お金がない

断絶の光

断絶の光

朝の10時過ぎ、カレンはいつものようにリビングの机に向かっていた。訪問看護のナース、山本さんが隣に座り、二人でパソコンの画面を見ながら話をしていた。カレンの体調は安定してきていたが、定期的な看護が欠かせなかった。最近は訪問看護のたびに山本さんとパソコンを使って健康管理データを一緒に確認するのが日課になっていた。

「今日もデータ、問題なさそうですね」と山本さんが穏やかに言ったその瞬間、パソコンの画面が突然固まった。

「あれ？」カレンが眉をひそめる。「またインターネットが切れたかも…」

そう、これが初めてではなかった。10月10日にも、まったく同じ時間帯に同じ現象が起きたのだ。そのときは、結局1週間もネットがつながらず、カレンはその間ずっと不便な生活を強いられた。

「またですか…」山本さんが深いため息をつく。「前回もずいぶんと手こずりましたよね。」

カレンは立ち上がり、ルーターのところへ行ってリセットボタンを押してみたが、何の反応もない。次に、ケーブルを確認し、パソコンを再起動した。それでも、やはりインターネットは戻ってこない。

「こんなに何度も同じ時間に切れるなんておかしいですよね。」山本さんが言葉を続ける。「何か原因があるはずです。」

カレンも同感だった。確かに、1回なら偶然かもしれないが、これが2回目となると不自然さは否めない。彼女はプロバイダーのサポートに電話しようとスマホを手に取った。しかし、驚いたことにスマホのインターネットもつながらない。

「え？」カレンは目を見開いた。「スマホも…？」

不安が胸に広がる。何か大きな問題が起きているのではないか。停電ではない。電気はついている。パソコンのバッテリーも問題ない。なのに、なぜインターネットだけが切れるのか。

その後も数時間、カレンは山本さんと一緒にあらゆる手を尽くしたが、何一つ解決の糸口は見えなかった。外の風景は平穏そのもの。木々は秋の風に揺れ、鳥のさえずりも聞こえる。しかし、カレンの心の中では嵐が吹き荒れていた。

午後になって、山本さんは仕事の都合で帰らなければならなかった。カレンは一人残され、再びルーターのランプをじっと見つめた。点滅するランプは、まるで彼女を嘲笑うかのように規則正しく光っては消える。

1週間。前回は1週間かかった。今度はどれだけ時間がかかるのだろうか。カレンはふと、10月10日のことを思い出す。なぜ、あの時もこの時も同じ時間に切れたのだろう？

その晩、カレンはパソコンの前で再び試みたが、状況は変わらないままだった。彼女は不安と苛立ちを抱えながら、何もできない状態に苛まれていた。

次の日、カレンは早朝に再びルーターを確認した。しかし、やはりインターネットはつながっていなかった。カレンはふと外に出て、近所の人々に声をかけてみた。

「インターネット、つながってますか？」彼女が尋ねると、ほとんどの人が首を振った。「うちも昨日の朝から全然だめで…」

これで確信した。自分の家だけではない。地域全体に何かが起きているのだ。カレンは再びプロバイダーに電話をかけ、ついに応答があった。オペレーターの声が聞こえ、ようやく原因が判明した。

「申し訳ありません、現在大規模な通信障害が発生しておりまして、復旧には少しお時間をいただくことになります。」

カレンは疲れ果てた様子で電話を切った。原因はわかったが、解決までの時間がどれだけかかるのかはまだ不明だ。10月10日と同じく、再びインターネットのない日々が始まろうとしていた。

彼女は無力感を抱えながらも、少しだけ心の中で笑った。これも、現代の「災難」の一つなのかもしれない、と。