お金がない

春秋花壇

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小さな幸せ

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小さな幸せ

冬の寒さが身にしみる午後、陽だまりにひとり座っていると、ふと甘いものが食べたくなった。気持ちの中ではすでに、あのクリームが乗ったケーキや、ふわふわのドーナツを口に含んでいるような気分だ。でも、冷蔵庫を開けても何もない。お金もないし、買いに行く余裕もない。ただ、そんなことを考えながら、温かな家の中にいることに少し安心していた。

台所の棚を覗き込むと、すぐに目に入ったのは赤砂糖の袋。小さなものだが、使う度に心がほんのり温かくなる。片栗粉も一袋残っている。お金がないけれど、手元にあるものだけで、何か甘いものが作れるかもしれない。ふと閃いたアイデアに、私は思わず微笑んだ。

「これで何か作れるかな。」

赤砂糖と片栗粉、あとは水さえあれば、お手軽にほっこりドリンクを作れるのだ。家にあるものを駆使して、ほんの少しの贅沢を味わいたくなった。

私は鍋を取り出し、水を少しだけ注いで温め始める。赤砂糖を小さじ2杯ほど加えると、その香ばしい甘い香りが広がった。ほんの少しだけ焦がすようにして溶かすと、さらに深みが増して、まるでカラメルのような香りが立ち込める。手早く片栗粉を加え、少しずつ溶かしていく。あっという間に、とろみがついてきた。

「これで、できあがり。」

鍋から注いだドリンクは、見た目こそシンプルだが、ほのかな赤砂糖の色合いが心を落ち着けてくれる。そして、口に含んだ瞬間に感じるその甘さは、まるで温かい布団に包まれたような安心感を与えてくれた。片栗粉のとろりとした食感が心地よく、寒さの中で感じる小さな幸せをひと口ごとに味わうことができた。

そのドリンクをすすりながら、私はふと思う。この何でもない、簡単なドリンクが、今の私にとってはとても大切な時間なのだと。お金がなくても、工夫すれば手に入る小さな幸せが、心を豊かにしてくれる。何気ない日常の中にこそ、こうした小さな幸せが隠れていることに気づくと、心が少し温かくなった。

少し甘いものを飲んだだけで、私は何だか気持ちが満たされた。お金がなくても、物がなくても、幸せは手のひらの中にあって、ただそれに気づくことが大切なのだと感じた。

ドリンクを飲み終わると、手元に残る温かな器を見つめながら、私は思う。今日はこれで十分だ。小さな幸せが、こんなにも心に響くとは。お金がなくても、この満ち足りた気持ちを大切にしようと思った。

外では雪が降り積もっているのが見えた。雪の結晶がひとつ、またひとつ、静かに舞い降りてくる。その美しさに、私はもう一度微笑みながら、暖かい部屋で過ごす幸せを噛み締めた。

「お金がなくても、今日も幸せだ。」

それが、私にとっての今のすべてだった。






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