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不登校児はお好きですか
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不登校児はお好きですか
「みんなー、不登校になってよかったね。その意味が分かる人手を上げて」
悪役令嬢 毒子の質問に10名の児童が一斉に手を挙げた。
「じゃあ、そこの青い服を着てる君、伊藤君かな」
「はい、ここにこれたからです」
10名全員、拍手している。
この子たちは、東京都の教育相談室に通っている不登校児10名だ。
「ここにそんな価値があると思う」
毒子の質問に、みんなは下を向いた。
「ここは、この時間は何をするとか決められたカリキュラムはありません。
あなたたちの自由意思で、何をするか、何も参加しないのも自由です。
決めてください。そして、2か月後、今の質問の答え、
ここに価値があるのかをそれぞれ聞かせてください」
10人は大きな声で、
「はーい」
と、元気に答えた。
死神は毒子のそばによってきて、
「あいつらは、名簿にないのに何で参加してる」
「彼らもまた、利己のボランティアです」
死神はちょっと不満げに
「ほー」
と、答えて離れた。
神様は、にこにこと笑って毒子を見ている。
毒子が、できるだけ多くの孤独死予定の老人たちに元気よくあいさつをし、
にこやかに対応としている、
今着たばかりの児童たちも、そばに寄ってきて、
老人たちの話に耳を傾けている。
少子高齢化の犠牲者がなぜか一つの場所で出会い、時を一つにして、
まじりあっている。
毒子はもともとここ、自分の育ったところで、不登校の子のための施設を作りたかった。
しかし、毒子には教員免許も資金もなかった。
こうして、不思議な形で、今夢がかなっていることが
とても、嬉しかった。
いじめのために、不登校になることもできず、自殺する子供たちがいる。
ここにきて、少しでも笑顔になってもらいたかった。
ここに今いる生徒たちは、不登校を許された子供たちだ。
たぶん、死んでいく子供たちは、その不登校さえ選ぶことができなかった、
児童、生徒たちなのだろう。
そんな子供、生徒たちがマスコミでここを知り、
参加することを自由意思で選び、
生きててよかった
生まれてきてよかったと感じてもらえたら。
それが毒子の最終目的であった。
一人一人の命は本当に尊い。
少子化ならなおさらだ。
病気のせいで、小学校のころから、幻覚幻聴、家出、盗み、
訳の分からない行動に苦しんできた毒子である。
そんな、生まれてくるんじゃなかったとのたうち回った経験の分かち合いを
誰かとできたら、その経験は無駄ではなかったと心から思える気がしていた。
そうでなければ、今にも、そばにいて、微笑んでいる神様に、
「やつぱり、あなたは不公平だ」
と、食って掛かりそうだった。
「だって、そんなこと経験しないで、普通に育った子供たちもいるじゃないかー」
と、声を大にして叫びたかった。
それほど、この地にいることは過去のあの苦しかったことを、
明確に思い出させた。
「ああ、ここで父に木剣でたたかれて泣いてたな」
とか、
雪の中で、ばたっと倒れて、
「このまま死んでしまえばいいのに」
と泣いてたことだった。
10人の子供たちが加わることで、
思っていない効果が出だした。
孤独死予定の老人たちは、
前にもまして慈しみ深い顔になっている。
小さな子供を膝に抱き、おひげを弄られて、
満足げに笑っている。
そこにボランティアや職員の人たちが交わって、
世代間の交流をしている。
「断絶」
などという言葉は、ここには似つかわしくなかった。
「お兄さんのころにはねー」
子供たちは、真剣な面持ちで話を聞いている。
そうかと思えば、少し元気そうなお年寄りと、
二人三脚の練習をしている児童もいる。
めいめい思うままに行動して、平和を感じられるって
とっても素敵なことだと思う。
大都会の東京で、知らないおじいちゃんと公園で話していたら、
親はとても心配するだろう。
ここでは、当たり前のことなのに…
動物は、生まれてすぐに立って、次の日には歩き出す種類さえある。
1年もたてば、親から離れ、子供さえ生む。
人間は違う。
立って歩けるようになるまで、1年くらいかかる。
子供を産んでちゃんと育てられるようになるまで、
へたをすると、20年では無理かもしれない。
だからこそ、社会が必要なのだと思う。
「愛ちゃん、みっけー」
今度は子供たちは、子供たちだけで、かくれんぼをしているようだ。
「縦と横の糸を織りなして、自分だけの布ができたらいいね」
悪役令嬢 毒子は、心からそう願った。
「なんて、わしはここにいるんじゃー。ぱあーさんはどこにおる」
と、大声で怒鳴っているおじいちゃんがいる。
毒子はそっと近づいて眺めている。
おじいちゃんは、自分の声の大きさに興奮するように、
どんどん大きな声を出している。
毒子はまだ黙って眺めている。
周りは、あまり勢いに驚いて、どうしたらいいのかおろおろしている。
老人が暴言・暴行をする原因
不安を感じ、混乱している
感情のコントロールがうまくいかない
周囲の感情に巻き込まれている
自尊心が傷つけられている
体調が悪い・不調である
原因はともあれ、物理的、感情的、精神気に距離を取ろう。
みんなは、少しずつ距離を取りながら、囲んでいった。
優しく見守るように。
悪役令嬢 毒子は歌を歌っている。
「雪やこんこ あられやこんこ ふってふっても・・・」
みんなも参加して、合唱が始まった。
雪が降る。雪の結晶が静かに降りてくる。
みんなの願いは
「おじいちゃん、頑張って。独りぼっちじゃないよ。
あなたがどんなに暴れても、わたしたちはあなたが好きだよ。
見捨てないよ。」
スターダストがキラキラと舞う。
光が収束し、オーロラがゆらゆらと大空を駆け巡る。
子供たちが口々に叫ぶ。
「うわー、きれい」
おじいちゃんは怒鳴るのをやめて、空を仰いでいる。
みんな大きく深呼吸をした。
どんなことがあっても、どんなことが起きても、ゆるがない共同体。
「孤独死予定 悪役令嬢のダンジョン」
受け入れてもらえるという安心感。素敵なダンジョン経営は続く。
「みんなー、不登校になってよかったね。その意味が分かる人手を上げて」
悪役令嬢 毒子の質問に10名の児童が一斉に手を挙げた。
「じゃあ、そこの青い服を着てる君、伊藤君かな」
「はい、ここにこれたからです」
10名全員、拍手している。
この子たちは、東京都の教育相談室に通っている不登校児10名だ。
「ここにそんな価値があると思う」
毒子の質問に、みんなは下を向いた。
「ここは、この時間は何をするとか決められたカリキュラムはありません。
あなたたちの自由意思で、何をするか、何も参加しないのも自由です。
決めてください。そして、2か月後、今の質問の答え、
ここに価値があるのかをそれぞれ聞かせてください」
10人は大きな声で、
「はーい」
と、元気に答えた。
死神は毒子のそばによってきて、
「あいつらは、名簿にないのに何で参加してる」
「彼らもまた、利己のボランティアです」
死神はちょっと不満げに
「ほー」
と、答えて離れた。
神様は、にこにこと笑って毒子を見ている。
毒子が、できるだけ多くの孤独死予定の老人たちに元気よくあいさつをし、
にこやかに対応としている、
今着たばかりの児童たちも、そばに寄ってきて、
老人たちの話に耳を傾けている。
少子高齢化の犠牲者がなぜか一つの場所で出会い、時を一つにして、
まじりあっている。
毒子はもともとここ、自分の育ったところで、不登校の子のための施設を作りたかった。
しかし、毒子には教員免許も資金もなかった。
こうして、不思議な形で、今夢がかなっていることが
とても、嬉しかった。
いじめのために、不登校になることもできず、自殺する子供たちがいる。
ここにきて、少しでも笑顔になってもらいたかった。
ここに今いる生徒たちは、不登校を許された子供たちだ。
たぶん、死んでいく子供たちは、その不登校さえ選ぶことができなかった、
児童、生徒たちなのだろう。
そんな子供、生徒たちがマスコミでここを知り、
参加することを自由意思で選び、
生きててよかった
生まれてきてよかったと感じてもらえたら。
それが毒子の最終目的であった。
一人一人の命は本当に尊い。
少子化ならなおさらだ。
病気のせいで、小学校のころから、幻覚幻聴、家出、盗み、
訳の分からない行動に苦しんできた毒子である。
そんな、生まれてくるんじゃなかったとのたうち回った経験の分かち合いを
誰かとできたら、その経験は無駄ではなかったと心から思える気がしていた。
そうでなければ、今にも、そばにいて、微笑んでいる神様に、
「やつぱり、あなたは不公平だ」
と、食って掛かりそうだった。
「だって、そんなこと経験しないで、普通に育った子供たちもいるじゃないかー」
と、声を大にして叫びたかった。
それほど、この地にいることは過去のあの苦しかったことを、
明確に思い出させた。
「ああ、ここで父に木剣でたたかれて泣いてたな」
とか、
雪の中で、ばたっと倒れて、
「このまま死んでしまえばいいのに」
と泣いてたことだった。
10人の子供たちが加わることで、
思っていない効果が出だした。
孤独死予定の老人たちは、
前にもまして慈しみ深い顔になっている。
小さな子供を膝に抱き、おひげを弄られて、
満足げに笑っている。
そこにボランティアや職員の人たちが交わって、
世代間の交流をしている。
「断絶」
などという言葉は、ここには似つかわしくなかった。
「お兄さんのころにはねー」
子供たちは、真剣な面持ちで話を聞いている。
そうかと思えば、少し元気そうなお年寄りと、
二人三脚の練習をしている児童もいる。
めいめい思うままに行動して、平和を感じられるって
とっても素敵なことだと思う。
大都会の東京で、知らないおじいちゃんと公園で話していたら、
親はとても心配するだろう。
ここでは、当たり前のことなのに…
動物は、生まれてすぐに立って、次の日には歩き出す種類さえある。
1年もたてば、親から離れ、子供さえ生む。
人間は違う。
立って歩けるようになるまで、1年くらいかかる。
子供を産んでちゃんと育てられるようになるまで、
へたをすると、20年では無理かもしれない。
だからこそ、社会が必要なのだと思う。
「愛ちゃん、みっけー」
今度は子供たちは、子供たちだけで、かくれんぼをしているようだ。
「縦と横の糸を織りなして、自分だけの布ができたらいいね」
悪役令嬢 毒子は、心からそう願った。
「なんて、わしはここにいるんじゃー。ぱあーさんはどこにおる」
と、大声で怒鳴っているおじいちゃんがいる。
毒子はそっと近づいて眺めている。
おじいちゃんは、自分の声の大きさに興奮するように、
どんどん大きな声を出している。
毒子はまだ黙って眺めている。
周りは、あまり勢いに驚いて、どうしたらいいのかおろおろしている。
老人が暴言・暴行をする原因
不安を感じ、混乱している
感情のコントロールがうまくいかない
周囲の感情に巻き込まれている
自尊心が傷つけられている
体調が悪い・不調である
原因はともあれ、物理的、感情的、精神気に距離を取ろう。
みんなは、少しずつ距離を取りながら、囲んでいった。
優しく見守るように。
悪役令嬢 毒子は歌を歌っている。
「雪やこんこ あられやこんこ ふってふっても・・・」
みんなも参加して、合唱が始まった。
雪が降る。雪の結晶が静かに降りてくる。
みんなの願いは
「おじいちゃん、頑張って。独りぼっちじゃないよ。
あなたがどんなに暴れても、わたしたちはあなたが好きだよ。
見捨てないよ。」
スターダストがキラキラと舞う。
光が収束し、オーロラがゆらゆらと大空を駆け巡る。
子供たちが口々に叫ぶ。
「うわー、きれい」
おじいちゃんは怒鳴るのをやめて、空を仰いでいる。
みんな大きく深呼吸をした。
どんなことがあっても、どんなことが起きても、ゆるがない共同体。
「孤独死予定 悪役令嬢のダンジョン」
受け入れてもらえるという安心感。素敵なダンジョン経営は続く。
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