妻と愛人と家族

母の言葉、そして決意

母の言葉、そして決意

「夫が浮気をすることは、地の底に引きずり込まれるほど悲しい」

幼い頃の記憶、母が悲しそうにぽつんと呟いた言葉は、今でも鮮明に私の心に刻み込まれている。

まだ幼かった私は、その言葉の意味を完全に理解することはできなかった。しかし、母の悲しみに満ちた表情は、幼いながらも私の心に深い印象を与えた。

「だからわたしは、男を愛さないことに決めたんだ。」

母は続けてそう言った。その言葉は、幼い私の心に衝撃を与えた。

男を愛さないなんて、そんなことが可能なのだろうか？

私は戸惑いながらも、母の言葉の意味を必死に考えようとした。

母は、男に裏切られることの苦しみを深く知っていたのだろう。

そして、二度とそんな苦しみを味わいたくないという思いから、男を愛さないという決断を下したのだ。

私は母の決意を理解し、尊敬した。

同時に、自分もいつか母と同じように、男に裏切られることなく幸せな人生を送りたいと思うようになった。

しかし、男を愛さないという決断は、容易なものではなかった。

成長するにつれて、私は様々な男性と出会った。

中には、優しくて魅力的な男性もいた。

しかし、母が教えてくれた悲しい言葉を思い出し、私はいつも一歩踏み出す勇気が出なかった。

男を愛すれば、いつか必ず裏切られる。

そう思い込んでいた私は、恋愛から遠ざかり、孤独な時間を過ごした。

しかし、そんな日々にも変化が訪れた。

とある日、私は偶然、一人の男性と出会った。

彼は、優しく穏やかで、人を思いやる気持ちが溢れるような人だった。

私は彼と話すうちに、徐々に心惹かれていくのを感じた。

しかし、同時に、母が教えてくれた悲しい言葉を思い出し、恐怖を感じた。

私は彼を愛してはいけない。

そう自分に言い聞かせようとした。

しかし、もう私の心は彼でいっぱいだった。

私は、ついに決断を下した。

母が教えてくれた悲しい言葉を信じるか、自分の心に従うか。

私は、自分の心に従うことを選んだ。

私は彼に告白し、付き合うことになった。

彼との恋愛は、本当に幸せなものだった。

彼は、私のすべてを受け入れてくれ、いつも私を大切にしてくれた。

私は、初めて本当の愛を知った。

そして、母が教えてくれた悲しい言葉は、もう私の心には響かなかった。

男を愛すれば、必ず裏切られるわけではない。

そう、私は確信していた。

私は、母に感謝している。

母が教えてくれた悲しい言葉は、私を強くしてくれた。

そして、本当の愛を見つけるきっかけを与えてくれた。

私は、これからも彼を愛し続け、幸せな人生を送っていく。

そして、いつか母にも、私の幸せを伝えてあげたい。


♡


うふふ。こんな風だったらいいのにね。

だけど現実はもっと厳しかった。

わたしは、彼が大好きだった。

「男はどうせ裏切るもの」

という刷り込みを覆したくて躍起だった。

でも、2月になると毎年、思い出して涙した。

かれが、元カノの電話に反応し、九州まで迎えに行ってしまったから。

あれからいろいろあって、彼はわたしの元に戻ってきた。

でも、家を買ってみんなで幸せに暮らしているとき、

彼が結婚前に連帯保証人になっていて、家も家具も抵当に取られた。

母が死んだばかりだったので、この苦しみにどう対処していいかわからなかった。

だって、家の頭金はわたしがすべて出したものだったから。

そして、ローンは共同名義だった。

わたしは酒に溺れるようになり、現実から逃避した。

そして、離婚。

養護施設に子供たちを預け、女性のリハビリ施設に入寮した。

わたしは、母の呪縛から解き放たれることもなく、

復縁プログラムで、同じ彼とまた結婚した。

だけど、やっぱり駄目だった。

元カノが妊娠して、彼は去っていった。

わたしはやっぱり、母と同じように

「夫が浮気をすることは、地の底に引きずり込まれるほど悲しい」

「だからわたしは、男を愛さないことに決めたんだ」

と、嘯いてしまいそうになる。