縁(えにし)

春秋花壇

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9歳 ホオズキの秘密

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ホオズキの秘密

小学三年生の理央は、夏休みのある日、近所の公園で遊んでいた。セミの鳴き声が響き渡る中、友達の健太と一緒に遊んでいると、おばあちゃんから聞いた「ホオズキの遊び方」を思い出した。

「ねぇ、健太。ホオズキで遊んだことある?」と理央は尋ねた。

「ホオズキ?あの赤い実のこと?」健太が首をかしげる。

「うん、あれでね、笛を作るんだって。おばあちゃんが教えてくれたんだ」と理央は目を輝かせて答えた。

二人は早速、公園の隅にあるホオズキの茂みに向かった。ホオズキの実は鮮やかな赤色で、まるで小さなランタンのようだった。理央は慎重に一つ摘み取り、健太にも手渡した。

「まずね、こうやって外側の皮を破らないように中の実を取り出すんだ」と理央は言いながら、器用にホオズキの実を取り出した。

「おお、すごいな、理央!」と健太は感心して見入っていた。

理央はさらに説明を続けた。「次に、この空っぽになったホオズキを乾かすんだ。乾いたら、口でふくらませると笛になるんだよ!」

「ほんとに?やってみよう!」と健太はすぐに興味を持ち、理央の指示に従ってホオズキの実を取り出し始めた。

数日後、乾燥させたホオズキを持ち寄った二人は、公園のベンチに腰を下ろし、ホオズキを手にした。理央はふっと息を吹き込み、ホオズキを膨らませると、軽やかな音が鳴り響いた。

「すごい、理央!僕もやってみる!」と健太も挑戦したが、最初はうまく音を出せなかった。しかし、何度か試みるうちに、ついに綺麗な音が鳴り響いた。

「やったね、健太!これでホオズキの笛ができたよ」と理央は笑顔で言った。

その後、二人はホオズキの笛でいろいろなメロディを奏でながら、楽しい夏休みの一日を過ごした。音楽を楽しむだけでなく、ホオズキの作り方を知ることで、二人の友情も深まった。

その夕方、理央と健太はホオズキの笛を持って家に帰った。理央の家では、おばあちゃんが笑顔で二人を迎えた。「どうだった、ホオズキの笛は?」と尋ねた。

「ばあちゃん、すごく楽しかったよ!ホオズキの笛、ちゃんと作れたんだ!」と理央は嬉しそうに答えた。

「そうか、それは良かったね。ホオズキの笛は、昔から子供たちの遊び道具だったんだよ。自然の中で遊ぶ楽しさを忘れないでね」とおばあちゃんは優しく語った。

理央と健太は、ホオズキの笛を手に持ちながら、おばあちゃんの話に耳を傾けた。その時、彼らは自然の中で遊ぶ喜びと、昔から続く伝統の大切さを感じ取ったのだった。

そして、二人は次の夏休みもまたホオズキで遊ぼうと約束し、その日を楽しみにしながら家路に着いた。夏の思い出に新たなページが加わり、理央と健太の友情はますます強くなっていった。

その夜、理央はホオズキの笛の音色を思い出しながら、心地よい眠りについた。夢の中でも、二人はホオズキの茂みで楽しく遊び続けていた。








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