縁(えにし)

春秋花壇

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11歳 ガチャの誘惑

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 「ガチャの誘惑」

春樹は小学五年生の男の子で、オンラインゲームが大好きだった。特にお気に入りのゲームは、友達と一緒にプレイできる冒険RPGで、キャラクターを育てて強くすることが楽しみだった。しかし、そのゲームには「ガチャ」と呼ばれるシステムがあり、リアルマネーを使ってレアアイテムを手に入れることができた。

「お母さん、またガチャで新しいキャラが出たんだよ!みんな持ってるのに僕だけ持ってないんだ。」春樹は母親にそう言って、お小遣いを前借りしようとした。

「春樹、それは何度も言ってるけど、お金は大切にしなきゃダメよ。」母親は厳しい顔で答えた。「お父さんとお母さんは、あなたが将来困らないように教えているの。ゲームのためにお金を無駄に使ってはいけないの。」

春樹は不満そうにため息をついた。彼は友達が新しいキャラクターを見せびらかしているのを見て、どうしても欲しいという気持ちを抑えられなかった。夜になり、春樹はベッドに入りながら考えた。

「もし、少しだけお金を使ってみたら…?」彼は自分に言い聞かせた。「ちょっとだけなら大丈夫だろう。」

次の日、春樹はこっそりと母親の財布から千円札を取り出した。彼はそれを持ってゲームのガチャを引いたが、思ったようなレアキャラは出なかった。失望した春樹は、もっとお金を使ってガチャを引けば欲しいキャラが出るかもしれないと考えた。

その夜、春樹は再び母親の財布からお金を取った。今度は五千円札だった。彼は震える手でガチャを引いたが、またもやレアキャラは出なかった。焦りと後悔が春樹を襲ったが、止めることができなかった。彼はどんどんエスカレートし、最終的には母親のクレジットカードを使ってガチャを引き続けた。

数週間後、母親はクレジットカードの明細を見て驚愕した。「これ、どういうこと?」母親は春樹を問い詰めた。

春樹は涙を流しながら真実を告白した。「ごめんなさい、お母さん。みんなみたいに強くなりたくて…」

母親は深いため息をつき、春樹を抱きしめた。「春樹、お金はゲームのために使うものじゃないの。これからはもっとよく話し合いましょう。あなたがどれだけゲームを楽しんでいるかは分かるけど、大切なことを見失ってはいけないの。」

それから春樹は、母親と一緒にお金の使い方について学ぶことになった。彼は自分の行動を反省し、ゲーム以外の楽しみを見つける努力を始めた。そして、家族との時間や友達とのリアルな交流がどれほど大切かを実感するようになった。

ある日、春樹は母親に新しい提案をした。「お母さん、一緒にゲームをやってみない?そして、僕がどれだけ楽しんでいるかを見て欲しいんだ。」

母親は微笑んで答えた。「もちろんよ、春樹。でも、その前に宿題を終わらせてからね。」

春樹はうなずき、机に向かった。彼は今、自分の行動が家族や自分自身に与える影響を理解し始めていた。そして、彼のゲームの世界は現実の大切さを教えてくれる一つのツールになっていた。








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