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春秋花壇

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1億5千万円の嘘:国際ロマンス詐欺に落ちた愛

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「1億5千万円の嘘:国際ロマンス詐欺に落ちた愛」

芦屋市の閑静な住宅街にある自宅に帰るのは久しぶりだった。イタリアでの華やかな生活に慣れ切っていた59歳の山田涼子は、ふと自分がどれほどの孤独を抱えていたのかを感じていた。過去の華やかなキャリアと成功した実業家としての地位があるにもかかわらず、人生の後半に差し掛かる頃には、人間関係の空白が彼女を蝕んでいた。

そんなある日、涼子のスマートフォンに一通のメッセージが届いた。自称日系米国人を名乗る男性からのもので、彼のプロフィールには優しげな笑顔の写真が添えられていた。彼は涼子に対し穏やかに挨拶し、インスタグラムでの日常の風景や趣味について語り合う中で、自然と距離が縮まっていった。会話の中で「愛している」と告げられるたびに、涼子の心はまるで若返ったかのように躍った。彼の容姿も魅力的で、涼子は彼の写真を見て、何度も心が温かくなるのを感じた。

4月のイタリアは新緑の季節で、涼子の住むアパートからは美しい風景が広がっていた。彼とのLINEでのやり取りが続くたびに、彼女は少しずつ彼を信じるようになっていった。彼の声が耳に響くたび、涼子は自分が特別な存在であるように感じていた。彼は人生のパートナーになり得る人物だと、どこかで信じていたのだ。

5月の終わり頃、彼は外国為替証拠金取引(FX)について話を持ち出した。彼は巧みに「私たちの将来のために一緒に投資をしよう」と提案した。その時点で、涼子はすでに彼に対して深い信頼を抱いていたため、彼の言葉を疑うことなど考えもしなかった。彼が見せてくれた投資サイトは、利益が増えていく様子がリアルタイムで表示されており、その画面に表示された数字は涼子の心をさらに揺さぶった。

「これはチャンスだわ。私たちの未来のために。」涼子は彼の提案に従い、7月24日までに17回にわたり指定された口座に計約1億5千万円を振り込んだ。振り込むたびに彼から感謝のメッセージが届き、「これで私たちの夢が現実になる」と彼が約束するたび、涼子の胸は期待で膨らんだ。

しかし、次第に彼の態度に微妙な変化が現れ始めた。彼は頻繁に「もっと投資すれば、更に大きな利益が得られる」と涼子に促し続けた。涼子は次第に疑問を抱き始めたが、それでも彼の言葉に引きずられていた。彼の甘い言葉は彼女の不安をかき消す力を持っていた。けれども、次第に彼女の中で警鐘が鳴り響き始めたのだった。

ある日、彼との会話の合間に涼子は何気なくインターネットで「国際ロマンス詐欺」というキーワードを検索してみた。出てきた記事には、涼子が経験していることと驚くほど似たような手口が詳細に書かれていた。見知らぬ男に言い寄られ、愛を囁かれ、大金を騙し取られる…。涼子の手は震え、冷や汗が額ににじんだ。まさか自分が、そんな詐欺に巻き込まれているとは夢にも思わなかった。

彼女の胸は絶望でいっぱいになった。あの信じていた男の言葉も、優しい笑顔も、すべてが嘘だったのだと気づいた瞬間、涼子の心は粉々に砕け散った。これまでの投資はすべて無駄で、彼女が振り込んだ金額はすでに彼の手元から消えていた。涼子はその場に崩れ落ち、涙が止まらなかった。彼に裏切られたという現実が重くのしかかり、身体の力が抜けていった。

日本に戻った涼子は、すぐに芦屋署に被害届を提出した。警察署での取り調べの間、涼子は自分の愚かさを何度も嘆いた。「どうして気づかなかったのか」「なぜあの時疑わなかったのか」。自分を責める声が頭の中でぐるぐると回り続けた。彼とのやり取りのすべてが記録され、捜査員たちはそれを証拠として分析していた。涼子はただ、もう一度だけ、彼の笑顔を見たかったと思った。

その夜、涼子は久しぶりに芦屋の自宅に戻り、窓から外を眺めた。彼女が大切にしていたあの投資サイトは、もうアクセスする気にもなれなかった。彼との記憶は、今や消えない傷となって涼子の心に刻まれている。しかし、彼女は決して負けてはいけないと心に誓った。人生の後半戦でこんなに大きな失敗をしたけれども、それでも前を向いて生きるしかないと、涼子は思った。

夜空には、まるで慰めるかのように星々が輝いていた。涼子は静かに目を閉じ、彼への思いを一つひとつ断ち切るように深呼吸をした。これからの道のりは決して平坦ではないが、それでも涼子は強く生きることを選んだ。新たな未来に向けて、もう一度自分を取り戻すために。そして、次は本当に信じられる誰かと出会えることを願って。

この物語は、涼子のロマンス詐欺被害の経験と、その後の心の葛藤を描いたフィクションです。彼女の感情の流れや詐欺に気づくまでの過程を通して、詐欺の恐ろしさと孤独な人間の心理を表現しました。他に追加や変更したい部分があれば教えてください。



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