妻と愛人と家族

春秋花壇

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梅干しの力

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「梅干しの力」

「梅干しを入れてみるのはどうかな?」

健太が美咲に提案したのは、暑さがますます厳しくなってきた7月の終わりだった。お弁当を持って行くのは節約のためだが、やはり夏の暑さが気になっていた。美咲も、健太の提案にうなずきながら、「それ、いいかもね。梅干しには抗菌作用があるって言うし、お弁当に入れると腐りにくくなるって聞いたことがあるわ」と答えた。

次の日の朝、いつものように早起きした美咲は、健太のためにお弁当を作り始めた。おかずは、健太の好きな唐揚げとほうれん草のごま和え。それに、健康を考えて彩り豊かな野菜を加えた。そして、ご飯の中央に小さな梅干しを一つ乗せた。

「これで、少しでも安心してお弁当を食べてもらえたらいいな。」美咲はそう思いながら、しっかりとふたを閉じ、健太に手渡した。

「ありがとう、今日も楽しみにしてるよ。」健太は満足そうにお弁当を受け取り、仕事へと向かった。

昼休み、健太はいつものようにお弁当を開けた。中には見慣れたおかずと、梅干しがちょこんと乗ったご飯があった。梅干しを見た瞬間、健太は美咲が自分を気遣っていることを感じ取り、胸が温かくなった。

「これなら、ちょっと安心できるな。」健太はそう思いながら、梅干しと一緒にご飯を口に運んだ。梅干しの酸味がご飯に広がり、唐揚げの油っぽさもさっぱりと感じられた。

同僚の田中が、ふと健太のお弁当を覗き込んだ。「お、梅干しか。いいアイデアだな。夏にはちょうどいいかも。」

健太は笑って答えた。「そうなんだよ。美咲が気を利かせてくれたんだ。これで少しでも安全に食べられるなら、ありがたいよ。」

田中はうなずきながら、自分のコンビニ弁当を開けた。「俺も今度、梅干しを入れてもらおうかな。でも、うちの奥さん、そんなの知らないだろうしな。」

健太は田中の言葉に共感しつつも、自分がどれだけ恵まれているかを再認識した。美咲が自分の健康を考えてくれていることが、本当にありがたかった。

その夜、帰宅した健太は美咲に感謝の言葉を伝えた。「今日のお弁当、すごくよかったよ。梅干しが入ってたおかげで、安心して食べられたし、味もさっぱりして最高だった。」

美咲は微笑みながら、「それはよかった。これからも、暑い季節は梅干しを使ってみるね。あなたの健康が一番大事だから。」と答えた。

そして、二人は梅干しを使った他のお弁当メニューについて話し合い、次の週末には一緒に梅干しを買いに行くことに決めた。東京の夏の暑さに負けないよう、二人は力を合わせて工夫を重ねていくことを約束した。

こうして、健太と美咲の生活には小さな変化が生まれた。梅干しをお弁当に入れるというシンプルな工夫が、二人の生活を少しだけ豊かにし、夏の厳しさに負けずに乗り越える力を与えてくれたのだった。

このように、日常の小さな工夫が二人の絆を強くするストーリーです。梅干しの力を借りて、夏を乗り切る二人の様子を描いてみました。


玉の外食はやっぱり、二人で楽しみたいのだ。





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