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政治経済への目覚め
しおりを挟む この地には巨大な国家がいくつかあり、そしてその周囲に小国が散らばっている。
人々の往来は東西中央海の道を通じていくつもルートがあり、それはまた、交易に従事する民族によって都度開発されていた。
この国、アルメルセデスは小国ながら、西は山脈、南と東は海に隔たれ、そして北は雪深い氷河に覆われた地域とあって、あまり他国との戦禍には巻き込まれることなく長い歴史を誇ってきた。
海を隔てたはるか東には龍が住まうという華国。南には砂漠の国カナン。そして山脈を隔てた西には帝国。
アルメルセデスは地域的に、この西の地域の覇者である帝国の影響下にあると言える。
過去、アルメルセデスの王室が絶えた時、帝国からその皇室の血筋の者を王に迎えたこともあった。
それでも属国とはならず独立を保ったのも、この地の特殊性故だろう。
ここ、アルメルセデスは神に護られた剣と魔法の国。
この国が自らそう名乗るようになったのは、これより一世紀は前の事だった——。
♢ ♢ ♢
この世界には神の氣が満ち、それは生命の活力ともなると共に、濃すぎるその氣は命あるものにとって毒にもなる。
エーテルと呼ばれるそんな神の氣は、真那と呼ばれる清浄な氣と、そしてその状態が変った魔と呼ばれるものに分けられる。
水と氷のように、ただその状態が変わっただけで同じ神の氣であるに違いはないのだけれど、生憎と生命にとってその性質は正反対に作用してしまう。
水が命を育むように、真那は生命の活力となり。
氷が死を呼ぶように、魔は生命を蝕んだ。
元々、この世界を構成するブレーンの表面に存在するには神の氣は真那の状態である場合が多く。
ブレーンの内側には魔が多かった。
そのため、生命はそのブレーンの表面に多く生まれ、繁殖していったのだった。
真那の泡、プランクブレーンはいつしか命の源大霊を産み。
そしてその大霊から魂が産まれ、生命に宿り『意志』が目覚め。
『意志』すなわちその神のかけらは『人』と呼ばれるものとなる。
神は自らの分身でもあるその人の誕生を祝福し、彼らに加護を与えた。
しかしそれは、神による人の魂に対する、人がその全ての権能を解放し神と同等となることが無いようにする為の枷でもあった。
そうしてその能力に対して枷が嵌められた『人』は、命の終わりにまた大霊に還る。
多くの命はそうしてその円環の輪の中で、永く時を紡いできたのだった。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
「本日をもって貴様は解任だ、聖女フランソワ!」
亜麻色の髪の聖女フランソワは、そろそろお昼の食事の時間だなぁとのんびりしている所で、自室を訪れた王室聖女庁長官を務める王太子、シャルル・ド・アルメルセデスにいきなりそう告げられた。
一瞬あっけにとられる彼女。
それでもすぐに気をとりなおす。
「はう。何かございましたでしょうか?」
そう首を傾げる彼女。
それでなくとも冷たい目をしていたシャルル王太子、いっそう冷えた視線を聖女に向けた。
「お前のそういう所が私はずっと気に入らなかったのだ。聖魔法も碌に使えない半人前のくせに。お前のような者を聖女として迎えた事自体が誤りだったのだ!」
そう怒鳴り。
「まあいい。真の聖女が見つかった今となってはお前はもう用済みだ。荷物を纏めてとっとと実家に帰るといい!」
と続けた後、背をむけ部屋を出ていった。
♢ ♢ ♢
人々の往来は東西中央海の道を通じていくつもルートがあり、それはまた、交易に従事する民族によって都度開発されていた。
この国、アルメルセデスは小国ながら、西は山脈、南と東は海に隔たれ、そして北は雪深い氷河に覆われた地域とあって、あまり他国との戦禍には巻き込まれることなく長い歴史を誇ってきた。
海を隔てたはるか東には龍が住まうという華国。南には砂漠の国カナン。そして山脈を隔てた西には帝国。
アルメルセデスは地域的に、この西の地域の覇者である帝国の影響下にあると言える。
過去、アルメルセデスの王室が絶えた時、帝国からその皇室の血筋の者を王に迎えたこともあった。
それでも属国とはならず独立を保ったのも、この地の特殊性故だろう。
ここ、アルメルセデスは神に護られた剣と魔法の国。
この国が自らそう名乗るようになったのは、これより一世紀は前の事だった——。
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この世界には神の氣が満ち、それは生命の活力ともなると共に、濃すぎるその氣は命あるものにとって毒にもなる。
エーテルと呼ばれるそんな神の氣は、真那と呼ばれる清浄な氣と、そしてその状態が変った魔と呼ばれるものに分けられる。
水と氷のように、ただその状態が変わっただけで同じ神の氣であるに違いはないのだけれど、生憎と生命にとってその性質は正反対に作用してしまう。
水が命を育むように、真那は生命の活力となり。
氷が死を呼ぶように、魔は生命を蝕んだ。
元々、この世界を構成するブレーンの表面に存在するには神の氣は真那の状態である場合が多く。
ブレーンの内側には魔が多かった。
そのため、生命はそのブレーンの表面に多く生まれ、繁殖していったのだった。
真那の泡、プランクブレーンはいつしか命の源大霊を産み。
そしてその大霊から魂が産まれ、生命に宿り『意志』が目覚め。
『意志』すなわちその神のかけらは『人』と呼ばれるものとなる。
神は自らの分身でもあるその人の誕生を祝福し、彼らに加護を与えた。
しかしそれは、神による人の魂に対する、人がその全ての権能を解放し神と同等となることが無いようにする為の枷でもあった。
そうしてその能力に対して枷が嵌められた『人』は、命の終わりにまた大霊に還る。
多くの命はそうしてその円環の輪の中で、永く時を紡いできたのだった。
■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■■
「本日をもって貴様は解任だ、聖女フランソワ!」
亜麻色の髪の聖女フランソワは、そろそろお昼の食事の時間だなぁとのんびりしている所で、自室を訪れた王室聖女庁長官を務める王太子、シャルル・ド・アルメルセデスにいきなりそう告げられた。
一瞬あっけにとられる彼女。
それでもすぐに気をとりなおす。
「はう。何かございましたでしょうか?」
そう首を傾げる彼女。
それでなくとも冷たい目をしていたシャルル王太子、いっそう冷えた視線を聖女に向けた。
「お前のそういう所が私はずっと気に入らなかったのだ。聖魔法も碌に使えない半人前のくせに。お前のような者を聖女として迎えた事自体が誤りだったのだ!」
そう怒鳴り。
「まあいい。真の聖女が見つかった今となってはお前はもう用済みだ。荷物を纏めてとっとと実家に帰るといい!」
と続けた後、背をむけ部屋を出ていった。
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聖書
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日本史
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日本史を学ぶメリット
日本史を学ぶことは、私たちに様々なメリットをもたらします。以下、そのメリットをいくつか紹介します。
1. 現代社会への理解を深める
日本史は、現在の日本の政治、経済、文化、社会の基盤となった出来事や人物を学ぶ学問です。日本史を学ぶことで、現代社会がどのように形成されてきたのかを理解することができます。
2. 思考力・判断力を養う
日本史は、過去の出来事について様々な資料に基づいて考察する学問です。日本史を学ぶことで、資料を読み解く力、多様な視点から物事を考える力、論理的に思考する力、自分の考えをまとめる力などを養うことができます。
3. 人間性を深める
日本史は、過去の偉人たちの功績や失敗、人々の暮らし、文化などを学ぶ学問です。日本史を学ぶことで、人間としての生き方や価値観について考え、人間性を深めることができます。
4. 国際社会への理解を深める
日本史は、日本と他の国との関係についても学ぶ学問です。日本史を学ぶことで、国際社会における日本の役割や責任について理解することができます。
5. 教養を身につける
日本史は、日本の伝統文化や歴史的な建造物などに関する知識も学ぶ学問です。日本史を学ぶことで、教養を身につけることができます。
日本史を学ぶことは、単に過去を知るだけでなく、未来を生き抜くための力となります。
日本史の学び方
日本史を学ぶ方法は、教科書を読んだり、歴史小説を読んだり、歴史映画を見たり、博物館や史跡を訪れたりなど、様々です。自分に合った方法で、楽しみながら日本史を学んでいきましょう。
まとめ
日本史を学ぶことは、私たちに様々なメリットをもたらします。日本史を学んで、自分の視野を広げ、未来を生き抜くための力をつけましょう。
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