妻と愛人と家族

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
678 / 1,007

退職二日目の家族との会話

しおりを挟む
退職二日目の家族との会話

家族が集まると、庭には楽しい雰囲気が漂い始めた。バーベキューのグリルからは、美味しそうな香りが立ち込め、正夫は嬉しそうに食材を次々と焼いていた。子供たちが到着し、一緒に過ごす時間が楽しいものになることを期待している京子も、その準備に追われながら微笑んでいた。

「お父さん、退職おめでとう!今日は楽しみにしてたよ」

と、長女の美咲が笑顔で言った。彼女は久しぶりに家族が揃うこの機会を心から楽しみにしていた。

「ありがとう、美咲。君たちが集まってくれて、本当にうれしいよ」

正夫は感慨深げに答えた。

「退職してからは、こうして皆と過ごせる時間が増えると思うと、楽しみで仕方ないんだ」

「お父さん、最近は何か新しい趣味を見つけたの?」

次男の優斗が興味深そうに尋ねた。

「仕事を辞めてから、暇になっちゃったりしない?」

「実はね、優斗」と正夫はニコニコしながら答えた。

「ラジオ体操や庭いじりを始めてみたんだ。それに、毎日少しずつ料理にも挑戦してる。今日は特に頑張ってみたよ」

「おー、今日は特別な日だから期待してるよ!」

美咲がウインクして、正夫にプレッシャーをかけるような笑顔を見せた。

「お父さん、私も手伝うよ。どうやって焼くのか教えてね」

と、末っ子の菜々が積極的にグリルの前にやってきた。

「ありがとう、菜々ちゃん。これがやり方だよ」

と正夫は菜々に焼き加減や調理方法を教えながら、一緒に作業を進めていった。

「君が手伝ってくれると、さらに美味しくなるね」

京子はその様子を見守りながら、家族が楽しそうに会話する中で、自分もリラックスしてきた。長男の智也がふと、家族全員に向かって話しかけた。

「お母さん、最近はどうしてるの?お父さんが退職してから、何か変わったことある?」智也の質問に、京子は少し考え込みながら答えた。

「そうね、最近はお料理や家事が少し楽になって、少しずつ自分の時間が持てるようになってきたわ」

京子は微笑んで答えた。

「でも、まだ新しい生活に馴染むのに時間がかかるかもしれないわね」

「それなら、これからはもっとお互いのことを理解し合って、協力しながら過ごしていこうね」

美咲が真剣な表情で提案した。

「うん、その通りだね」

京子は頷きながら、家族との未来について前向きな気持ちを抱くことができた。

「お互いに支え合いながら、新しい生活を楽しんでいきましょう」

食事が進むにつれて、会話もますます弾んできた。正夫が特製のズワイの焼きガニを取り分けながら、

「これが一番のお気に入りなんだ。ぜひ味わってみてほしい」

と皆に勧めた。家族はその美味しさに驚き、感謝の言葉が飛び交った。

「本当に美味しいね、お父さん。これからはもっと料理を教えてほしいな」

と優斗が言い、正夫は嬉しそうに

「もちろんだよ、優斗。どんな料理にも挑戦してみるつもりさ」

と答えた。

バーベキューの後、デザートのシャインマスカットが登場すると、皆の笑顔がさらに広がった。京子もその光景を見ながら、幸せな気持ちを感じることができた。

「これたかいよなー」

夜が更けると、家族はリビングに集まり、退職祝いのプレゼントを開ける時間となった。正夫は皆からの心温まるプレゼントに感激し、家族一人一人に感謝の気持ちを伝えた。京子もまた、家族との絆を再確認し、これからの生活に対する希望を抱いた。

「これからは、一緒に楽しい時間を過ごしていこうね」

と正夫が言い、京子も心から同意した。

「お互いに支え合いながら、新しい一歩を踏み出そう」

家族の笑い声が響く中で、京子は新しい生活への期待とともに、前向きな気持ちを新たにした。正夫が退職後に変わろうとする姿勢と、家族との絆が深まったこの夜は、心に残る特別な一夜となった。









しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

注意欠陥多動性障害(ADHD)の日常

春秋花壇
現代文学
注意欠陥多動性障害(ADHD)の日常

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

ぽっちゃりOLが幼馴染みにマッサージと称してエロいことをされる話

よしゆき
恋愛
純粋にマッサージをしてくれていると思っているぽっちゃりOLが、下心しかない幼馴染みにマッサージをしてもらう話。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

令嬢たちの破廉恥花嫁修行

雑煮
恋愛
女はスケベでなんぼなアホエロ世界で花嫁修行と称して神官たちに色々な破廉恥な行為を受ける貴族令嬢たちのお話。

処理中です...