妻と愛人と家族

春秋花壇

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欺瞞の軌跡

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欺瞞の軌跡

1

札幌の街角で、秋風がキャバクラのドアを押し開けると、そこには一人の若い女性がいた。彼女の名は須藤早貴、28歳。美しい顔立ちと流れるような黒髪が印象的だった。彼女は美容専門学校に通いながら、夜はキャバクラで働いていた。その日、彼女は一人の男性と出会った。61歳のその男性は、裕福であることが一目でわかるような身なりをしていた。

「美容師になりたいんです。学費のためにここで働いています。でも、親は学費を出してくれないんです。」

早貴はその男性にそう話した。男性は彼女の話を聞いて、「夢を応援したい」と感じ、学費や生活費として金を振り込むようになった。

2

日が経つにつれ、男性は早貴にますます心を寄せるようになった。彼は彼女に店を辞めるように頼み、月20万円の「お手当」や会った際の「お小遣い」を渡すようになった。早貴はその金を受け取り、男性に感謝の言葉を何度も伝えた。

「美容関係の会社の社長に認められ、海外留学できることになりました。」

「学校で出場したコンテストでモデルの髪を傷めてしまったので、賠償金が必要です。」

彼女は次々と新たな理由を男性に伝え、計約2980万円を要求した。男性はそれに応じ、金を振り込んだ。しかし、その金は実際には旅行やブランド品の購入に当てられていた。

3

その後、早貴は「紀州のドン・ファン」と呼ばれた資産家、野崎幸助と結婚する。結婚生活は短かったが、野崎は彼女に対して深い愛情を抱いていた。しかし、結婚からわずか数ヶ月後、野崎は自宅で謎の死を遂げた。和歌山地検は、早貴が殺意を持って致死量の覚醒剤を野崎に摂取させて殺害したとする殺人罪で彼女を起訴した。

4

それからしばらくして、早貴は別の詐欺事件で再び法廷に立つこととなった。被害者の男性は、「彼女の話が噓だと分かっていたら金を払わなかった」と証言した。早貴は虚偽の名目で金を受け取ったことを認めたが、「男性は噓だと分かった上で私の体をもてあそぶためにお金を払った」と主張した。弁護側は「だまされた」という要件を欠き、詐欺罪は成立しないと訴えた。

検察側は懲役4年6月を求刑した。

5

法廷での論争は続いた。早貴の証言と被害者の証言が交錯し、真実がどこにあるのかは誰にもわからなかった。法廷での緊張感が高まる中、判決の日が近づいていた。

外では秋の風が再び吹き、札幌の街を冷やしていた。欺瞞の軌跡がどこへ向かうのか、その答えはまだ見えないままだった。








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