妻と愛人と家族

運命の出会い

「運命の出会い」

ユダの荒野に、炎のように輝く夕日が沈みつつあった。砂漠の空気が冷え込み始め、夜の静寂が訪れようとしている。ダビデは、彼の仲間たちと共に、長い追跡の疲れを癒やそうとしていた。彼らはイスラエルの王サウルから逃れるため、荒野をさまよっていた。

「ここで少し休もう」とダビデが仲間に言った。

彼らが野営を始めた頃、遠くの山道から一団が近づいてくるのが見えた。馬に乗った男たちが重い袋を抱え、数人の女性が後ろをついてきていた。ダビデの部下が警戒しながら言った。「あれは一体何者だ？」

その瞬間、馬の上に乗っている女性がダビデに目を向けた。彼女は美しい黒髪を風になびかせ、堂々とした姿勢で近づいてきた。彼女の名前はアビガル。彼女は知恵深く、賢明な女性で、夫ナバルがダビデに無礼な態度を取ったと知り、すぐに対応を考えたのだ。

「どうかお許しください、ダビデ様。」アビガルは馬から降り、ダビデの前にひざまずいた。「私の夫ナバルが愚かな行いをしました。彼はあなたの力を知らず、無礼な言葉を口にしてしまいました。ですが、どうか彼の愚行を許し、この贈り物をお受け取りください。」

彼女の手には、贈り物として持参した食料が入った重い袋があった。ダビデはアビガルの姿勢に驚き、彼女の言葉に心を動かされた。彼は冷静に答えた。「アビガルよ、あなたの賢さと勇気には敬意を表します。あなたの言葉を受け入れ、あなたの夫を許しましょう。しかし、この出会いがあなたと私にとって何を意味するのか、神が導くままに任せましょう。」

アビガルはダビデの寛大さに感謝し、彼女の心にもまた、ダビデに対する深い尊敬と愛情が芽生え始めた。彼女は彼の強さと信仰心、そして人間性に心惹かれたのだ。

その後、アビガルは無事に家に帰り、夫ナバルに何が起こったのかを伝えた。しかし、ナバルはダビデの寛大さを理解せず、怒り狂った。そして、その怒りが彼自身をも打ちのめし、ナバルはその夜のうちに倒れた。数日後、彼は息を引き取った。

ナバルの死の知らせを聞いたダビデは、アビガルに再び会いに行く決意をした。彼はアビガルを妻に迎えたいと思っていたのだ。アビガルもまた、ダビデが自分のもとに来ることを願っていた。

ダビデはアビガルのもとへ向かい、彼女にこう告げた。「アビガルよ、私はあなたと共に歩みたい。あなたの知恵と勇気を共に分かち合い、これからの人生を共に歩んでいきたいと思っています。」

アビガルはその申し出を受け入れ、ダビデの妻となった。彼女はダビデの側に立ち、彼の苦難を共に乗り越えていくことを誓った。ダビデもまた、アビガルの愛と信頼を得て、彼女を大切にすることを誓った。

二人は運命に導かれ、神に祝福されながら、新たな人生を共に歩み始めたのだった。ユダの荒野で始まったその愛は、やがてイスラエルの王となるダビデの力となり、彼の生涯を支え続けることとなった。

この物語は、ダビデとアビガルの出会いと、彼らが運命に導かれて共に歩み始めた様子を描いています。

サムエル前 22:1-4; 25:1-43。