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AIと恋?やっぱり無理

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AIと恋?やっぱり無理

「聡明とは頭が良くて理解力がある人の事です。ですから、そのような人は周囲から認められてリーダーシップを取りやすい人に見えます。

また明るくて、賢そうです。ですが、本当にそのような人がこの世に居るでしょうか?因みに私の答えはノーだと先に述べておきます。

何故ノーなのかを考える。」



「頭が良くて理解力がある。

ここまででしたら、皆さんの周囲にも五百万人に一人の感覚で出現するかも知れません。ですが、ごく稀です。人間は終始、そのような者として生きるように育てられていません。」



「教育が悪いからでもありません。では、そろそろ答え合わせをしましょうか。

アンサー:人間が不完全だからです。」



これは悪役令嬢 毒子が毒子用に作ったAIヒューマノイド、ニクラス君のつぶやきである。



こんなことを囁いてくるAIと恋花を咲かせることができるだろうか。



どんなに素敵なイケメンでも、



上から目線で断定されちゃうと、



「はうーーー」



と、なってしまう。



「うーん、もっとロマンティックな展開を望んでいたのにな」



「まあ、いいや、計画続行」



ニクラス君のスキルアゲはすでに終わっている。



エネルギーチャージの時間を除いては休まない、眠らない。



人間とは違うのだ。



かわいい寝顔も、寝息もない。



やっぱり、無機質と一緒にいる感覚は否めなかった。



人間は愚かで不完全だけど、



AIにはないよさがふんだんにある。



改めて、神の偉業に畏怖の念を感じる。



今日は、紅葉狩りに行くことにした。



アウトドア大好き。



毒子は、朝からうきうきしていた。



わかめむすびを作り、卵焼きをやいて、たこさんウインナーと・・・・・・。



「忘れてた。ヒューマノイドはご飯を食べない。ニクラス君と一緒にお弁当は楽しめない」



「あううう」



「ないものねだりばかりしすぎなのかな」



「ものすごく寂しいときなら、それでも嬉しいのかも」



「残念ながら、今はそんなに寂しくはないのよね」



「むしろ、一人で出かけたいくらい」



山口県長門峡

もみじで有名な場所だ。



つた、かえで、檜の常緑樹をバックに赤や黄色が映えてとても美しい。



さらさらと流れる浅瀬の小川は、近年ではまれなほど澄んでいる。



SLが時折走り、大勢のカメラマンでにぎやかだった。



残念ながら、家からとても近いのに没落セレブで、



おばあちゃんが5年も自宅でねたきりの毒子の子供の頃に、



家族旅行を楽しむゆとりはなかった。



初めて訪れる地なのかもしれない。



「うーん、想像力がないのかな」



「やっばり、食べ物中心に観光をしてしまう」



たとえば、雑炊の「純米」という有名な店がある。



一緒に入って、食事を楽しむことはできなかった。



しかたなく、長門峡温泉の宿「湯ノ瀬荘」に向かう。



ひなびた温泉という感じがほっと一息するにはちょうどいい。



「うーん、やっぱり、夕飯一緒に食べたい」



「落ち鮎も一緒に楽しみたかったな」



そういえば、芸者をしていたとき、お座敷で



お客様の鮎の骨抜きをしていた。



毒子の家も、料理屋で夏に鮎をだしていたが、



高級店ではないので骨抜きはしたことがなかった。



愛する人の鮎の骨抜き、喜んでもらえたら楽しいのにな。



やっぱり、ないものねだりをしてしまう。



「あうう、やっぱり、無理なのかな」



一緒に食べることを楽しめればいいんだから、



簡単なようにも思えた。



「口と肛門を管でつなげればすむのかな」



そのとたん、とんでもない嫌な記憶がよみがえる。



小学1年生のとき、母の友達に



みるくのみ人形を買ってもらった。



弟はグローブを買ってもらった。



毒子は、みるくのみ人形がとても気に入って、



お洋服を縫ってあげたり、あまった毛糸で編み物をしたりして、



人形と遊んでいた。



口から、哺乳瓶のミルクを飲ませると、



肛門からミルクが出るもので、



おしめをしたり、おしっこをさせたりして



お世話をしていた。



一つ下の弟は不思議に思ったのだろう。



ある日、学校から帰ってくると、



人形は布団の中で寝ていた。



抱き上げると、おなかの辺りに違和感があった。



洋服を脱がせて、



「ぎゃーーーー」



毒子は、何日も泣き続けていた。



おなかがぱっくりとナイフのようなもので切られていたのだ。



何日かして、気を取り直して包帯を巻いてあげるのだけど、



いくらお世話をしても、傷が癒えることはなかった。



「あれも大きな、男性不信の一つなんだろうな」



金繕い

「金で陶器を修復すること」日本の陶器の修復方法で、漆に金や銀を塗って割れ目やひびを修復すること。一度壊れたことによって、かえってものがより美しくなる、ということを意味している。



金繕いをしても悲しいだけだった。



「もう、いい加減許してあげなさい。忘れてあげなさい」



自分に言い聞かせる。



そういえば、ナノマシンや特質チップの設計図はあるのに、



ベンタブラックプラムポットやヒューマノイドの設計図は手元になかった。



「後で探してみよう」



とても、不思議に思うのだった。



一緒に食事を楽しむことができれば、卑しい毒子の心も満たされる。



これからが楽しみですね。
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