妻と愛人と家族

芦ヶ久保の巨峰狩り

芦ヶ久保の巨峰狩り

秋の涼しさが漂うある日、家族8人が毎年恒例の芦ヶ久保の巨峰狩りに出かける準備をしていた。東京から車で数時間、山々に囲まれた芦ヶ久保は、葡萄畑が広がる美しい町で、毎年秋になると甘くてジューシーな巨峰が実を結ぶことで知られている。この伝統的な家族行事は、毎年の楽しみであり、家族全員が心待ちにしているイベントだった。

早朝、家族の元気な声が響く中、車に荷物を詰め込み、いざ出発。両親、兄妹、そしておじいちゃん、おばあちゃんの合計8人が、道中の風景を楽しみながら、目的地に向かって車を走らせる。子どもたちは窓から外の景色を眺め、時折「まだ着かないの？」と催促しながらも、期待に胸を膨らませていた。

到着すると、芦ヶ久保の葡萄園が広がる景色が迎えてくれた。山々に囲まれた広大な畑には、紫色の巨峰がたわわに実っており、その光景に家族全員が感嘆の声を上げた。葡萄畑の入り口で、農園の主人である中村さんが笑顔で迎えてくれる。

「いらっしゃい！今年も良い巨峰ができましたよ。」と、中村さんが話す。家族は早速、葡萄狩りの準備を整え、畑へと足を踏み入れた。そこには、家族一人一人の好みに合った巨峰を見つける楽しみが広がっていた。

父親の信吾さんは、畑の端の方で大きな房を探している。「これだ、これが一番大きい！」と、満足げに言いながら、巨峰を摘み取る。母親の美咲さんは、子どもたちと一緒に、甘い香りを漂わせた巨峰を摘み取りながら、その美味しさに舌鼓を打っていた。

兄の健太さんと妹の由美さんは、お互いに競い合いながら、どちらが多くの巨峰を取れるかを争っていた。健太さんは、「これが俺のベストだ！」と、自信満々で大きな房を手にし、由美さんは「まだまだ負けないよ！」と張り切っている。

おじいちゃんの茂さんとおばあちゃんの恵子さんは、静かに歩きながら、豊かな自然と甘い巨峰に囲まれる幸せを感じていた。おじいちゃんは「昔はこんなに立派な巨峰はなかったんだよ。」と、昔話を交えながら、のんびりとした時間を楽しんでいる。

午後の陽射しが穏やかに降り注ぐ中、家族全員が思い思いに巨峰を摘み取る姿は、まるで秋の風物詩のようだった。子どもたちは摘んだ巨峰を口に運び、その甘さに大喜び。大人たちもその美味しさに満足し、心温まるひとときを過ごしていた。

収穫が終わると、家族は近くの休憩所に移動し、持参したピクニックシートを広げた。お母さんが用意したお弁当とともに、摘みたての巨峰をたっぷりと楽しむ時間が始まる。お弁当の中には、サンドイッチやおにぎり、そして巨峰を使ったフルーツサラダが並び、食卓は豊かに彩られていた。

「今年も最高の巨峰が収穫できたね。」と、父親の信吾さんが笑顔で言うと、家族全員が同意のうなずきと共に歓声を上げた。子どもたちは、食べ終わった後も、摘んだ巨峰を使ったジャムやジュースの話題で盛り上がり、大人たちは、その豊かな味わいをしみじみと味わっていた。

夕暮れが近づくにつれて、家族は帰路につく準備を始めた。秋の空気が心地よく、爽やかな気持ちで帰りの道を楽しむ。車の中では、皆が今日の楽しい時間を振り返りながら、次回の計画を話している。

「来年もまたここに来ようね。」と、妹の由美さんが楽しそうに提案すると、「もちろん！この味覚とこの風景がまた見たいね。」と、家族全員が一致して答える。

帰り道、窓の外に広がる秋の風景を眺めながら、家族は今日の思い出を胸に刻みつけていた。芦ヶ久保の巨峰狩りは、単なる収穫の楽しみだけでなく、家族の絆を深め、自然の中で心温まるひとときを過ごす貴重な機会であると、改めて感じた一日だった。