お金がない

狙われやすい家

「狙われやすい家」

外出から帰宅した絵里は、庭に見慣れない小さな石がいくつか散らばっていることに気づいた。何気なく拾い上げたが、その石は単なる子供のいたずらではなかった。数日後、彼女の家が空き巣に入られ、現金や貴重品が盗まれてしまったのだ。

警察の調査により、石は泥棒たちがつけていた「目印」だったことが判明した。絵里の家は、家の外が散らかっており、郵便受けにも溜まった郵便物が放置されていたことから、狙われやすいと判断されたという。忙しさのあまり細部に気を配る余裕がなかったことが、逆に泥棒にとってのチャンスになってしまった。

泥棒が狙いやすい家には共通点があると知り、絵里は防犯意識を高めるため、周りの人々に話を聞くことにした。友人の中には、夜間に明かりをつけっぱなしにしておく「偽装策」を使っている人もいた。だが、絵里のように家の外観や片付けに無頓着だと、たとえ偽装をしていても狙われやすいことがわかった。

特に気をつけるべきは、家の周りの植木や木々。泥棒たちは人目に付きにくい場所に隠れながら様子を伺うため、庭が視界を遮るような環境だと、より狙われやすくなるという。また、開けっぱなしにされた窓や簡単に破れるガラス扉も、泥棒たちにとって好都合だった。

「防犯カメラも設置しようかな」と思い立った絵里は、専門店を訪れた。店員は、「カメラだけでなく、防犯意識が大切です」と話し、定期的な郵便物の回収や夜間の照明、ゴミ出しのルールに従った適切な生活のリズムが防犯につながると説明してくれた。

絵里は、自分の家の生活の「見え方」を意識するようになった。郵便受けを定期的に確認し、庭の見通しをよくし、近隣とのコミュニケーションも大切にした。その小さな変化が、再び泥棒の目に留まらないための一歩となった。

家が安全であるためには、「そこに人が住んでいる」という痕跡が何よりも重要であることを、絵里は身をもって学んだのだった。