妻と愛人と家族

春秋花壇

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離婚間近のセックスレス夫婦

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離婚間近のセックスレス夫婦

「もう、こんな生活は限界だ…」リビングの片隅で、山本沙織は夫の和彦の背中を見つめながら呟いた。二人は結婚して10年になるが、ここ数年はセックスレスが続いていた。かつては愛し合い、共に未来を夢見て結婚した二人だったが、今ではすれ違いと冷え切った関係が日常となっていた。

和彦は毎朝、出勤前に家を出るのが早く、帰宅は遅い。仕事に追われる日々で、家庭を顧みる余裕はほとんどなかった。沙織もまた、家事とパートの仕事に追われる日々で、二人の間に会話はほとんどなかった。

「和彦、今日は早めに帰れるの?」沙織は朝食をテーブルに並べながら尋ねた。和彦は新聞から目を上げることなく、無機質な声で答えた。

「どうかな…仕事の状況次第だ。期待しないでくれ。」

その冷たい返事に、沙織の心はまた少し沈んだ。和彦の忙しさは理解していたが、彼の態度には愛情のかけらも感じられなかった。沙織はため息をつき、子どもたちの支度を手伝うためにキッチンへと戻った。

二人の関係が悪化し始めたのは、3年前のことだ。和彦の昇進を機に仕事が一層忙しくなり、家にいる時間が減った。沙織もまた、家計を支えるためにパートを増やし、二人が顔を合わせる時間はどんどん減っていった。そしていつの間にか、夫婦の寝室は分かれ、セックスレスが始まった。

最初は和彦の疲れを思いやり、沙織も無理に求めることはなかった。しかし、時間が経つにつれ、沙織の心には孤独感が募り始めた。和彦の冷たい態度や無関心な言葉に傷つき、次第に二人の距離は埋められないものとなった。

「ねぇ、和彦…私たち、もう少し向き合えないかな?」ある夜、思い切って沙織は話を切り出した。子どもたちが寝静まった後、リビングで静かに二人だけの時間を持つことができた。

和彦はテレビのリモコンを手に取りながら、面倒くさそうに沙織を見た。「向き合うって、どういう意味だよ。俺はちゃんと仕事してるだろう?家のことは君に任せているんだし、それで何が不満なんだ?」

その言葉に、沙織の胸の中で何かが崩れた。和彦の言葉は、表面上は正論に見えるかもしれないが、そこには沙織への思いやりや理解は全くなかった。沙織はもうこれ以上、彼に期待することは無意味だと感じた。

「もういい。お互いに期待するのはやめよう。」沙織は涙を堪えながら、そう呟いた。和彦は沙織の言葉を聞いても、特に何も感じていないかのようにテレビに視線を戻した。

その夜、沙織は一人でベッドに横たわり、過去の二人の幸せな思い出を思い返していた。初めて出会ったときの和彦の笑顔や、結婚式で誓い合った言葉。あの頃は、お互いにとって相手が全てだった。それが今はどうしてこんなにも遠くなってしまったのだろう。

ある日、沙織はパート先で親しい同僚の美奈子に愚痴をこぼしていた。「もう和彦とは会話もほとんどないし、何を考えているのかもわからない。私が悪いのかな。」

美奈子は沙織の肩に手を置き、優しく言った。「沙織さん、そんなことないよ。結婚って、最初はお互いに期待し合うけど、どこかで相手を変えようとしなくなったら、関係は止まっちゃうんだよね。離婚するって選択肢もあるけど、それが本当にいいのかどうか、もう一度考えてみたら?」

その言葉に沙織はハッとした。今までずっと、和彦との関係が変わらないことに焦りと不満を感じていたが、自分自身も和彦を変えようとしていただけなのかもしれない。もう一度、和彦と話し合うべきか、それともこのまま別々の道を歩むべきか。沙織の心は揺れ動いた。

帰宅後、沙織は和彦の帰りを待ち、再び話し合いを試みた。「和彦、もう一度だけ真剣に話がしたいの。私たち、このままでいいの?」

和彦は少し戸惑った表情を浮かべたが、やがて沙織の目を真っ直ぐに見つめた。「沙織、俺も正直、このままじゃいけないと思っていた。だけど、どうしていいかわからなかったんだ。」

その言葉に、沙織は少しだけ希望を見出した。「私も和彦の気持ちをわかってあげられていなかったかもしれない。でも、もしまだ少しでもお互いに対する気持ちが残っているなら、やり直したい。」

和彦は深く息をつき、沙織の手をそっと握った。「俺も…もう一度、やり直せるならやり直したい。」

それから二人は、少しずつ話し合いを重ね、お互いの気持ちを再確認していった。セックスレスという問題は簡単には解決しないかもしれないが、まずは二人の距離を縮めることから始めようと決めた。

「ありがとう、沙織。」和彦が言った。「俺も、もう少し君に向き合うようにするよ。」

沙織は涙を流しながら、和彦の言葉に頷いた。すれ違い、傷つけ合った日々は簡単には消えないが、少なくとも二人は同じ方向を向いて歩き始めることができた。

そして、その小さな一歩が、やがて二人にとって新しい未来への大きな一歩となることを信じて。










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