妻と愛人と家族

春秋花壇

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良妻賢母

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良妻賢母

1. 桜舞う街で

東京の桜が満開を迎えた春の日、佐藤美月は25歳を迎えた。大学卒業後、就職した出版社で働きながら、結婚の準備を進めていた。

美月は、幼い頃から「良妻賢母」になることを夢見てきた。料理上手で家事全般を完璧にこなせる女性になり、夫を支え、幸せな家庭を築きたいと考えていた。

そんな美月は、大学時代の同級生である佐藤健太と結婚することになった。健太は、大手企業に勤めるエリートサラリーマン。美月の良妻賢母ぶりを気に入り、結婚を決意した。

2. 夢の結婚生活

美月は、結婚生活に大きな期待を抱いていた。健太のために毎日手料理を作り、家事を完璧にこなした。健太は、美月の献身的なサポートに感謝し、二人の生活は幸せに満ち溢れていた。

しかし、そんな幸せな日々は長く続かなかった。健太の仕事が忙しくなり、家に帰る時間が遅くなった。美月は、健太との時間が減っていくことに寂しさを感じ始めた。

それでも、美月は健太を支えようと努力した。夜遅くに帰宅しても、温かい手料理を用意し、健太の話を聞き、疲れを癒してあげた。

3. 理想と現実のギャップ

しかし、健太は美月の努力を当たり前のように受け止めていた。家事や育児は全て美月の役割であり、自分は仕事に集中すればいいという考えだった。

美月は、健太の態度に不満を感じ始めた。自分が良妻賢母であるために努力しているのに、健太からは感謝の言葉ももらえない。理想の結婚生活と現実のギャップに、美月は苦しみ始めた。

4. 心の葛藤

美月は、健太と話し合いをしようとしたが、健太は聞く耳を持ってくれない。美月は、自分の気持ちを押し殺し、笑顔で家事をこなす日々を送った。

しかし、心の奥底では、怒りや悲しみが募っていく。自分が良妻賢母であるために努力しているのに、何も報われない。美月は、次第に自信を失い、心が空っぽになっていくような感覚に陥った。

5. 変化の兆し

ある日、美月は偶然、健太が同僚と電話で話しているのを聞いてしまった。健太は、美月の家事や育児を愚痴り、「もっと自立した女性になってほしい」と語っていた。

美月は、ショックを受け、健太に対する愛情が冷めていくのを感じた。自分が良妻賢母であるために努力してきたのに、健太はそんな自分を評価してくれていなかった。

美月は、決断を下した。健太に自分の気持ちを正直に伝え、離婚することを決意した。

6. 新しい人生への一歩

美月は、健太に離婚の意思を伝えた。最初は驚きと戸惑いを隠せない健太だったが、美月の強い意志に押し切られ、離婚を受け入れた。

離婚後、美月は一人暮らしを始め、新しい仕事に就いた。家事や育児に追われる日々から解放され、自由な時間を満喫できるようになった。

美月は、自分が本当に望む人生とは何かを改めて考えるようになった。良妻賢母であることよりも、自分が幸せになれることを追求することが大切だと気づいた。

7. 夢の再定義

美月は、新しい仕事を通して多くの出会いがあり、充実した日々を送っていた。自分自身を大切にしながら、自分が好きなことを追求することで、本当の幸せを見つけていく。

美月の夢は、「良妻賢母」ではなく、「自分らしく生きる」ことへと変化した。

8. 終わりに

この物語は、現代社会における「良妻賢母」という概念について考えさせられる作品です。女性は結婚したら家事や育児に専念すべきという考え方は、もはや時代錯誤と言えるでしょう。

女性は、結婚してからも自分自身のキャリアや夢を追求する権利があります。大切なのは、自分が本当に望む人生を選択することです。

美月は、離婚という苦難を乗り越え、自分らしい幸せを見つけていく。この物語が、多くの女性に勇気を与えることを願っています。


PS.

離婚後20年が過ぎ、子供たちもそれぞれ自分の家庭を持つようになった。

長男の爽は言う

「母さんは、夫がちゃ失敗だったと言う、僕から見たらお互い様なんじゃないのかな」

長女の奏は言う

「母さんは、子供を育てるのはとっても大変だったって。

父さんから、家事育児の感謝をされたことはなかったって。


でも、母さんも父さんにありがとうと言ったのは一度も見たことがない」

そして、二人は、寂しそうに、離婚をしないための努力を持つとして欲しかった…。

だから、自分たちは死ぬまで添い遂げるんだそうです。

反面教師ですね。
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