お金がない

無駄遣いの果てに

「無駄遣いの果てに」

主人公の美咲（みさき）は、20代後半の会社員。毎朝9時にオフィスに出勤し、淡々と仕事をこなしているが、心の奥底では常に「お金が足りない」という不安に悩まされていた。給料は決して悪くはない。ボーナスも毎年支給される。だが、毎月の給料日を迎えても、口座に残る金額はいつもぎりぎりで、貯蓄はまるで増えなかった。

ある日、美咲は友人の早紀（さき）とランチに行く約束をした。早紀は同じ会社の同期で、彼女もまた同じ悩みを抱えている仲間だった。二人はカフェに入り、ランチセットを注文しながら、最近の家計事情について話を始めた。

「ねぇ、美咲。最近、また貯金できないって感じてるんだよね。給料もそんなに悪くないのに、なぜか貯金が増えないんだよ…」

「わかるよ、私も全く同じ。毎月ちゃんと収入はあるのに、気づいたらお金がなくなってるんだよね。なんでこんなに貯まらないんだろう？」

美咲と早紀は、互いにため息をついた。周りの友達の中には、結婚やマイホームを購入する準備をしている人もいるというのに、二人はまだ「貯金すら満足にできない」という状況に苛立ちを覚えていた。

カフェでランチをしながら、美咲は自分の生活習慣を思い返してみた。平日の朝は、コンビニでおにぎりとカフェラテを買って出社するのが日課。ランチも外食がほとんどで、気分転換におしゃれなカフェに立ち寄ることも多い。仕事帰りにはコンビニでちょっとしたスイーツや飲み物を買うこともよくある。

「やっぱり、コンビニでの買い物が多いのかな…」

美咲はそう思いながらも、やめる気にはなれなかった。コンビニは便利だし、つい手軽に買ってしまう。それに、ストレスの多い仕事を終えた後、ちょっとしたご褒美として甘いものを買うことが心の安らぎだった。彼女は、自分が「衝動買い」に弱いという自覚はあったが、それを改めるのは難しいと感じていた。

さらに、美咲は給料日に必ずショッピングを楽しむのが習慣になっていた。特に、新作の洋服や化粧品が出ると「欲しい！」という衝動に駆られ、気づけばクレジットカードで購入していた。支払いは後回しにできるからと、あまり深く考えずに買い物をすることが多かったが、その結果、月末になるとクレジットカードの請求がずらりと並び、次の給料が振り込まれても一気にその支払いに消えてしまう。

「本当に、どうしたら貯金できるんだろう…」

美咲は自問自答しながらも、結局は日々の生活習慣を変えることができないまま過ごしていた。そんなある日、早紀からメッセージが届いた。

「美咲、私たち貯金できない原因をもっと真剣に考えた方がいいかも。家計簿アプリとか使ってみたことある？ 私、最近始めてみたんだけど、衝動買いがどれだけ無駄遣いになってるか分かって、かなりショックだったよ。」

美咲は、そのメッセージを見て、少し考え込んだ。家計簿アプリなんて面倒くさいと思っていたが、早紀がそんなに言うなら試してみようかという気になった。

さっそく美咲はスマホに家計簿アプリをダウンロードし、毎日の支出を記録することにした。最初の数日は面倒に感じたが、続けていくうちに、自分の無駄遣いが驚くほど多いことに気づき始めた。

「うわ、こんなにコンビニで使ってたんだ…」

アプリの画面に表示された支出一覧を見て、美咲は目を疑った。毎月のコンビニや外食の支出は、思っていた以上に多く、その金額は貯蓄に回せたはずのお金だった。

さらに、美咲はクレジットカードの使用履歴も確認し、思わず頭を抱えた。買い物のたびにカードを使っていたため、現金の支出感覚が薄れていたのだ。毎月の給料が振り込まれても、すぐに支払いに消える理由がここにあった。

「こんなに無駄に使ってたのか…」

美咲は改めて衝動買いや外食の頻度を見直し、少しずつ節約を心がけるようになった。コンビニでの買い物を減らし、自炊をする日を増やすように努めた。また、ショッピングをする際も、本当に必要なものだけを買うように意識するようになった。

少しずつではあったが、美咲の生活は改善され始めた。毎月少しずつ貯金ができるようになり、クレジットカードの支払いも減った。最初は小さな変化だったが、次第に美咲は「自分でもできるんだ」という自信を持つようになった。

「無駄遣いをやめるのって、こんなに大変だったんだ…」

そう感じながらも、美咲は少しずつ自分の未来に希望を持ち始めた。いつか、大きな夢を叶えるために、しっかりとした貯蓄を築いていこうと決意したのだった。

それから数ヶ月後、美咲はふとアプリを見返して驚いた。今までの自分とは違い、着実に貯金が増えていることに気づいたのだ。あの時、早紀が言ってくれたアドバイスに従ってよかった、と心から感謝した。

美咲は、貯蓄の大切さを実感し、これからも計画的にお金を使う習慣を続けていくことを誓った。