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憧れの光源氏
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「毎日毎日、ナノマシーンを作り、特質チップを作って、わらわはあきた、あきたのじゃ」
「よくがんばった、好きなことをするがよい」
神様のお許しをいただき、タイムスリップすることにした。
ご褒美に自分の年齢をいかようにもできるという特質をいただけた。
「ありがとうございます」
目指すは光源氏。
「目標、光源氏の胃袋をつかめ」
京都は海がない。
魚介類は、現代から運ぶしかなかった。
冷凍も運搬も未熟だったからである。
時は春。庭には、さまざまな梅の花を植えた。
ウメは、バラ科サクラ属の落葉高木、またはその果実のこと。花芽はモモと異なり、一節につき1個となるため、モモに比べ、開花時の華やかな印象は薄い。毎年2月から4月に5枚の花弁のある1センチメートルから3センチメートルほどの花を葉に先立って咲かせる。花の色は白、またはピンクから赤。
今日は、憧れの光源氏が遊びに来てくださる。
毒子は、朝からわくわくしていた。
17歳の毒子。初々しく、可憐である。
名を桜子さくらことした。
光源氏様、到着。
梅の花をご覧になっている。
白梅、淡いピンク、紅梅、咲き分け、五色梅、さまざまな梅が咲き誇っている。
「よいかおりじゃのー」
「桜子もここに来て、一緒に眺めようぞ」
悪役令嬢 毒子改め、桜子は恥ずかしそうに微笑んだ。
「ういういしいのー」
光源氏は、満足そうな笑みを浮かべている。
「お茶が入りました」
伊藤園
プレミアムティーバッグ 抹茶入り緑茶をいれる。
白玉粉にお豆腐を潰して、白玉団子を作った。
きなことごまとあんこ、好きなものをつけて食べる。
「ん、このお茶は」
「はい、とっても簡単においしいお茶が飲めるんです」
粉末の抹茶が一緒に入っている上、極蒸しというとても濃く出るタイプの加工がしてあるため、
濃厚で色も鮮やか、香りも爽やかで芳醇な味であった。
「こんな、うまいお茶飲んだことないぞ」
光源氏は口をしっかり閉じ、鼻に抜ける香りを堪能している。
「だんごはどの餡がよいかのー」
「少しずつ、いろんなものを召し上がってもよいですし、
お好きなものがあればそれだけでもよいと思います」
「ふむ」
「この、きな粉のこうばしいこと」
毒子あらため桜子は、香りを楽しむ方なんだなと思った。
「しかも、このだんご、食べたことがない味じゃ」
「はい、お豆腐が混ぜてあります」
奈良時代に遣唐使が中国と日本の間を往復するようになります。この時に日本に仏教が伝えられるのですが、それとともに寺院で使う食材のひとつとして豆腐が持ち込まれたのではないかという説があります。しかし、実際に文献に初めて豆腐という文字が現れるのは平安時代の後期です。
なので、光源氏の生きている平安中期にはまだ豆腐はなかったかもしれない。
「ほー、豆腐とな」
「豆腐は大豆から作られていますから、体つくりに大切な栄養が入っています」
「そちは、賢いやつじゃのー」
「少しお散歩しましょうか」
「おう」
憧れの光源氏は思ったよりもりりしく、知的であった。
「そなたは不思議な香りがするのー」
「何の香じゃ」
「香はたいておりません」
「この香りは何じゃ」
「石鹸です」
「ほー、石鹸と申す香なのか」
だから、香じゃないってば・・・。
「すがすがしい爽やかな香りじゃ」
光源氏は桜子の香りをかいでいる。
「ん?髪はまた違う香りがするのー」
「髪はシャンプーです」
いちいち説明するのが面倒であった。
そのまま、耳元に息を吹きかけられた。
「あ」
桜子は小さな声を上げて、後ずさる。
「すまぬすまぬ、あまりにかわいくて」
耳たぶまで真っ赤になっている桜子。
「そろそろ、食事の準備ができました」
「うむ、まいろう」
膳の上には、鰆さわらの菜種焼き、豆腐とわかめの味噌汁。庄屋の佃煮。
菜の花の辛し和え、白いご飯がのっかっている。
「この魚は何じゃ」
「鰆の菜種焼きでございます」
「黄色が春らしくてきれいじゃのー」
「味も淡白で口の中でふわーと溶ける」
鰆は七輪の炭で強火の遠火で焼いたもの。
「この味噌汁は何じゃ」
「お豆腐とわかめのお味噌汁に刻んだねぎと柚子の皮が少し入っています」
「柚子の香りがなんとも鼻をくすぐるのー」
京都の白味噌ではなく、普通に売られている「料亭の味」に隠し味として、牛乳を少し加えてあった。
「ご飯のおいしいこと」
「佃煮は昆布がピリ辛になっていて箸安めによいのー」
「この菜の花は少し辛くて香りもよいがなぜじゃ」
「からしあえでございます」
「ほんに春爛漫の食事であった」
「よは満足じゃ」
「桜子とやら、毎日来てもよいか」
「はい、うれしゅうございます」
どうやら、光源氏の胃袋をつかめ
成功したようですね。
面影は 身をも離れず 山桜
心の限り とめて来しかど
夜の間の風も、うしろめたくなむ
See You Again
「よくがんばった、好きなことをするがよい」
神様のお許しをいただき、タイムスリップすることにした。
ご褒美に自分の年齢をいかようにもできるという特質をいただけた。
「ありがとうございます」
目指すは光源氏。
「目標、光源氏の胃袋をつかめ」
京都は海がない。
魚介類は、現代から運ぶしかなかった。
冷凍も運搬も未熟だったからである。
時は春。庭には、さまざまな梅の花を植えた。
ウメは、バラ科サクラ属の落葉高木、またはその果実のこと。花芽はモモと異なり、一節につき1個となるため、モモに比べ、開花時の華やかな印象は薄い。毎年2月から4月に5枚の花弁のある1センチメートルから3センチメートルほどの花を葉に先立って咲かせる。花の色は白、またはピンクから赤。
今日は、憧れの光源氏が遊びに来てくださる。
毒子は、朝からわくわくしていた。
17歳の毒子。初々しく、可憐である。
名を桜子さくらことした。
光源氏様、到着。
梅の花をご覧になっている。
白梅、淡いピンク、紅梅、咲き分け、五色梅、さまざまな梅が咲き誇っている。
「よいかおりじゃのー」
「桜子もここに来て、一緒に眺めようぞ」
悪役令嬢 毒子改め、桜子は恥ずかしそうに微笑んだ。
「ういういしいのー」
光源氏は、満足そうな笑みを浮かべている。
「お茶が入りました」
伊藤園
プレミアムティーバッグ 抹茶入り緑茶をいれる。
白玉粉にお豆腐を潰して、白玉団子を作った。
きなことごまとあんこ、好きなものをつけて食べる。
「ん、このお茶は」
「はい、とっても簡単においしいお茶が飲めるんです」
粉末の抹茶が一緒に入っている上、極蒸しというとても濃く出るタイプの加工がしてあるため、
濃厚で色も鮮やか、香りも爽やかで芳醇な味であった。
「こんな、うまいお茶飲んだことないぞ」
光源氏は口をしっかり閉じ、鼻に抜ける香りを堪能している。
「だんごはどの餡がよいかのー」
「少しずつ、いろんなものを召し上がってもよいですし、
お好きなものがあればそれだけでもよいと思います」
「ふむ」
「この、きな粉のこうばしいこと」
毒子あらため桜子は、香りを楽しむ方なんだなと思った。
「しかも、このだんご、食べたことがない味じゃ」
「はい、お豆腐が混ぜてあります」
奈良時代に遣唐使が中国と日本の間を往復するようになります。この時に日本に仏教が伝えられるのですが、それとともに寺院で使う食材のひとつとして豆腐が持ち込まれたのではないかという説があります。しかし、実際に文献に初めて豆腐という文字が現れるのは平安時代の後期です。
なので、光源氏の生きている平安中期にはまだ豆腐はなかったかもしれない。
「ほー、豆腐とな」
「豆腐は大豆から作られていますから、体つくりに大切な栄養が入っています」
「そちは、賢いやつじゃのー」
「少しお散歩しましょうか」
「おう」
憧れの光源氏は思ったよりもりりしく、知的であった。
「そなたは不思議な香りがするのー」
「何の香じゃ」
「香はたいておりません」
「この香りは何じゃ」
「石鹸です」
「ほー、石鹸と申す香なのか」
だから、香じゃないってば・・・。
「すがすがしい爽やかな香りじゃ」
光源氏は桜子の香りをかいでいる。
「ん?髪はまた違う香りがするのー」
「髪はシャンプーです」
いちいち説明するのが面倒であった。
そのまま、耳元に息を吹きかけられた。
「あ」
桜子は小さな声を上げて、後ずさる。
「すまぬすまぬ、あまりにかわいくて」
耳たぶまで真っ赤になっている桜子。
「そろそろ、食事の準備ができました」
「うむ、まいろう」
膳の上には、鰆さわらの菜種焼き、豆腐とわかめの味噌汁。庄屋の佃煮。
菜の花の辛し和え、白いご飯がのっかっている。
「この魚は何じゃ」
「鰆の菜種焼きでございます」
「黄色が春らしくてきれいじゃのー」
「味も淡白で口の中でふわーと溶ける」
鰆は七輪の炭で強火の遠火で焼いたもの。
「この味噌汁は何じゃ」
「お豆腐とわかめのお味噌汁に刻んだねぎと柚子の皮が少し入っています」
「柚子の香りがなんとも鼻をくすぐるのー」
京都の白味噌ではなく、普通に売られている「料亭の味」に隠し味として、牛乳を少し加えてあった。
「ご飯のおいしいこと」
「佃煮は昆布がピリ辛になっていて箸安めによいのー」
「この菜の花は少し辛くて香りもよいがなぜじゃ」
「からしあえでございます」
「ほんに春爛漫の食事であった」
「よは満足じゃ」
「桜子とやら、毎日来てもよいか」
「はい、うれしゅうございます」
どうやら、光源氏の胃袋をつかめ
成功したようですね。
面影は 身をも離れず 山桜
心の限り とめて来しかど
夜の間の風も、うしろめたくなむ
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