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プライマリーケアはおすきですか
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「北海道の夕張市がね、財政破綻したんだけど」
「はい」
「老人たちは、前よりも元気になったんだって」
「え?どうしてですか」
「プライマリーケアだからなんだって」
プライマリーケア
身近にあって、何でも相談にのってくれる総合的な医療。
風邪を引いたとき
高血圧と糖尿病でずっとクスリを飲まなくてはならなくなったとき
子どもが夜中に突然熱を出したとき
ぎっくり腰になったとき
“じんましん”が出たとき
タバコをやめたいと思ったとき
インフルエンザの予防接種を受けようと思ったとき
最近、どうも調子が悪く、「更年期障害」ではないかと思うとき
身体がしんどくて何もやる気がでず、夜に目が覚めて眠れない日々が続くとき
包丁で手をザックリと切ってしまったとき
背中の痛みが続いていて、大きな病院を受診した方がよいのかどうか悩むとき
認知症のおじいちゃんの介護に手がかかるようになり、主治医意見書を書いてほしいとき
がんの末期だが、住み慣れた自宅で余生を過ごしたいと思ったとき
通常なら、これらの病気の相談に、
内科、小児科、整形外科、皮膚科、外科、精神科に受診するが、
プライマリ・ケアを提供する医療機関ひとつでまかなう。
「要するに、ここみたいなところですか」
「そうね、ホームドクターって感じなのかしら」
「それで、ここの老人たちは安心していられるんですね」
今日は中庭に集まって、ドーナツを作っている。
銘々思い思いの形にして、丸くする人も、饅頭のような形にする人も、
まるで小学生の粘土細工みたい。
「昼間は、そばをこねて、おやつはドーナツ」
「子猫ね作業」
「またまたー」
笑いが絶えない、悪役令嬢 毒子の不親切極まりないダンジョン。
ここでは、自分で選んで自分で責任を取るが基本だ。
油は危ないので、揚げるのは職員がやっている。
揚げたドーナツに果糖をまぶして出来上がり。
飲み物は、ダージリン、オレンジペコ、アールグレイ、フレーバーティー、
アップルティー、レモンハーブ、ミントティー、コーヒー、緑茶が用意されている。
それぞれ好きなものを煎れて飲んでいる。
極月12月なので、ちょっと寒いのだが、
人が1000人以上いるので、さほど寒さを感じなくてすむ。
アメリカン花見月はそのほとんどの葉を落として、冬の準備を始めている。
ランタナは、まだ元気だが、花は小さくなった感じがする。
ざくろの葉も、かなり黄色くなっている。
パンジー、ビオラ、水仙、プリムラ・ポリアンサ、
プリムラ・ジュリアン、オステオスペルマム、ストック、
エリカ、ノースポール、葉牡丹、チェッカーベリー、
いろとりどりの花々でとてもあでやかでかわいらしい花壇。
老人たちが手入れしたものだ。
風は少し冷たいが、きらきら輝く太陽が
明るく優しく包んでくれる。
「毒子さん、わしゃあ、ここに来て、
生まれてきてよかったとはじめて思った」
「ああ、俺も」
「うんうん、わたしも」
みんなそれぞれ喜んでくれている。
最近、エアー恋愛をしている老人も増えて、
身なりに気を使っているようで、
ここに連れてこられたときよりも若くなっている。
「そういっていただけると嬉しいです」
毒子もご満悦。
「もう少し寒くなったら、シャボン玉を作って遊びましょうか」
「なんじゃ、そりゃ」
「うふふ、見てのお楽しみ。この世のものとは思えないほど、
美しいものが見れるかもしれないですよ」
「おお、そりゃあ、楽しみじゃ」
みんなで作ったドーナツは、少しいびつだか、
とてもおいしかった。まぶした果糖が、
口の中でシュワーととろける。
あ、そうそう、最近、多肉植物が静かなブームで、
自分の部屋においている人たちが沢山増えた。
いくつになっても、何かを愛したい気持ちは大切だよね。
延命治療をしないプライマリーケア、続行中。
ありがとうございます。
「はい」
「老人たちは、前よりも元気になったんだって」
「え?どうしてですか」
「プライマリーケアだからなんだって」
プライマリーケア
身近にあって、何でも相談にのってくれる総合的な医療。
風邪を引いたとき
高血圧と糖尿病でずっとクスリを飲まなくてはならなくなったとき
子どもが夜中に突然熱を出したとき
ぎっくり腰になったとき
“じんましん”が出たとき
タバコをやめたいと思ったとき
インフルエンザの予防接種を受けようと思ったとき
最近、どうも調子が悪く、「更年期障害」ではないかと思うとき
身体がしんどくて何もやる気がでず、夜に目が覚めて眠れない日々が続くとき
包丁で手をザックリと切ってしまったとき
背中の痛みが続いていて、大きな病院を受診した方がよいのかどうか悩むとき
認知症のおじいちゃんの介護に手がかかるようになり、主治医意見書を書いてほしいとき
がんの末期だが、住み慣れた自宅で余生を過ごしたいと思ったとき
通常なら、これらの病気の相談に、
内科、小児科、整形外科、皮膚科、外科、精神科に受診するが、
プライマリ・ケアを提供する医療機関ひとつでまかなう。
「要するに、ここみたいなところですか」
「そうね、ホームドクターって感じなのかしら」
「それで、ここの老人たちは安心していられるんですね」
今日は中庭に集まって、ドーナツを作っている。
銘々思い思いの形にして、丸くする人も、饅頭のような形にする人も、
まるで小学生の粘土細工みたい。
「昼間は、そばをこねて、おやつはドーナツ」
「子猫ね作業」
「またまたー」
笑いが絶えない、悪役令嬢 毒子の不親切極まりないダンジョン。
ここでは、自分で選んで自分で責任を取るが基本だ。
油は危ないので、揚げるのは職員がやっている。
揚げたドーナツに果糖をまぶして出来上がり。
飲み物は、ダージリン、オレンジペコ、アールグレイ、フレーバーティー、
アップルティー、レモンハーブ、ミントティー、コーヒー、緑茶が用意されている。
それぞれ好きなものを煎れて飲んでいる。
極月12月なので、ちょっと寒いのだが、
人が1000人以上いるので、さほど寒さを感じなくてすむ。
アメリカン花見月はそのほとんどの葉を落として、冬の準備を始めている。
ランタナは、まだ元気だが、花は小さくなった感じがする。
ざくろの葉も、かなり黄色くなっている。
パンジー、ビオラ、水仙、プリムラ・ポリアンサ、
プリムラ・ジュリアン、オステオスペルマム、ストック、
エリカ、ノースポール、葉牡丹、チェッカーベリー、
いろとりどりの花々でとてもあでやかでかわいらしい花壇。
老人たちが手入れしたものだ。
風は少し冷たいが、きらきら輝く太陽が
明るく優しく包んでくれる。
「毒子さん、わしゃあ、ここに来て、
生まれてきてよかったとはじめて思った」
「ああ、俺も」
「うんうん、わたしも」
みんなそれぞれ喜んでくれている。
最近、エアー恋愛をしている老人も増えて、
身なりに気を使っているようで、
ここに連れてこられたときよりも若くなっている。
「そういっていただけると嬉しいです」
毒子もご満悦。
「もう少し寒くなったら、シャボン玉を作って遊びましょうか」
「なんじゃ、そりゃ」
「うふふ、見てのお楽しみ。この世のものとは思えないほど、
美しいものが見れるかもしれないですよ」
「おお、そりゃあ、楽しみじゃ」
みんなで作ったドーナツは、少しいびつだか、
とてもおいしかった。まぶした果糖が、
口の中でシュワーととろける。
あ、そうそう、最近、多肉植物が静かなブームで、
自分の部屋においている人たちが沢山増えた。
いくつになっても、何かを愛したい気持ちは大切だよね。
延命治療をしないプライマリーケア、続行中。
ありがとうございます。
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