかくて甘くて大好き！」と喜ぶ。ダイスケもサンマを口に運び、満足そうに「やっぱり、秋のサンマは最高だな」と感心したように頷いた。

家族全員が、サクラが愛情を込めて作った料理を楽しんでくれる。それがサクラにとっての最高の喜びであり、日々の疲れを忘れさせてくれるひとときだ。サクラは、家族の笑顔を見ながら「今日もこの時間が持てて幸せだな」と心から感じていた。

食事を終え、食卓を囲んでしばらくのんびりと話をする。ハルとアユが、幼稚園や学校での出来事を話し、ダイスケは仕事の話を楽しげに語る。何気ない日常の一コマだが、それこそがサクラにとってのかけがえのない時間だった。

そして、ふと空を見上げると、秋の青空がどこまでも広がっている。サクラは「今日は家族でピクニックにでも行こうか」と提案すると、子供たちは大喜びで「行きたい！」と声をそろえた。

日常の中にある小さな幸せ――それは、秋のすがすがしい朝に家族と過ごす時間と、愛情を込めて作った料理の数々。サクラは、そんな日々の中にこそ、心からの豊かさがあることを改めて実感していた。