妻と愛人と家族

愛人契約

「わたしは床の間の人形じゃないのよ。誰のものでもないの!!」

志乃と彼の愛人契約は、月々100万円。

それ以外の制約は最初何もなかった。

志乃21歳。舞妓から一本さん、芸妓になって間もない頃だった。

志乃は自由奔放な性格で、注意欠陥多動性障害(ADHD)

その発達特性からか、衝動的で多動性があり、不注意。

何度注意しても、プイと突然いなくなる。

彼は、どんどん志乃に夢中になり、お手当のほかにも着物を買い与えたり、家を買い与えたりしていた。しかし、志乃が車やバイクを買うとすぐに突き止めて解約してきてしまう。

志乃は、だんだん窮屈になり、家に帰ってこなくなった。

すると、彼は探し回って連れ戻すのだつた。

冷たい鉄の扉が閉ざされた密室の中。窓から差し込む光は薄く、部屋全体を薄暗く照らすだけだ。部屋の隅には、古びたベッドと小さな机、そして薄暗い灯りがあり、その光景はどこか陰鬱な雰囲気を漂わせている。

志乃はベッドの上に座り、眠ることなどできないほど心配と不安が彼女を襲っていた。部屋の中には彼女以外の生き物の気配すらなく、孤独感が彼女を苛んでいる。

部屋の中には鉄の匂いが漂い、窓の外からは街のざわめきや車の音がかすかに聞こえるが、志乃にはそれさえも遠く感じられる。

彼女は部屋の隅に座り、自分を取り巻く不安と恐怖に打ち勝とうとするが、心の奥底では希望の光を見いだせないでいる。


愛人契約

志乃は絹豆腐のような滑らかな白い肌で血管が見えるくらい透き通っていた。誰もが見とれてしまうほど美しいが、彼女のスポンサー、大輔は独占欲が強い男だった。彼はお金持ちで、志乃に月100万円の手当を支払っていた。しかし、彼女の他の男性との関係を疑い始め、やきもちやきになってしまった。

ある日、大輔は家に帰ると、志乃が誰かと電話をしているのを見かけた。彼の心は不安にかられ、嫉妬に燃えた。彼は激しい怒りと疑念に囚われ、志乃を監禁することを決意した。

志乃は恐怖に震えながら、大輔の暴力に抵抗することができなかった。彼女は部屋に閉じ込められ、外部との連絡を断たれた。

大輔は彼女を支配し、彼女が自分以外の男性と交流することを阻止するために厳しい監禁を加えた。彼は愛情が暴力に変わり、志乃は彼の支配下に置かれた。

しかし、志乃は絶望せず、脱出を試みた。彼女は機会をうかがい、大輔が外出している隙に家を脱出した。彼女は警察に助けを求め、大輔の監禁から解放された。

志乃はその後、自立し、自分の人生を歩む決意を固めた。彼女は恐怖と暴力に打ち勝ち、新たな未来に向かって前進する決意を示した。


志乃は三歳の時に、同じように近所の高校生のお兄ちゃんから監禁されており、大輔が志乃を愛すれば愛するほど、その記憶がフラッシュバックして苦しんでいた。

「やめてー、わたしはあなたのお人形じゃないのよー」

志乃の心は複雑な感情に満ちていた。彼女は自分が監禁されていることに対する怒りと恐れを感じていたが、同時に彼女の心を苦しめるのは、彼女の愛する人がこんな行動を取ることができるという事実だった。

彼女は彼に対する愛情を否定することができず、そのために自分をより苦しめる。彼のやきもちやきの様子は、彼が彼女を愛していることの証拠であるようにも感じられたが、同時にそのやきもちが彼女を監禁し、自由を奪ってしまっているのだ。

彼女は自分の心の中で葛藤し、怒りと悲しみが入り混じった感情に苦しんでいた。彼女は自分が愛人契約の犠牲者となったことに対する自責の念も感じつつ、彼に対する愛情が彼女を彼のもとに引き留めているのだと自覚していた。

舞妓になった時には、借金などなかった。3年もしないうちに、着物代やお稽古のお金、発表会のお金で何千万にも膨れ上がっていたのだ。親に返してもらうわけにはいかなかった。相談もできなかった。日曜日も休まずに仕事したのに……。

行き羽のない怒りで満たされて行く。

「理不尽だ」

ボソッとつぶやく彼女を優しく抱きしめてあげる人がいたら、彼女が壊れてしまうことはなかったのかもしれない。

それでも彼女の心には一筋の希望が残っていた。彼が自分を愛しているならば、彼女が彼の心を取り戻し、自由を取り戻すことができるかもしれないという希望だ。

染井吉野の薄い花びらがはらりはらはら落ちていく。

まるで二人の間に何もなかったかのように……。