お金がない

恋の罠

恋の罠

西宮市の50歳の会社員、雄介は、日々の仕事に追われながらも、心の中で何か物足りなさを感じていた。独身の彼は、結婚を夢見つつも、出会いがないことに悩んでいた。そんなある日、友人から勧められたマッチングアプリに登録することにした。

8月のある晩、アプリ上で知り合った二人の女性とのやり取りが始まった。最初の相手は美しい笑顔の真理子。彼女は明るく、楽しげなメッセージを送ってきた。もう一人の女性、恵美は少し大人しめだが、彼女の言葉には温かみがあり、雄介は次第に彼女たちに惹かれていった。

「私たち、結婚を考えているの」と真理子が言った。雄介はその言葉に胸が高鳴った。やり取りが続くうちに、彼女たちとの距離がどんどん縮まっていくのを感じた。

ある日、真理子が提案した。「結婚資金を増やそうよ。私が知っている暗号資産取引所があるの。大きなリターンが期待できるわ」と彼女は魅力的に語った。恵美も同意し、二人は彼にそのアプリをすすめてきた。興奮した雄介は、彼女たちに信じられないほどの夢を抱いていた。

9月3日から10月15日までの間に、雄介は二人の女性から指示された口座に計14回、総額約398万円を振り込んだ。初めは少額の投資だったが、彼女たちが成功を収める様子を語るたびに、雄介の期待は膨らんでいった。

しかし、ある日、彼がアプリにログインしても、引き出しができないことに気づいた。最初は何かの手違いかと思ったが、次第に不安が募っていく。彼は真理子や恵美に連絡を取ったが、返信がこなくなった。

ついに、彼は警察に相談することを決意した。西宮署に足を運んだ彼は、事情を説明し、詐欺の被害に遭ったことを告げた。捜査官は彼の話を真剣に聞き、ロマンス詐欺の可能性が高いと説明した。雄介はショックを受けた。彼が思い描いていた幸せな未来は、全て嘘で塗り固められていたのだ。

警察の捜査が始まり、彼は取引の詳細を詳しく説明した。振り込んだ金額、女性たちとのやり取り、そして彼女たちのプロフィール写真まで全てを記録していった。捜査官は彼に、今後の手続きや注意点を伝えた。

雄介は落ち込んでいた。自分の判断力がなかったのか、彼女たちの言葉に盲目的になってしまったのか。彼は過去のやり取りを振り返り、冷静に思い出そうとした。彼女たちの笑顔、優しい言葉。それらが今ではまるで幻のように思えた。

その後、捜査が進む中で、雄介は自分自身を取り戻そうと努力した。心の傷は深かったが、彼は被害者としての経験を生かし、周囲に警戒を呼びかけることを決意した。友人や知人に、自分が経験した詐欺の手口を伝え、同じような被害に遭わないようにすることが、彼の使命となった。

日が経つにつれて、雄介は少しずつ立ち直り始めた。彼はマッチングアプリのアカウントを削除し、新たな出会いの場を求めて趣味やコミュニティ活動に参加することにした。彼の心には、今も彼女たちへの未練が残っていたが、それを乗り越えるための努力を続けていた。

彼は、自分が経験したことを糧に、愛に対する考え方が変わっていった。真実の愛とは、相手を信じ、支え合うことだと気づくようになった。失ったお金は戻らないが、彼はこの経験を通じて成長し、強くなった。

数ヶ月後、雄介は新しい人との出会いを果たし、少しずつ心の傷が癒えていくのを感じていた。彼はもう一度、真実の愛を見つけるために歩き出していた。過去の痛みを背負いながらも、彼は新たな未来を信じて、前向きに生きていくことを決めたのだった。