お金がない

夢を賭ける約束

「夢を賭ける約束」

天才と呼ばれる漫画家・龍也（たつや）は、週刊少年ジャンプの連載作家として人気を博していたが、次第に作品のクオリティが低下し、アンケート順位も落ち始めていた。編集部から「今のペースでは連載を続けるのが難しい」と言われた龍也は、苦悩の果てにある重大な決断を下すことになった。それは、かつて信頼を置いていた親友であり、ライバルでもある漫画家・直也（なおや）に連載を続けさせるために、作品を引き継がせるということだった。

龍也と直也の出会いは専門学校時代に遡る。二人は切磋琢磨し、共に漫画家として夢を追い続けてきた仲間だった。彼らの関係は、まるで手形に署名したような不文律に満ちていた。いわば二人は「共に頂点を目指す」という約束で結ばれていたのだ。しかし、二人の夢はその道の険しさによって、まるで切手のように剥がれ落ち、二人の間には微妙な距離が生まれつつあった。

数か月後、龍也は自分の筆の鈍りを感じ、深刻なスランプに陥っていた。その焦りから、自分が守ってきた「連載の場」を失うのではないかという恐怖にさいなまれていた。編集長からの最後通告を受けた龍也は、意を決して、連載を引き継がせる相手として直也に接触することにした。

ある日、龍也は直也を居酒屋に呼び出した。二人で飲みながら、龍也は直也に真剣な顔でこう切り出した。「俺の作品をお前に託したいんだ」と。驚いた直也は、龍也の言葉が信じられずに一瞬言葉を失った。だが、龍也の真摯な眼差しを見て、彼が本気だということを理解した。

「…でも、俺はお前の夢を壊すつもりはない」と直也は言った。

「いや、違うんだ。俺の作品が、俺の手でどんどん汚れていくのが怖いんだ。お前なら、この物語をもっと輝かせられる」と龍也は震える声で答えた。

その夜、二人は泣きながら話し合い、龍也は直也に手形のような証文を渡すことにした。二人は紙にそれぞれの名前を書き、互いの夢を再び繋ぎ直すように、連載引き継ぎの覚悟を示した。龍也にとって、それは自分の作家としての誇りを直也に託す意味を込めた手形のようなものだった。

その後、龍也の作品は直也の手に渡り、少しずつだが再びジャンプの中で注目を集め始めた。直也の描く世界観に新たな命が吹き込まれ、ファンからの評価も高まっていった。しかし、直也にとって、その連載はただの仕事ではなく、龍也から預かった信念と魂そのものだった。

ある日、龍也は本屋で自分の作品を手に取った。そこには、自分が描いたキャラクターが、直也の新たな解釈によって生き生きと動き出しているのを感じた。彼の胸に湧き上がった感情は、嫉妬でも後悔でもなかった。それはまるで、夢を共にしている相棒が自分の失われた道を補ってくれたという安堵だった。

時間が経つにつれ、二人の夢は一つの作品を通じて一つに結びつき、その作品はジャンプの読者たちの心に深く刻まれていった。そして、連載の最終回、作品のラストシーンには、龍也と直也の名前が並び、読者たちに惜しまれつつ幕を閉じた。その瞬間、二人が交わした「夢の手形」は、永遠に歴史に刻まれたのだった。

龍也と直也の友情と夢は、形を変えても続いていく。