お金がない

春秋花壇

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魅力的な小さな家

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魅力的な小さな家

東京の街には、7000万円という高額な建売住宅が次々と建てられていた。その中には小さな車庫が付いているものの、庭もないというスタイルの家が多かった。しかし、それでも即完売するのだから、東京の人たちは本当に驚きだと思う。

まさにその一軒の新しい住宅が、絢香の目の前にあった。彼女は、友人の結婚式を終えたばかりで、幸せそうなカップルを見ては、自分の生活を振り返る。結婚はおろか、恋人さえいない彼女にとって、友人たちの幸せな姿は少しばかり羨ましいものだった。絢香は、新しい住宅展示場を見に来たのだった。

「7000万円…本当に買えるのかな、私には」と絢香は心の中で呟く。彼女は、いくつかの住宅を見学したが、どれも価格が高く、手の届かない夢のように思えた。周囲を見回すと、他の見学者たちも熱心に内覧している。若いカップルや家族が多く、その笑顔は幸せに満ちていた。

絢香は、玄関を開けて中に入った。リビングは広く、モダンなデザインが施されていた。キッチンも最新の設備が整っていて、まるで夢の中にいるような気分だった。「こんな場所に住めたら、どんなに幸せだろう」と彼女は思った。

しばらくすると、営業マンが近づいてきた。「いかがですか?この家は特に人気があって、すでにいくつかの申し込みがあります」と彼は言った。絢香は驚いた。「本当に、即完売するの?」彼女は目を丸くした。自分の収入では到底無理だと思っていたが、実際に売れているのを目の当たりにすると、その事実がより一層信じられなかった。

「はい、このエリアは特に人気が高く、アクセスも良いですから」と営業マンは続けた。「この価格でも、間違いなく投資価値があります。周辺の物件も同じように値上がりしていますし。」

絢香は考え込んだ。東京の人たちは、どれだけお金を持っているのだろう。特にこのエリアは、企業が集中しているため、収入が高い人たちが多い。彼女のような中小企業の社員では、到底手が届かない世界だ。そんなことを考えていると、少し気分が沈んでしまった。

その時、後ろから声が聞こえた。「すみません、ここ空いてますか?」振り返ると、若い男性が立っていた。彼はカジュアルな服装で、明るい笑顔を浮かべている。「あ、はい」と絢香は答えた。

彼はリビングを見回しながら、「いい家ですね。価格もお手頃だと思います」と言った。絢香は心の中で「お手頃?」と驚いたが、彼の明るさに少しだけ心が和んだ。「でも、私はこの価格では無理です」と絢香はつい言ってしまった。

男性は笑顔を崩さずに言った。「それでも、夢を見るのは大事ですよ。僕も将来、こんな家に住みたいと思っているんです。」彼の言葉は、どこか前向きで希望に満ちていた。

絢香は少しずつ心が軽くなっていくのを感じた。「そうですね、夢を持つことは大切ですよね」と彼女は言った。すると、男性は頷いて、「それに、いつか自分の家を持てるように、今から努力するつもりです。諦めたらそこで終わりですから。」

その言葉が絢香の心に響いた。確かに、今は手が届かないように感じても、努力を続けることで夢が実現する可能性もある。彼女は思った。「そうだ、夢を追いかけよう。今はまだ難しくても、いつか叶えられるかもしれない。」

見学を終えた絢香は、外に出ると清々しい気持ちになった。周りの人々が夢を持ち、未来を見つめている姿を見て、彼女も前向きな気持ちを取り戻した。「きっと、私にも素敵な家が手に入る日が来る」と自分に言い聞かせた。

その後、彼女は日常に戻り、仕事に励むことにした。時には挫けそうになることもあったが、あの男性の言葉を思い出し、夢を追い続ける決意を固めた。彼女は自分の目標に向かって一歩ずつ進むことができるのだと信じていた。

数年後、絢香はついに自分の家を持つことができた。7000万円の建売住宅ではなかったが、小さな庭と車庫のある、彼女にとっての最高の空間だった。これも夢を追いかけ続けた結果だと思った。

東京の人たちが持つお金や環境に圧倒されながらも、絢香は自分の足で立ち、自分の道を切り拓いていった。彼女にとって、この小さな家は心の拠り所となり、彼女自身の成長を象徴するものとなった。






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