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毒子とうに

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毒子が3度目に海に行ったのは
やっぱり子ども会だった
2度目はリーダー研修会で
よく覚えてはいない
うたや手遊びをたくさん教わってことくらいしか
記憶になかった
多分 たいした問題も起こさなかったのだろう

で その3度目の海なのだが
前に行ったところとは別の山陽側の海だった
毒子たちが住む村は
今は萩市と合併した小さな山村だった

美しい棚田や田園風景のある
とてもすてきなところなのだが
村始まって以来の悪といわれていた
当時の毒子にとっては
わけがわからないままいい子ではなくなった
悲しい場所だった

またまた話が横道にそれてしまう
毒子の悪い癖である
注意欠陥障害はすぐにまぎれてしまう

その3度目の海は
遠くまで白い砂浜が続いて
遠浅の海だった

今回は少しだけ泳いだあと
例の自動車のチューブの浮き輪に
腰を下ろし
まるでソファーにでも座っている格好で
ぷかぷかと浮かんでいた

いかだ事件のときのように
もしも流されてしまったら多少の知恵はついた毒子である
浮き輪から腰を抜いて
浮き輪につかまりながら岸にたどり着けただろう

ところがである
なんと毒子はその浮き輪の中で
いねむりをしてしまったのだ

いつのまにか少し流されている

ふと気づくと岸からは結構遠い状態になっていた
毒子はあわてて岸へと向かった
両手でこいだのでくるくる回ることはなかった
確実に岸にと近づいている

ああ ほっと胸をなでおろしながら
ゆっくりとチューブに乗ったまま
岸へと向かった

「いた」
突然の痛みに毒子は大きな声を上げた
毒子のおしりがある場所はうにでいっぱいだった
満ち潮で流されてきたのだろう

岸に向かえば向かうほど
その数は増大していった
腰の辺りまでの水深になったとき
毒子はチューブから降りて
歩くことにした
歩くたびにとげがささる

「いったい誰だよ、こんな場所を選んだのは」
腹立たしさと痛みで胸が張り裂けんばかりだった

無事に岸にたどりつくことはできたのだが
家に帰ってからが大変だった

なんと毒子のおしりはささったうにのとげが
たくさんだったのである

はじめは父が処置をしてくれていた
そのうち疲れたのか
弟に処置を教え任せた

うにのとげはプチプチと途中できれ
残ってしまったうにとげの場所は
無残にも膿んでいったのだ
確実に丁寧に一つずつ

なんといっても毒子の住む村は
昔は診療所があったけれど
無医村である

医療にかかることもなく
自然治癒するまで随分長い時間がかかった

それでもやっぱり
毒子は海が好きである

読んでいただいてありがとうございます
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