妻と愛人と家族

春秋花壇

文字の大きさ
上 下
218 / 1,007

徒然草 第百九十段

しおりを挟む
徒然草 第百九十段

妻めといふものこそ、男をのこの持つまじきものなれ。「いつも独り住ずみにて」など聞くこそ、心にくけれ、「誰たれがしが婿むこに成りぬ」とも、また、「如何なる女を取り据ゑて、相あひ住む」など聞きつれば、無下むげに心劣おとりせらるゝわざなり。殊ことなる事なき女をよしと思ひ定めてこそ添ひゐたらめと、苟いやしくも推し測られ、よき女ならば、らうたくしてぞ、あが仏と守りゐたらむ。たとへば、さばかりにこそと覚えぬべし。まして、家の内うちを行おこなひ治おさめたる女、いと口惜くちをし。子など出いで来て、かしづき愛したる、心憂うし。男おとこなくなりて後、尼になりて年寄よりたるありさま、亡き跡あとまであさまし。

いかなる女なりとも、明暮あけ添そひ見んには、いと心づきなく、憎にくかりなん。女のためも、半空なかぞらにこそならめ。よそながら時々通かよひ住まんこそ、年月経へても絶えぬ仲らひともならめ。あからさまに来て、泊とまり居ゐなどせんは、珍らしかりぬべし。


現代語訳

男にとって妻は不要な存在である。

「いつも独り暮らしをしている」という言葉を聞くだけでも心が落ち着かない。「誰々が婿になった」とか「どのような女を娶って一緒に住んでいる」などという話を聞けば、ひどく軽蔑してしまう。

たいしたことのない女に夢中になっている男は、みっともない。良い女だったとしても、まるで神様のように扱って大切にしているのだろうと想像してしまう。ましてや家事をする女などは、情けない。子供が生まれて可愛がっている姿など想像したくもない。男が亡くなって、女が尼になって老け込んだ姿は、男の死後までも恥ずかしい。

どんな女であっても、朝から晩まで一緒にいれば、いずれ気に入らなくなり、嫌になるだろう。女にとっても、中途半端な関係は辛いだろう。だから、男女は別居して、時々会いに来るのが良い。そうすれば、いつまでも心のときめきが持続するだろう。突然男が訪ねてきて泊まったりしたら、新鮮な気持ちになれるだろう。

解説

この段は、兼好法師の独身主義的な考えがよく表れている段の一つです。

兼好法師は、男にとって最も大切なのは自由であると考えていました。そして、妻を持つことでその自由が制限されると考えていたのです。

また、兼好法師は、女性に対して強い不信感を持っていました。女性はわがまま and 嫉妬深い生き物であり、男を苦しめる存在であると考えていたのです。

このような考え方は、現代から見ると極端 and 偏見に満ちたものと感じるかもしれません。しかし、当時の中世社会においては、このような考え方が決して珍しくはありませんでした。

兼好法師の妻に対する考え方は、当時の社会における男女関係 and 家族観を知る上で、貴重な資料となっています。

ポイント

この段は、男にとって妻は不要であるという考えを論じています。
兼好法師は、妻を持つことで男の自由が制限され、精神的な負担が大きくなると考えていました。
兼好法師は、女性に対して強い不信感を持っていました。
兼好法師の考え方は、現代から見ると極端 and 偏見に満ちたものと感じるかもしれません。
しかし、当時の中世社会においては、このような考え方が決して珍しくはありませんでした。
この段を読むべき人

兼好法師の思想に興味がある人
中世社会の男女関係 and 家族観を知りたい人
独身主義について考えてみたい人
この段の重要性

この段は、徒然草の中でも特に有名な段の一つです。

兼好法師の独身主義的な考え方は、当時の人々に大きな影響を与えました。

また、この段は、現代社会における男女関係 and 家族観を考える上でも、示唆に富んでいます。

その他

この段は、比較的短く、読みやすい文章です。
この段には、ユーモラスな表現もいくつか見られます。
この段は、様々な解釈が可能です。
以上、徒然草 第百九十段の現代語訳と解説でした。

この説明が役に立てば幸いです。他にご不明な点がございましたら、お気軽にお尋ねください。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

体育教師に目を付けられ、理不尽な体罰を受ける女の子

恩知らずなわんこ
現代文学
入学したばかりの女の子が体育の先生から理不尽な体罰をされてしまうお話です。

イケメン彼氏は年上消防士!鍛え上げられた体は、夜の体力まで別物!?

すずなり。
恋愛
私が働く食堂にやってくる消防士さんたち。 翔馬「俺、チャーハン。」 宏斗「俺もー。」 航平「俺、から揚げつけてー。」 優弥「俺はスープ付き。」 みんなガタイがよく、男前。 ひなた「はーいっ。ちょっと待ってくださいねーっ。」 慌ただしい昼時を過ぎると、私の仕事は終わる。 終わった後、私は行かなきゃいけないところがある。 ひなた「すみませーん、子供のお迎えにきましたー。」 保育園に迎えに行かなきゃいけない子、『太陽』。 私は子供と一緒に・・・暮らしてる。 ーーーーーーーーーーーーーーーー 翔馬「おいおい嘘だろ?」 宏斗「子供・・・いたんだ・・。」 航平「いくつん時の子だよ・・・・。」 優弥「マジか・・・。」 消防署で開かれたお祭りに連れて行った太陽。 太陽の存在を知った一人の消防士さんが・・・私に言った。 「俺は太陽がいてもいい。・・・太陽の『パパ』になる。」 「俺はひなたが好きだ。・・・絶対振り向かせるから覚悟しとけよ?」 ※お話に出てくる内容は、全て想像の世界です。現実世界とは何ら関係ありません。 ※感想やコメントは受け付けることができません。 メンタルが薄氷なもので・・・すみません。 言葉も足りませんが読んでいただけたら幸いです。 楽しんでいただけたら嬉しく思います。

注意欠陥多動性障害(ADHD)の日常

春秋花壇
現代文学
注意欠陥多動性障害(ADHD)の日常

保健室の秘密...

とんすけ
大衆娯楽
僕のクラスには、保健室に登校している「吉田さん」という女の子がいた。 吉田さんは目が大きくてとても可愛らしく、いつも艶々な髪をなびかせていた。 吉田さんはクラスにあまりなじめておらず、朝のHRが終わると帰りの時間まで保健室で過ごしていた。 僕は吉田さんと話したことはなかったけれど、大人っぽさと綺麗な容姿を持つ吉田さんに密かに惹かれていた。 そんな吉田さんには、ある噂があった。 「授業中に保健室に行けば、性処理をしてくれる子がいる」 それが吉田さんだと、男子の間で噂になっていた。

ぽっちゃりOLが幼馴染みにマッサージと称してエロいことをされる話

よしゆき
恋愛
純粋にマッサージをしてくれていると思っているぽっちゃりOLが、下心しかない幼馴染みにマッサージをしてもらう話。

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

獣人の里の仕置き小屋

真木
恋愛
ある狼獣人の里には、仕置き小屋というところがある。 獣人は愛情深く、その執着ゆえに伴侶が逃げ出すとき、獣人の夫が伴侶に仕置きをするところだ。 今夜もまた一人、里から出ようとして仕置き小屋に連れられてきた少女がいた。 仕置き小屋にあるものを見て、彼女は……。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...