妻と愛人と家族

春秋花壇

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母の教え

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母の教え

私たちの母、恵子さんがすい臓がんのステージ4と診断されたとき、家族全員が衝撃を受けました。特に末っ子の私、彩香はまだ小学6年生で、病気の深刻さを理解するのに時間がかかりました。しかし、母は私たち3人の子供たちに「生きる」ことの大切さを教え続けてくれました。

母は病状が進行し、痛みとるい痩に苦しむようになっても、決して自分を哀れむことなく、常に前向きであり続けました。毎日、母はリビングのソファに座りながら、私たちと過ごす時間を大切にしました。彼女の微笑みは、痛みの中でも決して消えることはありませんでした。

「生きるって、本当に素晴らしいことなのよ」と母はよく言いました。「どんなに辛くても、毎日を大切に生きなさい。それがあなたたちの未来を明るくするから。」

中学生の兄、拓也は母の言葉に深く感動し、学業に一層励むようになりました。母の病気が進行する中で、彼は家族の柱となり、私たちを支え続けました。高1の姉、美咲は母の看病を手伝いながら、進路に悩む時期でもありましたが、母の強さに触発されて、自分の夢に向かって努力を続けました。

母の病状がさらに悪化し、ベッドで過ごす時間が増えると、彼女は私たちに手紙を書くことを始めました。それぞれに向けた手紙は、母の思いと愛が詰まっていました。私には、「いつも優しい心を持って人を助けなさい」と書かれていました。拓也には、「家族を守り、支える強さを持ちなさい」と、そして美咲には、「夢を追い続け、自分を信じなさい」と。

ある日、母は私たちをベッドの周りに呼びました。「みんな、ありがとう」と静かに言いました。「私はもう長くないかもしれない。でも、あなたたちがこれからも一緒に支え合って生きていくことを信じているわ。」

その日、私たち3人は母の手を握りしめ、涙を流しました。それは、母が最後に私たちに伝えた「生きる」ことの意味でした。母の言葉は、私たちの心に深く刻まれました。どんなに辛いことがあっても、母が教えてくれた「生きる」ことの大切さを忘れずに前に進むことを誓いました。

母が亡くなった後、私たち3人は彼女の遺志を受け継ぎ、家族として互いに支え合いながら生きていくことを決意しました。母が教えてくれた「生きる」ことの大切さは、私たちの心に強く残り続けました。どんな困難があっても、母の言葉を胸に、私たちは前に進み続けます。

母が私たちに残してくれたもの、それは「生きる」ことの尊さと愛でした。母の教えを守り、私たちはこれからも家族として強く生きていきます。


がんの末期におけるターミナルケア(終末期医療)とは、病気の進行により余命が短くなった状態の患者が、残りの人生を穏やかに過ごせることを目的とした医療・ケアです。患者本人の意思や尊厳を尊重しながら、心穏やかな生活や生活の質(QOL)を保つための処置が行われます。延命治療は行わず、痛みや不快感を取り除く医療が中心です。


祈っても祈っても、どんどんがりがりに痩せていく母を見ていることがとてもつらかった。

何もできない自分の無力さを受け入れることが難しかった。

6年生の彩香はそんな母を見ていて、

「母さんを見ていると、何のための人生なのかわからなくなる」

「おばあちゃんの介護が終わって、お父さんの介護をして、今度は自分。誰のための人生なの?」

心の叫びを母にぶつけると、

「人生なんて、100物事があったら99か98は辛くて悲しいことばかりかもしれない。

だけど、残りの1か2を感謝して心から楽しんで生きていくのよ」

短絡的な彩香は、

「そんなつらいことばかりだったら、生きているのは嫌だ。早く死にたい!!」

涙でぐちゃぐちゃになりながら、彩香は母にしがみつきました。

「神様から、もういいよ、よく頑張ったねってパスポートが降りるまで死ねないのよ」

と、彩香の頭をそっと撫でてくれました。


「人知れず 知られずとても 一夜のみ 咲くが運命と 白き夕顔」


あれから何十年もたちました。

彩香も今では、2人の子供のお母さんです。

「かあさん、わたし、あがいても、もがいても、はいずってでも、

パスポートが降りるまで頑張って生きています」

母の辞世の句を眺めながら

これだけは、子供たちに胸を張って伝えていこうと思うのです。
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