お金がない

霊的な富を手に入れて

「霊的な富を手に入れて」

美紀は、疲れた表情で小さな部屋の片隅に座り、窓の外をぼんやりと眺めていた。外は快晴で、青空が広がっているが、彼女の心は重く沈んでいた。最近の生活は、経済的な困難に追われ、何をしても思うようにいかない日々が続いていた。

「また、今月も家賃が払えない…どうしよう…」

そう呟きながら、彼女は手元の空っぽの財布をじっと見つめた。収入は少なく、支出はどんどん膨らんでいく。食べ物を買うのもやっとで、光熱費や医療費もかさむ一方だった。

それでも、そんな中で美紀には一つだけ心の拠り所があった。それは、彼女が長年信仰している宗教の集会だった。エホバの証人としての信仰を深める中で、彼女は物質的な豊かさ以上に大切なものがあることを知っていた。

その夜、美紀は集会に向かう準備をしていた。心は重くても、集会に行くと不思議と力が湧いてくる。聖書の言葉が彼女の心を癒し、希望を与えてくれるのだ。

集会では、その日の講話が特に心に響いた。「至高者が与える隠れがに住む人は、全能者の陰にとどまる。私はエホバに言う。あなたは私の避難所、私のとりで、私が頼る私の神。」その言葉は、まさに今の美紀に必要なものだった。

「私はエホバに頼る。そう、私には避難所があるんだ」と、美紀は心の中で繰り返しながら、神の言葉に耳を傾けた。彼女は自分の物質的な貧しさを嘆くことなく、神の愛と保護に感謝することを学んでいた。

集会が終わり、美紀はすっかり心が軽くなったように感じた。外は暗くなっていたが、彼女の心の中には光が差し込んでいた。エホバの保護の下にいると感じると、どんな困難も乗り越えられると信じられるようになった。

家に帰ると、美紀は聖書を取り出し、再びその言葉に目を通した。「1000人があなたのそばに倒れ、1万人があなたの右に倒れる。しかし、あなたに危険が及ぶことはない。」この一節は、彼女に大きな勇気を与えた。

「どんなに周りが厳しい状況になっても、私は守られている。神が私を見守ってくれている限り、物質的な豊かさに頼る必要はないんだ」

彼女はそう思いながら、心の中で静かに祈った。「エホバ、ありがとうございます。私は物質的に貧しいかもしれませんが、あなたの愛に包まれている限り、私は霊的に豊かです」

美紀の生活は、決して楽なものではなかった。それでも彼女は、自分が霊的に豊かであることを心から感謝していた。経済的な困難は続いているが、彼女の心の中には揺るぎない信仰があった。

次の日、美紀はいつものように仕事に向かった。仕事の内容は単調で、給料も少なかったが、彼女は一つ一つの仕事を丁寧にこなしていった。お金がなくても、霊的な富は誰にも奪われることはない。美紀はそのことを心の中で強く感じながら、日々を過ごしていた。

ある日、職場で同僚の加奈が美紀に話しかけてきた。「ねぇ、美紀さん。最近、なんか表情が穏やかになったね。前はもっと疲れている感じだったけど、今はなんか…落ち着いて見える」

美紀は少し驚いたが、笑顔で答えた。「うん、ちょっと心の持ち方を変えたんだ。お金のこととか、いろいろ大変だけど、私にはもっと大切なものがあるって気づいてね」

「大切なもの？」

「そう、神様の愛と、信仰。私はお金がなくても、神様に守られているって信じているの。それが私を支えてくれているんだ」

加奈は少し驚いたような表情をしていたが、すぐに頷いた。「そうなんだ。なんだか羨ましいな…私も、そういう強さが欲しいって思う時がある」

美紀は微笑んで、「誰でも持てるよ。大切なのは、自分が本当に信じられるものを見つけることなんだと思う」と優しく答えた。

その夜、美紀はまた祈りを捧げた。「エホバ、ありがとうございます。私はお金がなくても、霊的に豊かであることに感謝します。あなたが私を見守ってくれている限り、私はどんな困難にも立ち向かうことができます」

彼女は深い安堵感に包まれながら、その晩静かに眠りについた。物質的な貧しさは彼女を縛りつけることはできない。彼女には、何よりも大切な霊的な富があったのだから。