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夏の贈り物
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夏の贈り物
しょぼーん
18歳の夏休みが始まったばかりのある日、涼しい風が吹く昼下がり、亜紀はワクワクした気持ちで家の玄関に立っていた。手には、近所の果物屋さんで見つけた、3800円もする大きなスイカがぶら下げられている。彼女の目はそのスイカに釘付けで、ちょっと贅沢な気分に浸っていた。
「これで家族みんなで夏のスイカを楽しもう!」亜紀は心の中でそう決め、スイカを大事に運んでいた。母親が夏の暑さにばてていると聞いたときから、どうしてもスイカを買ってあげたかったのだ。家族で楽しく過ごす時間を持ちたい一心で、無理してでもこのスイカを買うことに決めた。
「ただいまー!」
亜紀は元気よく声をかけながら、スイカを抱えて家の中に入った。予想通り、家の中はいつも通り静かで、家族の誰もが自分の部屋で過ごしているようだった。彼女はスイカをキッチンに置き、冷蔵庫に入れようとした。
しかし、その瞬間、冷蔵庫の扉を開けた亜紀の目に映ったのは、びっしり詰まった食材の数々だった。冷凍食品や調味料、果物、その他もろもろ。冷蔵庫の中は、もういっぱいだったのだ。スイカを入れるスペースはどこにもない。
「あれ、どうしよう…」
亜紀はスイカを手に持ったまま、困惑した表情で冷蔵庫の中を何度も確認した。すると、母親が台所に現れた。亜紀の困り顔を見た母親が、一目で状況を理解したようで、眉をひそめながら言った。
「冷蔵庫に入らないでしょうに、どうするつもり?」
母親の言葉に、亜紀の心はどんどん重くなっていった。せっかくのスイカを買ってきたのに、母親の反応は予想外だった。亜紀は肩を落とし、目をうつむけてしまった。
「えっと…、一緒に食べたかったんだけど…」
亜紀の言葉には、どこかしらのがっかり感と悔しさがにじんでいた。母親は少し柔らかい表情を見せると、ため息をついた。
「スイカを買うのは良いけど、冷蔵庫のことも考えなきゃダメよ。でも、大きなスイカだし、どうせなら冷蔵庫じゃなくても別の方法を考えよう。」
母親はそう言うと、亜紀に冷蔵庫の上に置けるかもしれないと提案したり、大きなクーラーボックスを使う方法を提案したりした。亜紀の目は希望を取り戻し、少しだけ明るい顔になった。
「ありがとう、お母さん…」
亜紀は母親の手助けでスイカをどうにかして家の外に出し、クーラーボックスに入れることができた。夕方になり、家族全員がリビングに集まる時間が近づいていた。亜紀は、スイカがちゃんと冷やせるようにと、氷をいっぱいにして準備を整えた。
「今日のデザートにスイカを食べようね!」
亜紀は家族に向かってにっこりと微笑んだ。みんながリビングに集まってくると、スイカの箱が目立つ場所に置かれ、家族の会話が弾んでいった。スイカが切り分けられ、ひんやりとした甘い味わいが口の中に広がると、家族の笑顔が次第に増えていった。
「亜紀ちゃん、ありがとう。このスイカ、とっても美味しいわ。」
母親が優しく言うと、亜紀はホッとした気持ちで微笑んだ。スイカの甘さだけでなく、家族の温かさと、一緒に過ごせる幸せを感じながら、亜紀は夏の終わりにまた一つ、大切な思い出を作ることができた。
こうして、亜紀の18歳の夏休みは、少しのトラブルとともに、大切な家族との絆を深める素敵な時間となった。スイカが作り出したこの一瞬の幸せは、彼女にとってこれからの季節にも温かい光を灯すものとなるだろう。
おじいちゃんとおばあちゃん、お父さんとお母さん、お兄ちゃんと私と弟。
総勢7人の家族。
大きなスイカはあっという間になくなった。
おばあちゃんが
「初物は東を向いて笑うといいんだよ」
と、教えてくれた。
家族みんなで東を向いて笑う。
風鈴もうちわも蚊取り線香もないけれど、家族の笑顔が広がっていた。
しょぼーん
18歳の夏休みが始まったばかりのある日、涼しい風が吹く昼下がり、亜紀はワクワクした気持ちで家の玄関に立っていた。手には、近所の果物屋さんで見つけた、3800円もする大きなスイカがぶら下げられている。彼女の目はそのスイカに釘付けで、ちょっと贅沢な気分に浸っていた。
「これで家族みんなで夏のスイカを楽しもう!」亜紀は心の中でそう決め、スイカを大事に運んでいた。母親が夏の暑さにばてていると聞いたときから、どうしてもスイカを買ってあげたかったのだ。家族で楽しく過ごす時間を持ちたい一心で、無理してでもこのスイカを買うことに決めた。
「ただいまー!」
亜紀は元気よく声をかけながら、スイカを抱えて家の中に入った。予想通り、家の中はいつも通り静かで、家族の誰もが自分の部屋で過ごしているようだった。彼女はスイカをキッチンに置き、冷蔵庫に入れようとした。
しかし、その瞬間、冷蔵庫の扉を開けた亜紀の目に映ったのは、びっしり詰まった食材の数々だった。冷凍食品や調味料、果物、その他もろもろ。冷蔵庫の中は、もういっぱいだったのだ。スイカを入れるスペースはどこにもない。
「あれ、どうしよう…」
亜紀はスイカを手に持ったまま、困惑した表情で冷蔵庫の中を何度も確認した。すると、母親が台所に現れた。亜紀の困り顔を見た母親が、一目で状況を理解したようで、眉をひそめながら言った。
「冷蔵庫に入らないでしょうに、どうするつもり?」
母親の言葉に、亜紀の心はどんどん重くなっていった。せっかくのスイカを買ってきたのに、母親の反応は予想外だった。亜紀は肩を落とし、目をうつむけてしまった。
「えっと…、一緒に食べたかったんだけど…」
亜紀の言葉には、どこかしらのがっかり感と悔しさがにじんでいた。母親は少し柔らかい表情を見せると、ため息をついた。
「スイカを買うのは良いけど、冷蔵庫のことも考えなきゃダメよ。でも、大きなスイカだし、どうせなら冷蔵庫じゃなくても別の方法を考えよう。」
母親はそう言うと、亜紀に冷蔵庫の上に置けるかもしれないと提案したり、大きなクーラーボックスを使う方法を提案したりした。亜紀の目は希望を取り戻し、少しだけ明るい顔になった。
「ありがとう、お母さん…」
亜紀は母親の手助けでスイカをどうにかして家の外に出し、クーラーボックスに入れることができた。夕方になり、家族全員がリビングに集まる時間が近づいていた。亜紀は、スイカがちゃんと冷やせるようにと、氷をいっぱいにして準備を整えた。
「今日のデザートにスイカを食べようね!」
亜紀は家族に向かってにっこりと微笑んだ。みんながリビングに集まってくると、スイカの箱が目立つ場所に置かれ、家族の会話が弾んでいった。スイカが切り分けられ、ひんやりとした甘い味わいが口の中に広がると、家族の笑顔が次第に増えていった。
「亜紀ちゃん、ありがとう。このスイカ、とっても美味しいわ。」
母親が優しく言うと、亜紀はホッとした気持ちで微笑んだ。スイカの甘さだけでなく、家族の温かさと、一緒に過ごせる幸せを感じながら、亜紀は夏の終わりにまた一つ、大切な思い出を作ることができた。
こうして、亜紀の18歳の夏休みは、少しのトラブルとともに、大切な家族との絆を深める素敵な時間となった。スイカが作り出したこの一瞬の幸せは、彼女にとってこれからの季節にも温かい光を灯すものとなるだろう。
おじいちゃんとおばあちゃん、お父さんとお母さん、お兄ちゃんと私と弟。
総勢7人の家族。
大きなスイカはあっという間になくなった。
おばあちゃんが
「初物は東を向いて笑うといいんだよ」
と、教えてくれた。
家族みんなで東を向いて笑う。
風鈴もうちわも蚊取り線香もないけれど、家族の笑顔が広がっていた。
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