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八百屋お七はお好きですか

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八百屋お七はお好きですか



「八百屋おひちをどうしても踊りたい」



花柳流の国立小劇場での発表会でどうしても、悪役令嬢 毒子は、



おひちを踊りたかった。



芸者自体に衣装代、おけいこ代、人形師さん、黒子さんに払うお金が足りなくて、断念した。



八百屋お七(やおやおしち、寛文8年(1668年)? -天和3年3月28日(1683年4月24日)、生年・命日に関して諸説ある)は、江戸時代前期、江戸本郷の八百屋の娘で、恋人に会いたい一心で放火事件を起こし火刑に処されたとされる少女である。井原西鶴の『好色五人女』に取り上げられたことで広く知られるようになり、文学や歌舞伎、文楽など芸能において多様な趣向の凝らされた諸作品の主人公になっている。



「恋する人に一目だけでも会いたい」



その一心で自宅に火をつけてしまった哀しい少女の話。



「女冥利に尽きるではないかのー、死神」



「毒子が舞ったら、さぞ、あでやかで妖艶なんでしょうねー」



「おほほ、そなたも見に来るがよい」



またまた、どこの時代のお人という会話。



猛稽古が始まる。



はじめは、人形ぶりなので、人形師さんに操られているように舞う。



決してしなやかとはいえない立ち居振る舞い、まるでディスコのロボットの踊りのように。



かくかくに踊る。



水色の衣装に雪が降り始め、髪をばらして、片袖脱いで、



ああ、憧れのやぐらの上での半鐘。



お七の生涯については伝記・作品によって諸説あるが、比較的信憑性が高いとされる『天和笑委集』によるとお七の家は天和2年12月28日(1683年1月25日)の大火(天和の大火)で焼け出され、お七は親とともに正仙院に避難した。寺での避難生活のなかでお七は寺小姓生田庄之介[注 1]と恋仲になる。やがて店が建て直され、お七一家は寺を引き払ったが、お七の庄之介への想いは募るばかり。そこでもう一度自宅が燃えれば、また庄之介がいる寺で暮らすことができると考え、庄之介に会いたい一心で自宅に放火した。火はすぐに消し止められ小火ぼやにとどまったが、お七は放火の罪で捕縛されて鈴ヶ森刑場で火あぶりにされた。



「会いたいーー。あいたいのジャー」



雪が降る。雪の結晶が下りてくる。スターダストがきらきらと舞い、光がカーテンのように揺れ動く。



おひちの悪役令嬢 毒子もこの世のものとは思えないほど、あでやかで美しい。



揺らめく光は、やがて七色のカーテンに変わり、オーロラとなって空を駆け巡る。



日本舞踊の師匠たちは、口々に絶賛した。



踊りもさることながら、これほどの舞台演出を見たことがなかったからだ。



「お金があればかなう願いもあるのじゃのー」



悪役令嬢 毒子は念願成就したのになぜか寂しそうだった。



ダンジョン経営をほったらかして、このような余興にうつつを抜かしている自分が情けなかった。



「さーて、ロボット100体作りますか」



地球滅亡の危機へと今一歩、足を踏み出そうとしていた。



思い残すことがないように、やりたいことはできるだけ、



完成までにやりつくしてしまいたい悪役令嬢 毒子であった。



その責任の重さに耐えられるのだろうか。



大切にしていたペットの亡骸をゴミ箱にぽいと捨てるのとは、



いくらサイコパスでも訳が違うのだか・・・。
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