お金がない

春秋花壇

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未来への一歩

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「未来への一歩」

俺は15歳、Z世代と呼ばれる時代に生まれ育った。でも、周りの同年代の子たちと違って、スマホもパソコンもほとんど使いこなせない。学校では、授業中にみんながスマホを取り出して、何かを調べたり、友達とやり取りしたりしている。僕はその光景をただ眺めているだけだ。触り方もわからないし、どうしたらいいのかもわからない。

「ねぇ、君もスマホ使わないの?」とクラスメートに聞かれることがある。笑いながら答えることが多いけど、内心では少し恥ずかしい。だって、みんなが当然のようにできることが、自分にはできないから。

家に帰ると、母さんはいつもパソコンを使って仕事をしている。父さんはもういなくて、母さん一人で家計を支えている。時々、母さんは「パソコンがわからないから、仕事が遅れる」って言ってるけど、それでもなんとかしているようだ。

俺はいつも母さんを見ている。すごいなって思う。パソコンで文字を打ちながら、電話をかけて、さらに家事もこなしている。母さんは忙しいから、あまり自分のことを聞いてくれないけど、俺は母さんのために何かできないかと思ってる。でも、どうしてもその「何か」がわからない。

「ねぇ、俺も働くよ」と言ってみたことがある。

その時、母さんは優しく笑った。「働くって言っても、まだ君は学校があるんだから、まずは勉強だよ」と言ってくれた。それはその通りだと思ったけれど、少しだけ心の中で、どうしても焦る自分がいた。何もできない自分に苛立ちを感じていた。

昼間は学校に行き、放課後は友達と遊ぶのが普通の生活だろう。でも、僕にとってはその時間があまりにも空虚に感じてしまう。スマホもパソコンも使えない自分が、なんだか取り残されている気がして。どこかで「これじゃダメだ」という焦りを感じる。

「もし、俺がちゃんと働けるようになったら、スマホくらい持てるようになりたいな」

そんなことを、ふと思う時がある。スマホを持ったら、友達ともっと話せるだろうし、調べ物もできるし、もっと自分の世界が広がるような気がする。でも、そんな簡単なことすら、今の自分には遠い未来の話のように思えて仕方ない。

ある日、母さんが帰宅して、パソコンの前で疲れた顔をしているのを見た。今日は仕事が遅くなったらしく、何かトラブルがあったようだった。俺はそれを見て、少し考えた。スマホを持つのが先か、パソコンを使えるようになるのが先か。でも、今は何もできない自分がもどかしい。

「俺、母さんみたいに働けるようになりたい」と心の中で決めた。そんな自分にできることがあるなら、それをしていきたい。今はまだ分からないけれど、少しずつ前に進んでいければいい。

その夜、母さんが食事を用意しているとき、俺は思い切って言ってみた。

「母さん、俺、将来パソコン使えるようになりたい」

母さんは少し驚いた顔をした後、優しく微笑んで言った。

「いいね、パソコンは便利だから、しっかり覚えなさい。君が頑張ってること、私は応援してるよ」

その言葉に、胸が温かくなった。少しだけ、安心した。スマホやパソコンが使えなくても、ちゃんと働けるようになったら、少しずつ自分の世界が広がるんだろう。今はまだその一歩を踏み出したところだけど、これから先、少しずつ前に進んでいけばいいと思った。

翌日、学校に行く前に、母さんが使っている古いパソコンを少し触ってみた。やっぱり最初は難しかったけれど、少しずつ慣れてきた。最初の一歩を踏み出した瞬間、どこかに希望を感じることができた。

もしも、未来にスマホを手にすることができたら、その時にはもっと自分のことを知ることができるし、母さんに感謝の気持ちを伝える手段も増える。けれど、今はそのためにできることを一つずつ積み重ねていくことが大事だと思った。

俺の未来はまだわからない。でも、少なくとも今日は少しだけ前に進んだ気がする。それが大事なんだと思う。

俺はこれから、少しずつでも変わっていきたいと思う。







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