お金がない

春秋花壇

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崩れた夢の残骸 被害総額100億円

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『崩れた夢の残骸』

大島美幸と夫の鈴木おさむは、その日、新潟県庁での記者会見に出席していた。彼らの目の前にはカメラが並び、記者たちの視線が鋭く彼らに向けられていた。夫妻の知名度が、この詐欺事件にどれだけの信憑性を与えたかを考えると、心に重くのしかかる責任を感じざるを得なかった。

大島が提携していたのは「ワールドビッグフォー(WB4)」と呼ばれる会員制リゾートクラブだった。最初の話を聞いたとき、WB4が提供するフィリピン・セブ島のリゾート施設には、本物のリゾートらしい輝きがあった。彼女たちは一度見学に行き、まさに「夢のような」時間を過ごした。その体験が、まさか詐欺の片棒を担ぐことになるとは夢にも思わなかった。

「預けたお金が利息として戻ってくる、ただそれだけのことだったんです」と、大島は小声で呟いた。「でも、もしこれが詐欺だとしたら…たくさんの人を巻き込んでしまったことになります。騙していたなんて、考えたくもありません。」

その会見で、弁護士が提供した資料に目を通しながら、事の重大さが彼女にじわじわと迫ってくる。新潟県内の被害者は1600人以上、被害総額は100億円、そして過去の取引記録まで調べると、全国規模では1000億円近くに上る可能性があると報じられていた。

詐欺の手口は巧妙だった。会員制リゾートクラブとして会員から預金を集め、「リゾート利用券」として利用権を渡す。会員は施設を利用することもできるが、利用しない場合は券を返却すれば元本の利息として現金が返ってくる仕組みだ。この「年利4.8~9.0%」という数字が、会員たちの心をくすぐったのだった。

だが、新型感染症禍が始まった2020年3月を境に「利息」は突如として止まり、元本の預金も返却されなくなった。会員たちは困惑し、次第に不安が募っていった。「新型感染症が落ち着いたら返金される」と説明されるも、その日が来ることはなかった。

会員の一人、佐藤隆は、会見で涙ながらに語った。「私のような小さな会社員にとって、預けたお金は老後の備えでした。WB4の輝かしい未来を信じて、すべてを賭けてしまったんです。」

大島と鈴木はその言葉を聞きながら、胸に言いようのない痛みが走った。自分たちの顔が詐欺の広告塔として使われ、彼らが言葉を信じて大金を失ったのだ。いくら自分たちが騙されていたとはいえ、この苦しみを目の当たりにすると、無力感に打ちのめされる思いだった。

「この事件を通して、詐欺の怖さを学びました」と大島は最後に静かに語った。「これからは、皆さんの信頼を取り戻すために全力を尽くします。」

夫妻が会見を終えたとき、そこには多くのフラッシュがたかれていたが、彼らの心の中に残ったのは、信頼を裏切った重い罪の意識と、再び失った信頼を取り戻すには長い道のりが待っているという現実だけだった。

やがて新潟の空は夕日に染まり、冷えた風が吹き始めた。夫妻はそれぞれの想いを胸に抱え、二度と同じ過ちを繰り返さないと、強く心に誓った。









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