お金持ちごっこ

欲望の先に

「欲望の先に」

葵（あおい）は、自分の中に渦巻く「欲望」という感情に、常に違和感を抱いていた。子供のころから、「欲しがりすぎるのは良くない」「我慢しなさい」と教えられ、いつの間にか自分の欲求を押し殺すことが当たり前になっていた。しかし、大人になり、仕事をする中で、次第に自分の本当の願いや夢が何なのか分からなくなっていた。

そんなある日、同僚の美咲（みさき）とランチをしていた時、葵の悩みがふと口をついて出た。

「ねぇ、美咲。私、最近、自分が本当に何をしたいのか分からなくなってきたの。もっと頑張らなきゃって思うんだけど、いつも罪悪感がつきまとうのよね。私って、ただ欲張りなのかも。」

美咲は驚いた顔で、しばらく沈黙した後、口を開いた。「葵、それって全然悪いことじゃないと思うよ。欲望を持つこと自体、何も悪くない。むしろ、それが原動力になることもあるんだから。」

「でも、欲望ってなんだか自己中心的な感じがして……。」

「違うよ、葵。欲望って、自分が何を望んでいるのかをはっきりさせるためのサインなんだと思う。むしろ、それを正しい方向に向けて行動できる人こそ、本当に強い人だよ。罪悪感を持つ必要なんて全くないんだ。」

美咲の言葉に、葵は少し驚いた。欲望をポジティブに捉えるという発想が、自分にはなかったからだ。美咲は笑顔を浮かべながら、さらに続けた。

「私なんて、いつも自分が欲しいものをはっきり意識してるよ。そうすることで、目標が明確になって、そこに向かって努力できるんだから。葵も、自分が本当に欲しいものが何なのか、ちゃんと向き合ってみたら？」

葵はその晩、自宅に帰って美咲の言葉を思い返していた。自分が本当に欲しいもの、達成したい目標は何なのか。そう問いかけるうちに、心の中に小さな光がともった。それは、昔から心の奥底に隠していた「夢」だった。

葵は幼いころ、絵を描くことが大好きだった。美しい風景や人々の表情をキャンバスに描き出すことで、いつも心が満たされていた。しかし、大人になるにつれて「そんな夢は現実的じゃない」「もっと安定した仕事を選びなさい」と言われ、絵を描くことを自然と諦めてしまっていた。

「私、絵を描きたいんだ。」

その瞬間、葵は自分の心が何を求めていたのか、はっきりと理解した。そして、その欲望をポジティブに捉えることができた。欲望は悪いものではなく、自分の本心を指し示している。絵を描くという欲望を追求することで、自分自身を取り戻せるかもしれない、と。

それから数日後、葵は仕事の合間を縫って、久しぶりに絵筆を手に取った。最初は手が震えたが、次第に昔の感覚が蘇り、心地よいリズムで筆が進んだ。彼女は自分の心が描きたいと願っていた風景を思いのままに表現した。それは、まるで心に溜まっていた感情が解放されるかのような感覚だった。

「これだ、私が本当にやりたかったこと。」

葵は気づけば、毎日のように絵を描く時間を大切にしていた。絵を描くことで、日々のストレスも軽減され、仕事にも以前より前向きに取り組めるようになった。そして、絵を描く欲望を追求することで、葵は次第に周囲からも評価されるようになった。

ある日、地元のギャラリーから「個展を開きませんか？」というオファーが届いた。葵にとって、それはまさに夢のような出来事だった。自分の作品が世に出るなんて、以前の自分では考えもしなかったことだ。しかし、今の彼女は違った。欲望をポジティブに捉えることで、夢に向かって一歩ずつ進んできたのだ。

個展の準備を進める中で、葵はふと美咲に感謝の気持ちを伝えたくなった。彼女の一言が、すべての始まりだったからだ。

「美咲、ありがとう。あなたのおかげで、自分の欲望を受け入れることができた。絵を描くことが、私の本当の夢だったんだ。」

美咲はにっこり笑って言った。「葵、自分の欲望を大切にして、それを追いかけることができたのは、あなただよ。欲望って、自分の内面を映す鏡だから。それを正しい方向に使えば、どんな願いも叶うんだって、私は信じてるよ。」

葵は美咲の言葉に深くうなずいた。欲望は、決して悪いものではない。それをどう受け取り、どう使うかが重要なのだ。自分の欲しいものや目標をポジティブに捉え、罪悪感を持たずに追い求めることで、夢は現実になる。

個展の初日、葵は自分の作品を前に立ち、改めてそのことを実感していた。会場には多くの人が訪れ、彼女の絵を称賛していた。夢が叶った瞬間だった。

この物語では、葵が欲望をポジティブに捉えることで、夢を叶えていく姿を描いています。欲望を悪いものと捉えるのではなく、それを正しい方向で使い、前向きに追求することで、人生が大きく変わるというメッセージを伝えています。