お金がない

トレカの裏側

「トレカの裏側」

1章: 不正な誘い
大阪市内の繁華街、喧騒が広がる中、一人の青年、直樹（なおき）はスマホを見つめていた。フリマアプリでの売買は日常の一部になっていたが、最近、彼は奇妙なメッセージを受け取るようになった。「トレーディングカードの売買をしませんか？安くて価値のあるものが手に入るよ！」

そのメッセージは、彼が最近友人から紹介されたグループに属している人物から送られてきたものだった。直樹は興味を惹かれたが、同時に警戒心もあった。しかし、トレカの世界は魅力的で、彼はすぐにこの新しいチャンスに乗ることに決めた。

2章: 影の世界
直樹はメッセージのやりとりを続け、次第にグループの全貌が見えてきた。彼らは情報商材を売り込むために、トレーディングカードの取引を装っていたのだ。情報商材は、いわゆる「勝率が上がる」と謳われているもので、実態は詐欺であった。

「商材を買って、バイナリーオプションの取引で稼げる」とメッセージには書かれていた。直樹は、その魅力的な言葉に心を掴まれ、意気揚々と仲間に参加した。彼は、SNS上で若い女性を装い、メッセージを送り続ける役割を担うことになった。

3章: 騙される側の視点
数週間後、直樹は数百人の見込み客にメッセージを送る日々を送っていた。「勝率が上がる」と書かれた商材に興味を持つ人々に、投資の講師になりすましてアプローチをしていた。しかし、彼の心のどこかに不安があった。

直樹は、彼が騙している人々のことを考え始めた。彼らは、家計を助けるために必死になっているのかもしれない。自分がその希望を打ち砕く存在になっていることに気付くと、胸が締め付けられる思いがした。

しかし、グループの仲間たちは彼を励まし、どんどんと売上が上がっていると称賛していた。直樹は、その成功の波に飲み込まれ、自分の気持ちを抑え込むことにした。

4章: 反撃の兆し
しかし、ある日、直樹の心に決定的な変化が訪れた。彼が送ったメッセージの一つに返信が来たのだ。「本当に勝率が上がるのですか？お金を払う価値があるのでしょうか？」その問いに、直樹は言葉を失った。

「このまま続けて良いのか」と自問自答し、彼は思わず相手に本音を打ち明けてしまった。「実は、これは詐欺かもしれない。申し訳ない、あなたを傷つけるつもりはなかった」と、彼は返信した。

その後、彼は急いでグループを抜けることにした。しかし、すでに手遅れだった。直樹が気付いたときには、警察による一斉摘発が始まっていた。

5章: 結末と贖罪
大阪府警がグループを摘発する中、直樹は一人逃げ続けた。彼は自分がしたことの重さを実感し、悪夢のような現実を逃れようとしていた。しかし、逮捕を免れることはできなかった。

彼は警察に捕まり、取り調べを受けることになった。自分のしたことを悔い、詐欺の加担者として責任を取る覚悟を決めた。彼は、他の仲間たちの名前を明かし、グループの全貌を暴露することで、少しでも罪を軽減しようと考えた。

その後、直樹は裁判にかけられた。彼は、自分が騙した人々に謝罪し、反省の意を示した。彼は、「二度と同じ過ちを犯さない」と心の底から誓った。

6章: 新しい始まり
出所後、直樹は自らの過去と向き合い、新たな道を歩む決意をした。彼は被害者の支援活動に参加し、詐欺の実態を広めることで、少しでも償おうと考えた。

「自分が受けた苦しみを他の人に伝えなければ、同じ過ちを繰り返す人がいる」と思い、直樹は地域の講演会に参加し、体験談を語ることにした。彼の姿は、過去の自分とはまったく異なるものになっていた。

直樹は、デジタル社会の影に潜む危険を伝えることを通じて、自分自身を救い、他の人々を守るために努力を続ける。彼は、もう二度と「トレカの裏側」に戻ることはないと、強く決意した。

この物語は、SNS型投資詐欺事件の手口を描きながら、参加者の心理と贖罪の道を追求しています。詐欺がもたらす影響とその後の変化を描写し、読者に警鐘を鳴らす内容となっています。